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第25話 地の精霊の地下採掘場見学1

 ドワーフたちと地の精霊による地下採掘場は街道から離れて少し離れた先、エリアとグレースが争っていた場所からさらに奥に行った場所に存在していた。

 入り口は大きな囲いの中にあるらしく、その囲いの周囲を地の職業精霊が巡回している姿が確認できた。

 今巡回しているのは男性の職業精霊で、革製の防具を装備している。


「あのー。ここに地下採掘場があると聞いたので見学に来てみたんですが、もしかして邪魔だったりします?」


 意を決して男性に話しかける俺。

 男性は俺を見ると一瞬だけ警戒するような目を向ける。

 しかしすぐに不思議そうな顔に変わると、やんわりと声を掛けてきた。


「採掘場なんて気軽に見学するものでもないぞ。それにしても人間にエルフ? に精霊が4人ってどんな組み合わせなんだ? しかも上級精霊が2人って……」


 やっぱり同じ精霊から見ても不思議なのだろうか?


「私たちはイリスと契約しているのよ?」

「珍しいことに契約できたんですよ?」

「わ、私だけ契約できてない……。一応イリスちゃんのお姉ちゃん兼お世話係なのに……」

「私、契約してる。でも契約2番目……。1番は奪われた……」


 精霊たちの説明はなんか釈然としないものがあった。

 エリアとグレースは勝ち誇ったような感じだし、ブランだけずっと負け続けてるし、アルテミシアはエミルに負けたことを根に持っているようだ。


「こ、個性豊かなのだな……。それにしてもイリスか。もしかしてグレモリー様のところの?」

「あ、師匠のことご存じなんですね?」


 どうやらこの男性は師匠のことを知っているらしい。


「知っている。私の剣術の兄弟子でもある【月影つきかげ】がよく世話になっていたようだからね」

「あぁ月影兄ですか。珍しい月の職業精霊ですよね。月属性って何なんだろってずっと思ってたんですよ」


 月の職業精霊の月影。

 黒髪長身の美男刀使である。

 優しくて義理堅い侍である月影兄はその実力も相まって街の女性たちの憧れの的であった。

 今は修行の旅に出ているのでドレアにはいないが、ドレアにいるときはよくお土産を持って訪ねてきてくれたものだ。


 月の職業精霊。

 月属性という月光に関する謎の属性であり、月の守護者らしい。

 今は失われた月の女神の眷属であるらしいが詳細は不明。

 神様が失われるってなんなんだろうね?


 この世界には謎が多すぎるようだ。


「それならまぁ見学くらいはいいだろうが、本来危ないところだからな? 一応支えは作っているがいつ崩落するかはわからないしよ」

「そうですよね。とりあえず少しだけ見て、もし取引とかできそうなら鉱石とか売ってもらえると嬉しいななんて……」

「あぁ、そいつは問題ない。ターレスの街とドレアの街の両方に出してるからな。どこかの領主の持ち物ってわけでもないから大丈夫だぞ」

 

 どうやらこの場所の功績は2つの街に卸されているらしい。

 どうせだから何か鉱石を仕入れて錬金術の材料にしたいところだけどなぁ。


「中に入って少し行くと地下へ続く坑道がある。その中にいる妹に声をかけてくれ。色々と教えてくれるはずだ」

「ありがとうございます」


 というわけで早速中へと進入。

 囲いの中には外からはよくわからなかったがいくつかの建物が建っているようだ。

 おそらく倉庫や食堂のようなものなのだろう。


「おいお前さんたち! どこから来やがった!」


 声のした方向に視線を向けるとそこには身長でいうと俺より少し高いくらいのヒゲを生やした男性が立っていたのだ。


「入口からですけど」

「そうじゃねえ、そうじゃねえよ!」


 俺が素で答えると男性は地団駄を踏んで「そうじゃない」と口にする。

 どうやらこの男性はドワーフ族の男性のようだ。

 この世界のドワーフ族はだいたい145cmから155cm程度の大きさまで成長するらしい。

 ちなみに身長の低い男性を煽る女性の口癖も「あなたってドワーフ?」とのこと。


「街のほうから来ました」

「ほうってなんだよ! 街からなのか街じゃないのか!」


 この人、面白い。

 もしかして芸人か?


「おそらく街です」

「いい加減にしろ! どっちの街だ? ターレスか? ドレアか?」

「ドレアの街からです。それはそうとお付き合いいただきありがとうございます」

「お、おう。いいってことよ。じゃねーわ! それでなんでここに来たんだ?」

「見学に。あとできれば鉱石買いたいななんて思いまして」


 なかなかノリのいいドワーフの方だった。

 いや、俺のほうがしつこすぎたかもしれないけど……。


「よく地の精霊が入れてくれたな。普通なら拒否されると思うんだが」

「共通の知り合いがいたのでその縁ですね」

「なるほどなぁ。ところで、気になってたんだが、お前の周りにいるのって人間の小娘1人を除いて全員精霊じゃないか? それも職業精霊ばかり」

「そうですね。仲良くなった人、俺の世話をずっとしてくれてるお姉さん、途中で仲間になった双子という感じです」

「あ~……」


 ドワーフの男性は俺の説明を聞いてすぐに頭を抱えてしまった。

 あれ? 質問の意図を読み違えたか?


「まず……。どうやったらそんなにたくさんの職業精霊と仲良くなれるのかがわからねぇ。俺たちは地の精霊と懇意にしてた縁から色々と手伝ってもらってるわけだが……。基本的に俺たちと精霊たちの価値観は違うだろ?」

 「まぁそうですね」


 この辺はドワーフの男性の言う通りだったりする。

 ただ、俺たちの場合はっていうと……。


「私とイリスちゃんの価値観は常に一緒よ?」

「私も一緒」

「私は面白そうな子だからかな。価値観なんて些細な事よ」

「あたしもそんな感じね。価値観なんて考えるだけ無駄」

「ふーむ……。お前が特異なことだけはよくわかった。ともあれ、精霊が信じるやつに悪い奴はいねえ。歓迎するわ」

「ありがとうございます。そういえば入り口の地の精霊に妹さんを紹介されたのですが」

「あ? なんか気に入られてるな、お前。まぁいい。こっちだ」


 どうやらここのドワーフと地の精霊たちは特別な間柄にあるようだ。

 なんか好奇心で入り込んでしまってごめん。


「この地下坑道は元々地の精霊の兄妹が見つけた土地なんだ。俺たちは地の精霊との縁でここを利用させてもらっている」

「なるほど。いい協力関係なんですね」

「おうよ。お前エルフにしちゃ話が分かるな?」

「ドレアのほうなんで多種族の知り合い多いんですよ」

「あぁ。ドレアはいいところだ。種族の坩堝ってやつだもんな」


 そんな話をしながら歩き続けているとだんだんと岩石質の場所にたどり着く。

 

「この付近は土の層のそれなり下に岩石の層があってな。一応風の精霊が空気の循環を手伝ってくれてはいるんだが、人によっては体調崩すかもしれないから注意しとけ。あとできるだけ埃は吸い込まないように対策しておけ」

「わかりました。とはいえ布くらいしか持ってないんですよね」


 そのまま歩き続けていると前方から女性の声が聞こえてきた。

 件の妹さんだろうか?

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