第22話 旅の出会いとスキルの変化
旅立ち初日、その日は特に大きな問題はおきなかった。
ドレアの街周辺に生息している野生動物たちについて知ってる限り説明したり道中にある建築物や警備隊の連絡塔などについて説明したくらいだろうか。
「というわけで今日はこのドレア警備隊の連絡塔横のキャンプ広場で休憩していくよ」
今俺達がいる場所は街から日が暮れる距離に存在しているドレア警備隊の連絡塔の1つにあるキャンプ広場だ。
この広場には結界塔が設置されているので魔物などの侵入については対策済み。
野営の人員についてもこの広場については人を割く必要はないので、みんなで安心して休むことができる。
ちなみに警備隊の哨戒は夜間も行われているので野盗の心配もない。
「こんな設備を1つの街が用意できるんですね。経済力すごいなぁ……」
「ドレアは他と比べると儲かっている都市だからね。王都よりドレアに住みたいって人のほうが多いよ。でもドレアは王都よりも新規住民の審査が厳しいんだ」
「へぇ〜」
ちなみに余談だが、ドレアの街はエルフの国である【アイネティス】の主要な都市の1つだ。
だけどとある事件が起きて以降はドレアの街は王族関係者の立ち入りを拒絶するようになった。
忠誠は国と古代の神々にあるが王族は拒否するというスタイルだ。
別に何か思想的なものがあるわけではないんだけどね。
「そんなわけでこの国、【アイネティス】ではドレア周辺との関係はちょっと特殊な感じになっているってわけ」
「そうなんですね!」
「お嬢ちゃん、よく知ってるようだね。誰かに聞いたのかね?」
あいなに説明を終えた直後、突然誰かに声をかけられた。
振り向くとそこには壮年から老年の間くらいのエレガントな紳士のようないでたちの男性が座っていたのだ。
「師匠からです。グレモリーの」
「ほぅ(あの子がね……)」
「?」
何か小さな声が聞こえたような気がしたがよくわからない。
この男性は一体誰なのだろうか。
「ははは。無礼を詫びるよ。すまないね。私は【アイオニス】という隠者だ。【聖域の森】周辺を巡回しながら暮らしている」
「あいなです!」
「ブランです」
「アルテミシア……」
「イリスです」
「ほう」
「えっと、何か?」
「いや、何でもないよ」
この男性、俺の名前にだけ反応したようだけど知り合いにいたっけ? 覚えがないな……。
それにしても……。
「なんでアルテミシアだけじゃなくてブランまで俺の後ろに隠れてるわけ?」
「えっ? あ~、えっとほら、わ、私って人見知りだから……(うげぇ、まずい人に出会っちゃった……)」
「?」
ブランからもよくわからないけど小さな声が聞こえてきた。
「君たちはこの国とこの世界の成り立ちについて知っているかね?」
「えっと、少しは?」
「私はさっぱりです!」
元気いっぱいにそう答えるあいな。
まぁあいなは仕方ない。
「そうか。この世界は異界からやってきた原初の神【アイオン】が作り出したとされている世界だ」
「異界からの神……」
たしかギリシャ神話にそんな名前の神様がいた気がしたけど、まさかね……。
「うむ。その神がこの世界に最初の集落を作った。その集落は神の名前と冠し【アイオン】と名付けられたのだ」
原初の村に原初の神の名前が付けられた。
神話でよくありそうなパターンだな。
「その集落は現在、聖域の森と呼ばれている場所にあったのだよ。そこから人々は様々な方面に旅立った。これが各国の興りの始まりというわけだ」
「なるほど」
聖域の森に原初の村があったのか。
もしかして調べると古代の遺物とかでてくるんだろうか?
「それだとエルフの国もその流れで建国されたような感じになりますよね?」
「うむ。この国である【アイネティス】は聖域の森の守護を目的に原初の神アイオンにより建国された。まぁ当時はただの少し大きな集落程度ではあったのだが……」
まるで知っているようには話すこの男性。
見た目はよく見かける人族みたいなのになぁ……。
「【アイネティス】がそんな役目を背負っているとは知らなかったですね」
「であろう? まぁこれを知る者はもうほとんどおらぬ」
なかなか面白い神話だった。
しかしアイネティスの前身が神の興した集落だとは思わなかったけど。
「エルフとは正当な聖域の森の所有者が再びこの世に出てくるまでの間、聖域の森を守護するために神々の眷属である精霊と協力することに長けた者として生み出された存在だ。ゆえに長くこの国を治めているのだよ」
これは俺も師匠から聞いたことのない話だった。
「イリスさんはエルフ族の歴史って聞いたことなかったんですか?」
「俺? エルフに興味ないからなぁ。たまたまエルフ族なだけだし。どっちかというと精霊のほうに興味がある感じかな」
「イリスちゃんが私に興味あるのが嬉しい!」
「ブラン、間違い。私たちに訂正する」
「はっはっはっ。イリスさんは本当に精霊に好かれているのだな。よろしい。であれば1つの力を授けよう」
「えっ?」
男性は俺にそう言うと、そっと俺の手を握る。
周囲からは「あっ!」という声が聞こえてくるが、俺はその大きな手から流れ込んでくる謎の力に困惑していた。
これは、何?
『スキル【精霊との絆】が1段階ランクアップし、スキル【精霊との絆と力の結合】に変化しました。スキル【精霊を繋ぐ力】が解放されました』
どういうことだ? 俺のスキルが変化したぞ!?
「困惑しているようだね。だがこれは説明する気はない。贈り物だ。受け取っておきなさい。そして後のこと頼んだ、イリスよ。そして、また会おう」
慌てて俺は男性のほうに顔を向ける。
するとすでにその場に男性はいなかったのだ。
「き、消えた?」
「今そこに男の人がいたはずなのにスッと消えました!?」
慌てる俺とあいな。
しかし、ふと見たブランとアルテミシアの顔はどこかほっとしたような顔をしていた。
俺が出会った男性は誰だったのだろうか……。
※※※※※
「お帰りなさい、お父様」
「あぁ、ただいま。あの子に会ってきたよ」
「どうでしたか?」
「うむ、いい子だったよ。スキルも順調に馴染んでいるようだ。いずれあの子も我らの場所にたどり着くだろう。ところで、孫娘は?」
「今修行中です。順調に成長しているようですから、いずれみんなが集まれるようになると思います」
「そうか。それは楽しみだな。しかしあの子が戻ってくるかはわからないな」
「お姉様でしたらいずれこちらに戻ってきますよ? 心配しなくても大丈夫です。おっと、私はまた見守りに行かなければいけないんでした。それでは失礼しますね」
「あぁ、入れ込みすぎて迷惑をかけないようにな。ルナ」




