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第23話 2日目、朝食後の出来事

 その日はなんとなく保存食を食べどこに移動するわけでもなくテントで揃って就寝となった。

 なおトイレは汲み取り式であるため臭いが辛かったことを報告しておきたい。


「身体が痛い……」


 朝のあいなはしきりに身体を伸ばしたり揉んだりしながら慣れない痛みから逃れようとしていた。

 俺はそんなあいなを横目で見つつ、街で用意した食材で朝食を作っている。

 今日の朝ご飯はベーコンエッグトーストとサラダだ。

 アルテミシアの用意した空間収納は物体の時間が止まる仕様だとわかったため、新鮮なものを収納しておいたのだ。

 なのでミルクなんかも用意できてしまう。

 まさにチートである。


「おぉ!? 目玉焼きがあるじゃないですか? ど、どういうことですか!?」


 朝食の準備を終えた頃、連絡塔に備え付けられている有料の井戸から戻ってきたあいなが目玉焼きに食い付いた。


「アルテミシアの空間収納から取り出して作ったけど、嫌いだった?」

「いいえいいえ! 目玉焼き大好きなんです! でもまさか新鮮な卵が食べられるだなんて! チートってやつですか!?」

「たぶんね」


 俺もそう思ったけど今はある意味俺の能力みたいなものでもあるし深いことは考えないことにした。


「ちょくちょく思ってたんですけど、イリスさんってなんか私と話が合いますよね? もしかしてですが、イリスさん、あなたは……」


 まぁ隠すわけじゃないけどこんなに色々とばれるようなことしていたらそろそろ俺が転生者だと気が付かれる頃合いだろう。

 覚悟を決めておこう。


「私の運命の人でしたか!?」

「違いますが?」

「そ、即答……」


 朝からテンション高い子だなぁと思いつつ、なかなかズレた子だなという感想を持つに至った。


「イリスちゃんは私の運命の人よ? ね~?」

「違う。私の」

「全員違いますが?」

「「!?」」


 君たちは何を言ってるんだか。

 俺は当面恋愛云々はごめんなんですよ。

 やること多いというのに……。

 固まる2人を放置しつつ、俺は片手間で沸かせていたケトルのお湯をカップに注いで少し冷ましてから飲んだ。


「ふぅ。おいしい」


 いずれ水の精霊とも絆を結んで契約すべきだろう。

 ミューズさん辺りが適任か?


「はぁ、おいしい。それにしてもなんとなく思ってたんですけど、やっぱりイリスさんって日本から転生した人だったりするんですです?」

「なんで、『です』を2回繋げたのか……。まぁそうだけど? 事情は色々とあるけど」

「ほう……」


 他の人ならいざ知らず、1号であるあいなが相手ならあえて隠すことでもないので肯定する。

 それ以降、特に会話という会話もなく、次の場所へと出発することになった。

 今日はテント経由で一度アルテミシアの領域の家に泊まってみようかな?


 しばらく歩いていると何台かの馬車とその護衛たちとすれ違う。

 彼らはターレスの街からドレアの街に向かっているようだ。

 護衛の皆さんは剣に杖、弓矢など思い思いの装備で武装しているが、魔法使い以外は基本革装備であった。

 長期の護衛の場合、金属製防具を付けるか革製防具を付けるかは人それぞれだが疲労度が大きく変わってくる。

 今回の護衛たちは疲労軽減の方向を選んだのだろう。


「冒険者の方、おっと失礼。探索者でしたね。意外と革製防具が多いみたいですね」


 やはり気になるのかあいながこっそり問いかけてくる。


「仕事が護衛か討伐かで装備を変える人は多いよ? 剣豪みたいな人はどこでも革製防具だったりもするけどね」

「ほうほう」


 ちなみに戦争関連は【傭兵組合】が関係してくるので探索者の出番は基本的にない。

 とはいえ、傭兵組合は損耗率がひどいという話だ。


「私、ラノベとか好きなんですよね。で、いつか自分もすごいことができたらな~なんて考えていたんです」

「すごいこと?」

「はい。こうチート的な感じでがっぽり稼いだりですね。有名になる気はないので名誉は別にいらないですけど」


 あいなはある意味夢見る少女といった感じだった。

 でも君には素晴らしいチートがあるじゃないか。

 俺はそれ狙ってるよ? 【武具錬成】スキル。


「そうねぇ。あいなちゃんはイリスちゃんと相性良いと思うわよ? スキルの相性ね」

「そ、そうですかねぇ? えへへ」

「何に照れてるのかはわからないけど、俺はあいなのことスキル目当てだと思ってるからな」

「その『体目的だ』見たいな言い方は嫌です……」

「誤解を恐れない言い方をするなら間違いではないぞ」

「なーんでこの人ストレートなんだろう……」


 実際組めば儲かると思ってるから積極的にもなるよ!

 そんなこんなで若干わちゃわちゃしつつターレスの街へ向けて歩みを進めていく。

 そんな中、途中で立ち寄った連絡塔で奇妙な話を耳にする。


「この先の街道脇で闇の精霊と光の精霊が喧嘩をしているらしい。辺りには暗闇と光が立ち込めていて視界が確保できないんだとか」

「本当か!? 困ったなぁ。精霊相手じゃ普通の護衛だと手が出せないしなぁ……」

「誰か職業精霊に話つけられないか? それができたら仲裁も可能だと思うんだが」

「どうかなぁ。一旦ドレアの街に行ってみるよ。あの街なら精霊も多いし」

「でも丸一日かかるぞ? まぁやるしかないか」

「ちょっと行ってくる」


 どうやら精霊が喧嘩をしていて安全の確保が難しいらしい。

 一体どういうことなんだろう?


「うーん、ブラン、アルテミシア。仲裁できるかわからないけど様子見に行こうか」

「それがいいと思うわ。イリスちゃんの話なら聞いてくれるはずだし」

「一旦捕まえて話し合いする」

「OK。じゃああいな、行くよ」

「えっ!?」


 あいなの返事も聞かずに俺たちは件の精霊たちの元へ歩みを進めるのだった。

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