第29話 閑話 聖女ソフィさんは困り顔
「だあああ!! なんで新しい精霊使いが男なんだよ!! 俺様は美少女を希望したはずなんですけど!!」
今日も勇者は荒れていた。
というのも、イリスをパーティーから逃がしてから何度か新しい人に加入してもらったのだけどすべてうまくいかなかったからだ。
まず、精霊使い兼サポーターができるという点でずっと加入していたイリスがパーティーの必要とする人材の最低必須ポイントになっていたことがあげられる。
「あはは……。すみません。国王様から是非にと依頼されたもので……。これでもアルトマ国の宮廷精霊術士なんですが……」
そう、このエルフの男性はアルトマ国でも一番実力と地位のある筆頭精霊術士だったのでした。
私ことソフィが見る限り、この男性の戦力は相当なものです。
ただあえて言うなら火力に限ってはミティスとアリスと勇者だけで事足りているので正直過剰戦力であると思います。
「それにだ! 一応サポーターもできるというから頼んでみたけどさ、切れた物資をすぐに調達できないのはなんでなのかな!?」
でた、勇者ライルの得意技『相手を詰める』攻撃。
一見穏やかそうな口調なのにひたすら相手の問題点を指摘して詰め続ける嫌な技。
「ですから、その件はお伝えしたと思いますが、そもそも契約可能な精霊にそのようなことはできませんしやってくれません」
「でも前に所属していたエルフの男はやってたけど?」
「それは何かの間違いではないですか? 私たちが契約できる精霊は半実体の根源精霊だけですから」
「金髪の精霊が物を運んでたりしてたけどね~?」
「まさか職業精霊。あ~、精霊族といったほうがいいですね。彼らにお願いしていたのですか?」
「あ、知ってるんだ? ならちょっとお願いしてきてよ」
「無理ですって。彼らが善意でやってくれるならまだしもこちらからお願いしたところで使いパシリのような真似は断られますよ」
「でも前に所属していたエルフの男はやってたけど?」
「そもそもそれ自体が異常なんですって……」
「じゃあ君は攻撃は出来るけどサポートはできないってこと?」
「ある程度なら可能ですが同じようなサポートは不可能です」
「ふぅん。攻撃だけしかできない無能じゃないか」
「その点に関しましては非常に申し訳なく思っております」
聞いていてちょっとイラっとした。
そもそもこのライルという男は人の話を整理して考えて結果を導き出すという行動が苦手だ。
もっと簡単に言うなら街で流れる噂話を鵜呑みにして相手を攻撃するタイプといえるだろうか。
なんでそうなるのかを考えたりしないのがこのライルという男だ。
「あの、聖女様?」
「どうしましたか?」
「いえ、勇者様のお言葉は本当なのでしょうか?」
「精霊族に物持ちをさせていたという件でしょうか?」
「はい。とても信じられないものでして……」
「ですよねー。あの男の話はおいといて、パシリみたいな感じというか進んで手伝ってくれていたという感じですよ」
私やミティス、アリスやアルマはあの精霊族、光の大精霊のブランさんとは知り合いだ。
ずっと仲良くさせてもらっているし、イリスが特別だってことも聞いている。
あの男にもずっと言い聞かせてはいるのに、やれハーレムだ、やれ美少女パーティーだと訳の分からない拘りを披露し続けついには追い出してしまった。
アルマがこっそり合流地点の情報を渡して私たちの気持ちを伝えてくれたからいいものの、私たちの関係が崩壊したらいったいどうしてくれるというのだろうか。
「なんと……。勇者様の件はいいとしまして、そのような方がいらっしゃるのですね。ぜひ一度お会いしてみたいものです」
「はい。事が終わりましたら合流する予定ですのでその時になら紹介できますよ。今頃他の精霊族も巻き込んで冒険していてもおかしくはないですから」
「それはありがたいです。これで少しはこのパーティーにいる意義を見出せるというもの」
この精霊術士の男性は【ロンド】さんという名前だ。
相当人ができた人物のようで、勇者の癇癪を受け流すのが上手い。
私たちは少しでも目的達成までこの人が折れないように支え続けようと思う。
エルフの国であるアイネティスの国宝は精霊に関係する人にしか使用することができないのだから。
「はい。何かお困りごと、ストレスなどありましたらいつでもこっそりご相談ください。私やミティスでもいいですし、アリスやアルマでもいいので」
「ありがとうございます」
もう少しの辛抱だ。
はぁ、イリスに会いたい……。
イリスに会ったら抱き着いてその匂いをとことん堪能しよう……。
ついでに小さいその体を抱っこして抱きしめて頬っぺたもぷにぷにしなきゃ!




