第26話 あいなの決断とあいなのお願い
「搬入資材はっと、問題なし。道具はちょっと足りないかも……。こっちは補充リストに入れてっと……。ん? 誰?」
「おぉ、俺だ俺だ。ちと見学者を連れてきた」
「あ、ドーレスさん。えっと、見学者、ですか?」
案内してくれたドワーフの男性は【ドーレス】という名前のようだ。
そんなドーレスさんの目の前には茶色い髪をポニーテールにまとめた茶色い瞳の可愛らしい女性が立っていた。
「えっと、エルフ族と人族と、精霊が4人? それも大精霊と中級精霊の組み合わせですか。たしかに変な組み合わせですね」
「そう思うだろう? 関係性も奇妙なんだ」
「何かしら? イリスちゃんのお世話係がそんなに変だって言いたいの?」
「ち、違いますよ! そんなんじゃないですって!」
ブランに詰められて驚いて口調が変わるドーレスさん。
ブランはどうやら若干威圧しているようだ。
「は、はぁ……。でも確かに妙ですね。大精霊が2人もいらっしゃるなんて」
職業精霊たちの中での大精霊はいわゆる管理職であり、会社で言えば社長や会長といった感じのようだ。
つまりお偉いさんということになる。
「ふむふむ」
「え? な、なんですか?」
何やら興味を示したのか、地の精霊の女性が俺とあいなを交互に見る。
「こっちの人族はいいスキルを持っていますね。それ以外は平凡ですが」
「へ、平凡……」
あ、あいなが落ち込んだ。
「こっちのエルフ族は……。奇妙すぎますね。スキルは……、え? 何にもわからない!? なんで!?」
どうやらこの精霊はスキルを視る能力を持っているようだ。
ところで俺のスキルって他からだと視えないの?
「あれ? ブラン、俺のスキルって視えないの?」
「うん、組合でもわからなかったでしょ? だからグレモリー様がイリスちゃんのためのスキルカードを作ってくれたのよ」
「はー。そうだったんだ……」
「もしかしてあまり聞いてなかった?」
「うん。そもそもスキルが精霊と仲良くなる以外なかったからな」
組合ではスキルの詳しいことはわからない。
基本的に前例のあるスキルに関しては表示されるし説明されるのだが、俺のスキルはルナが作ってくれたスキルなので『スキルなし』と判定されてしまっていたのだ。
幼馴染の4人は俺のスキルのことは知っているので何も疑問に思わず一緒にいてくれたけどね。
ちなみにこの世界ではスキルを持っている人と持っていない人がいるので、『スキルなし』の人も別に珍しいことでもないようだ。
後天的にスキルを取得出来たりもするし。
「精霊と仲良くできるスキルなんて聞いたことがないですね。精霊術士ってわけでもないようですし……」
「あはは……」
何やら興味津々な様子の地の精霊。
ところで鉱石は買えたりしないのだろうか……。
「ところでここって鉱石の購入は可能だったりします?」
「鉱石ですか? 上の集積所で購入可能ですのでご案内しますよ」
「あ、お願いします」
「はい。ではまず見学ということでしたので、先に中のほうを少しご案内しますね」
というわけで俺たちは地の精霊の女性に案内されて坑道内を見学をすることに。
この地下採掘場の坑道内は天井もそれなりに高さがあり、通路も広めに作られていてかなりきれいに整備されていた。
遠くからは採掘音が聞こえてくるものの、坑道の長さのためか他の作業員に出会うことは少ないようだ。
「交代制なので一度に作業を担当しているドワーフの数は多くはないんですよ。そのおかげで管理がしやすいんですよね」
「へぇ~」
さらに言及するなら、この坑道内は意外なほどに明るく、白い光源があちこちに設置されていたのだ。
どうやら光の精霊も協力しているらしい。
「色々な精霊がここで働いてるんですね」
「はい。水の精霊や火の精霊にも手伝ってもらっているんですよ」
「じゃあいないのは闇の精霊と空間の精霊くらいですかね?」
「そうですね。闇の精霊は基本的に人数がいませんし、空間の精霊はお一人だけですし……」
「ほぅ……」
話を聞いて、アルテミシアを見る。
「照れる」
当の空間の精霊は照れていた。
「それにしてもアルテミシア様と契約されるとか、とても正気の沙汰とは思えませんね。普通じゃ契約なんて不可能ですから。それにどんな精霊が行っても図書館から出てくることがない引きこもりでしたし」
「頑なに引きこもってたのか……」
アルテミシアの能力の便利さを考えるに、すべてが手に届く範囲に存在していたのだろう。
そんな能力があったら俺も外に出なくなる可能性がある。
「アルテミシア様がこちらに出てくる事情。どんな事情があったというのでしょうか。まさか図書館で何かあったとか?」
「んーん。イリスお姉ちゃんと契約するため」
「あれ? それだけなんですか!?」
「うん」
ほんと、何でうちに来たんだろ。
たぶん俺たちのメンバーの中で一番謎の存在だと思うよ。
ところで、この地下採掘場を見て思ってたんだけど、これうちの方でももしかしたら作れるんじゃなかろうか?
もちろん俺とアルテミシアだけで出来るわけはないんだけど。
「この採掘場の形ってうちでも実現できたりしないかな?」
「ん。行けると思う。地下資源はたっぷりあるはず。どこかで地の精霊スカウトして集める」
とりあえず仕事に就いていなさそうな探査能力のある精霊を探してみようかな。
それと、採掘はどうしようか……。
「どこかに新しい採掘場を作るんですか?」
なんだかここの地の精霊が興味を示してきたぞ?
「アルテミシアが作った空間というか領域があるんですけど、そこを開発中なんですよ。んで住居も必要なんですけど資源も採掘できそうなので採掘場をそのうち用意したいなという話をしてるんです」
「なるほど。新しい採掘場の建設予定があると」
「そうです」
どうやら何かいい案を考えてくれそうな雰囲気を感じる。
「ここではドワーフの皆さんにお願いしていますけど、精霊の国では採掘担当はノームだったんですよね。ノームに知り合いがいるのでちょっと聞いてみます」
「お? お願いしてもいいですか?」
「もちろんです。管理が出来そうな精霊の情報と建築関係も調べておきますね」
「はい! お願いします!」
どうやら地の精霊のネットワークで採掘関連もどうにかなりそうだ。
建築関係は住居を増やすのに必要だからそっちも大事だ。
「では一旦その話は残りの案内と集積場を案内してから確認してみます」
「お願いします」
その後坑道内を一通り確認し、アルテミシアとどんな感じで進めるかを軽く相談した。
その間、なんかあいながずっと顎に手を当てながら何かを考えているようだったけど。
「あー。地上。眩しい……」
少しの時間とはいえ地下にいたせいか、地上の陽光が目に染みる。
この後は集積場に行って購入相談をしてターレスの街に戻る予定でいる。
「ねぇイリスさん。私もイリスさんたちの領域? っていけるんですか?」
「なんで?」
「いや、行きたいな~って」
地上に出てから少しして、あいながそんなことを聞いてきた。
来てもいいけど今特に家以外何もないんだよね。
「アルテミシアはどう思う?」
「う~ん。あまり人間はお迎えしたくない」
「だよなぁ」
元々アルテミシアはあまり人間に対して好意的ではない。
というかむしろ無関心に近い。
「え? 私、イリスさんのお友達で仲間ですよね?」
「成り行きで仲間になった感じはあるね」
「なるほど、ちょっと情報を整理させてください」
「うん」
するとあいなはうんうんと唸りながら考え込んでしまった。
ちなみに今回の件は嫌がらせとかではない。
どっちかというとアルテミシアの心証を考えてのことだ。
アルテミシアが作ってくれた場所なので出来るだけその意には沿いたいと考えている。
「皆さん、なんか複雑な関係なんですね」
そんな俺たちの関係に、さすがの地の精霊さんも困惑気味だ。
まぁあいなは森で拾ったからね。
「イリスさん! アルテミシアさん! エリアさん! グレースさん! ブランさん! ぜひ正式に私もお仲間に加えてください!! 寂しいです!!」
素直だった。
俺としては一時的に仲間になった後、あいなが落ち着けるところを見つけたらお別れも視野にいれていたのだけど、どうやらその必要はなさそうだ。
「正式な仲間になると簡単にほかのところ行けなくなるけどいいの?」
「はい! 行きたいところは特にありませんし!!」
力強くそう頷くあいな。
可愛い奴め。
「イリスお姉ちゃんが決めたことなら私は反対しない」
「本当ですか!?」
「嘘はつかないから安心してほしい」
「やったー!!」
俺の行動は人によっては意地悪に移るかもしれないけど、個人的にあいなを妹分として可愛がってるからな。
飛び込んでくるなら受け入れることもやぶさかではないのだ。
「あのイリスさん? つかぬことをお伺いしますが」
「どうしたの?」
「何が決め手で私と仲良くすることにしたのでしょうか」
「やっぱりスキルだね」
「結局体目当てじゃないですか!」
「そうともいう」
言い訳はしないぞ!




