第19話 謎が謎を呼ぶ黒髪少女との出会い
「大丈夫か? おっと失礼。大丈夫ですか?」
木の幹を背に、座り込んでいる少女に声を掛けつつ様子を見る。
少女は黒髪をした可愛らしい小柄な感じの子だった。
黒髪は珍しいわけじゃないけど、何となく安心できるような感じの可愛らしい顔立ちをしている子だと思った。
「あ、あの! ありがとうございました! あっ、ぐふっ!?」
慌てて立ち上がろうとして、失敗して背中を木の幹に打ち付ける少女。
あんまり慌てなくてもいいからゆっくりしていけばいいと思うよ。
「それで何でこんなところに?」
「あ、えっと。その……」
何か訳ありなのだろうか。
何かを考えている様子で口をパクパクさせている。
「まぁ言えないならいいけど、街、すぐそこですよ? それじゃ」
たぶん危険性はないと思うので街の方向だけ伝えてその場を立ち去る。
「ま、待ってください! あの! わ、私、ここに来たばかりで、な、何もわからないんです……」
「ふむ」
「えっと、その、来た場所はその、言えないんですけど……」
どうやら徹底して秘密主義なようだ。
こういう場合何から教えたらいいんだ?
「まぁ犯罪者でもないならどこから来たかは別にいいですよ。人には言えないこともあるでしょうし」
「は、犯罪とかはしてません! ただ、その、言っても信じてもらえないだろうと思って……」
「ふむ。まぁいいですよ。俺にも色々あるんで。それで、何が知りたいんです?」
「えっと、色々です。この街のこととか」
この少女はおそらく何らかの理由でこっちに来た異世界人なのだろう。
まぁ本人が話したくなった時にでも耳を傾ければいいだろう。
そんなわけでこの付近の事情について軽く説明することにした。
まぁ戦争になりそうとかそういったきな臭い情勢はないので魔物にだけ気をつければ比較的のんびり過ごせると思う。
「は、はぁ。聞いていたよりは落ち着いてるんですね。てっきり魔王とかが暴れている世界かと思っていました」
「魔王はいるけど多分想像しているような魔王じゃないので大丈夫だと思いますよ」
「えっ?」
やべっ。余計なこと口走った。
「魔物を従える異形、それがこの世界の魔王。魔族の王とかじゃない。注意」
「あ、はい。すみません」
ナイスフォローだ、アルテミシア!
ちらりと視線を送るとアルテミシアは俺の方を見てにっこり微笑んだ。
さすがは分かってる友達だな!
「そういえばここに来る前に誰かに会ったりしました? 可愛い女の子とか」
「あ、はい。とても可愛らしい女の子に出会いました。なんかちょっとした歪みが発生してるから当分戻れないけどごめんねって言われちゃいまして……」
「あー。事故系かぁ……」
「えっ?」
しくじった。またやっちゃった……。
「普通じゃない移動をする時、その可愛い女性に出会うことがある。運がいいと何か使えそうなスキルとかくれる」
「へぇ~。そうなんですね! ちっちゃいのに色々知っててすごいです!」
「ん」
アルテミシアはそれだけ口にすると、俺の背中によじ登って抱き着いた形で安定する。
空間系のスキルが使えるせいで変な場所でも安定できるのが羨ましい。
「おふたりとも、仲が良いんですね。羨ましいです!」
「そうですかね?」
「これは序の口」
「ちょっと待て、何が序の口なんだ」
「内緒」
相変わらずアルテミシアのことはよくわからない。
とりあえず、こんなところで話してるのもなんだし、街へ戻りますかね。
「じゃあとりあえず街へいくとしますか。身分証みたいなのはないだろうから仮で通しますかね」
「あ、はい。よ、よろしくお願いします」
さっそく俺たちは森を抜け、街道沿いに街の門を目指して歩き始めた。
その時「あ、ちょっとまってください」と声をかけられたので少女の様子を見る。
どうやらさっき見つけた折れた剣のもとへとむかっているようだ・。
そしてーー。
「あちゃー、だめかぁ。せっかくスキルで武具錬成をもらったのになぁ……」
話しぶりからすると少女は武具錬成なんていうスキルをもらっていたらしい。
まぁルナのことだから他にも上げたんだろうけど、あの折れた剣は少女が作ったものだったようだ。
なんで折れてたのかものすごく考えたのに、答えがこれとは思わなかったよ。
「もう大丈夫です! 折れた武器や壊れかけの盾は回収しましたので!」
「了解。んじゃ行きますよ」
でもそっか、この子武具を錬成することができるのか。
俺の方で素材作ってからこの子に武具を作ってもらえば幅が広がるかもしれないなぁ。
まぁこの子に問題がなければうちのほうでしばらく面倒を見てもいいかも。
そんなことを考えつつ歩いていた俺たちはいよいよ街の門へとたどり着く。
「お、イリスじゃん。早かったな? っと、その後ろのは誰だ?」
「あー、この子は迷子っぽいんですよね。たぶんなにかの事故に巻き込まれたっぽくて」
「そりゃ心配だな。それで近くになにか痕跡とかはなかったのか? 壊れた馬車とか野盗みたいなのとかさ」
「ないですね。結構遠くから来たようで、装備もぼろぼろになってました。ゴブリンに襲われていたところで遭遇した感じです」
「そうか……。ならとりあえず簡単な検査だけして、一旦グレモリー様に話を聞いてもらってくれ」
「そうします」
さすがは師匠! 師匠がバックに付いているだけでほとんどの問題は軽くスルーできるようだ。
いや、本当にそれでいいの!?




