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第30話 夜を満喫しようその1 拠点への帰還

 「ふぉおおおおおお!! なんですか!? なんですか!? ここどこですか!?」


 夜、停留所でテントを出してその中に入った俺たちは、そのままテント経由で拠点へと帰ってきた。

 領域、世界、空間、色々な言い方があるので頻繁に言い方が変わるけど全部同じ場所だから安心してほしい。


「イリスさん、何を言ってるんですか? 言い方が変わっても同じ場所なら問題なくないですか?」

「うんまぁそうなんだけど、なんとなくね」


 あいなはテントの先に繋がる世界が珍しいようでめちゃくちゃはしゃいでいる。


「空気がおいしい! そして家は一軒! しかもめちゃくちゃ大きいですよ!?」

「そうだね~。そこが今日泊まる俺たちの家だよ」

「ほぉぉぉぉぉぉ!!」


 あいなの元気が爆発している。

 さすがにあの元気さには俺も追いつくことはできないなぁ。


「さすが大精霊ってことね」

「さすが大精霊よね」

「部屋の増築には資材が必要。とりあえず6人泊っても問題ない設備はある」

「さすがアルテミシア。あとはお風呂かぁ」

「お風呂。大浴場ある。みんなで入れる大きいの」

「おぉ、いいじゃん!」


 お風呂の説明をするアルテミシアが珍しく両腕をぶんぶん振り回しながら力強くアピールを繰り返している。

 なんかすごいテンションあがってるんですが、お風呂楽しみなんかな? まぁ俺は風呂好きだけど。


「あれが大精霊の威厳?」

「あれはお子様の威厳ね」


 エリアとグレースは冷静にアルテミシアの行動を評価していた。

 まぁ完全にお子様感丸出しだとは思うよ。俺もね。


「イリスちゃんとお風呂……。私成仏できそうよ」

「職業精霊が成仏すると何になるんだ? 普通に疑問なんだけど」


 まぁ幽霊じゃないことを考えれば成仏なんてできるわけもないんだけど。


「お姉ちゃんに背中を洗わせてね? イリスちゃん」

「セクハラされそうだから嫌だ」

「が~ん……。女の子同士なんだからセクハラなんてそんなそんな」

「するやつはするの。ルビーとかソフィとかアルマとか」


 特にソフィのやつは深層の令嬢といった見た目のくせして抱き着いてきては撫でる触る匂いを嗅ぐの3連コンボを決めてきやがるからな。

 俺の寸胴&平たい胸と薄い尻を触って何が嬉しいんだか。


「あ~。そうだったわね。ソフィちゃん、アルマちゃん、ミティスちゃん、アリスちゃん、みんないい子でかわいい子なんだけどどうしてああなったのかしら……」

「? その4人がどうかしたんですか?」


 俺たちの話に興味を示したのかあいながこっちにもどってきた。

 お願いだからあいなは純粋なままでいてほしい。


「今は遠くに行ってるイリスちゃんの幼馴染なんだけどねぇ。いい子たちなんだけどイリスちゃんにちょくちょくセクハラするのよ」

「おまえもな」

「ほぇー。イリスさん可愛らしいですもんね。隙だらけだし」

「はぁ!?」


 こいつ、俺よりも隙だらけっぽいくせに俺のことを隙だらけだと言いやがった。

 なんてやつだ。


「だってほら」


 突然あいなが俺の腰に手をまわして引き寄せてあごをくいっとあげさせてくる。

 このやろう!


「なっ、てめぇ!!」

「ほら、隙だらけですもん」

「あら~」

「あら~じゃねえよ。よし、殴る」

「え? ちょ、まってください冗談です冗談!! ふぐっ!?」

「調子に乗ったようだなぁ? あいなぁ?」

「ひぃ!? 拳は軽いのに心が痛いです! イリスさんストップ! ストップです!!」

「俺は残念ながらパワーはないけどよぉ、圧と恐怖を身体に刻んでやれるんだぜぇ?」

「すみませんすみません! 身体は痛くないのに異常に心が痛いですうう」

 

 なぜか俺と喧嘩するやつは最終的に心にひどいダメージを負うのだ。

 たぶん母親の能力のせいだと思うんだけどな。

 なので俺の故郷の神殿では俺のこの拳のことを【懺悔の拳】と呼んでいたりする。

 残念ながら俺のふにゃふにゃパンチでは誰の身体にも傷をつけることはできないのだ。

 擬音であらわすなら『ぺこん』という感じだろうか。

 

「ふん。さっさと中に入るぞ。遊んでると寝られなくなっちまう」

「はーい」


 アルテミシアが先頭を行き、その後ろを俺とあいな、ブランにエリアとグレースと続いていく。

 扉の前にたどり着くとアルテミシアがそっと手を翳す。

 すると扉はひとりでに開き、俺たちを中へと誘う。


「ようこそ、そしておかえりなさい」


 アルテミシアが中に入ると俺たちにそっとそう声をかけた。

 中はなんというかとても巨大だった。


「入り口入ってすぐ大きなホール! 高い天井に豪華なシャンデリア!!」


 中に入ってすぐ目に飛び込んできたのは巨大なそのホールに高い天井とそこにぶら下がった大きなシャンデリアだった。

 ホール自体は2階まで直通でいけるようになっており、そのさらに上には3階の扉とホールを一周する通路、そして本棚が設置されていた。


「大浴場は一階奥の食堂のさらに奥。ベッドルームは3階。2階はサロンや図書館とかがある。2階奥はお姉ちゃんの錬金術室にした。その隣には無限図書館がある。お姉ちゃんとエリアたちは大丈夫だと思うけど、あいなは迷い込まないように注意」

「ふぇ? 迷い込むとどうなっちゃうんですか?」

「無限に続く書架に惑わされて帰り道を見失う。じえんど」

「なんと!?」

「あいなはうっかりしそうだからなぁ。本当に気を付けろよ?」

「そ、そうですね……。あれ? ところでなんでイリスさんは大丈夫なんですか?」

「俺、転移使えるもん」

「!?」


 驚きの表情を浮かべるあいな。

 これでさっきのセクハラの件は許してやろうじゃないか。


「ん。食事の前にお風呂行く」

「あー、風呂か。良いなぁ。行くかぁ」

「いいですね~、行きましょうか」

「おっふろ~♪」

「お風呂だって楽しみね」

「お風呂イベントらしいわね。楽しみよ」


 そんなわけで俺も内心ワクワクしながらお風呂へと向かう。

 一階食堂奥ということもあり、大きな食堂の柱の脇を俺たちは通り抜けていく。

 そういえば食材はあるのだろうか? あ、出る前に詰め込まれてたんだっけか。


「ご飯どうするかお風呂から出たら決めないとだなぁ」

「ん」


 そんなこんなで夕食について考えながら歩いていると大きな白い扉の前に辿り着いた。

 扉は大理石製のようでなかなか豪華な感じだった。


「中」


 アルテミシアが先導し、そのまま扉を開くと、そこには大理石で作られた噴水と大きな円形の浴槽が存在していたのだ。

 お湯は事前に用意されていたらしく、湯気を立てながら俺たちを迎えてくれている。


「おぉー……。すげぇ」

「ん。滑りやすいから走らないように。特にあいな」

「なんでですか!?」

「そりゃあいなだからな」

「あいなちゃんだからねぇ」

「あいなは子供よね」

「あいなはお子様だから」

「ひぇん」


 本当に走るなよ? あいな。

 異世界転移してお風呂で転倒して転生とかやめてくれよな。

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