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第18話 少女とゴブリン

 アルテミシアの探索者登録を終えた俺はアルテミシアを連れたまま午後3時までに全部の配達を終えた。

 その足で一度店に戻ると、スキルを試しに街の外に向かうことにした。


「おや? イリスじゃないか。外に行くのかい? またの森かい?」


 街の門を越えて外に向かおうとしたその時、門前で警備隊の人に声を掛けられてしまった。

 

「そうです。まぁ採集とちょっとスキルを覚えたので試してみようかなと」

「なるほどね。あの森はゴブリンもいるから十分気をつけてくれよ」

「もちろんです」


 一通り挨拶をして俺はアルテミシアと一緒に街の外へと出ていった。


「アルテミシアは街の外ってきたことある?」


 街の外は広い平原と深い森、そして大きな山、その山から続く河川が存在している。

 山の麓には深い森が広がっており、迷えば生きて出られない可能性があるので注意が必要だ。


「ない。ゴブリンがいるの? あの森に?」

「おう。とはいえあの森には敵としてのゴブリンと亜種族としてのゴブリンがいるんだよな。亜種族の方のゴブリンは小さい人みたいな外見をしてるから見分けがつくよ」


 ゴブリン種は不思議なもので、まともな生活をしているゴブリンは人と同じような外見をしている。

 まぁ耳がやや大きめくらいの違いはあるのだけど。

 敵として出てくるゴブリンは緑色の奇妙な生物の姿をしている。

 亜種族のゴブリン曰く、魔物の王に忠誠を誓った【堕落した者】が彼らなんだとか。

 魔物の王、つまり魔王は勇者たちが討伐すべき目標だけどね。


「魔物の王の配下になったかの違いがあるらしいからな。そのせいで奇妙で醜悪な見た目になったのかも」


 魔物の王とは大昔の呪いの集合体のようなものだと言われている。

 異世界からの勇者、もしくは異世界人の魂を宿した者でない限り攻撃を通すことができないのだとか。

 それでルナは事故で死にかけていたライルを勇者としてこの世界に連れて来たというわけだ。

 まぁ本人の願望があったらしいけど。


「そんなわけで俺たちは魔王を倒すために勇者の力を借りなきゃいけなくなったというわけだよ」

「その話は聞いたことがある。図書館の蔵書の中には歴代勇者の履歴が残ってるから」

「へぇ~。ちょっと見てみたくはあるね」

「見る?」

「いや、迷子になって事故りそうだからやめとくわ」

「残念」


 ドレアの街からゴブリンの出る森までは比較的近い。

 そのため時折ゴブリンが街道に出て来ては旅人や行商人を襲ったりするのだ。

 まぁ定期的に警備隊が巡回しているので、大きな被害は今のところないけど。


「とりあえず日が沈む前に帰るから、森近辺を巡回してみようか。多少ゴブリンがいるかもしれない」

「ん」


 ゴブリンは基本三人一組という構成で行動している。

 なので本当はできる限り複数人で動いた方がいいのだが、今回は練習も兼ねて俺とアルテミシアだけだ。


「ん~? 道を逸れた森の付近、何かいる」

「お? どれどれ?」


 アルテミシアが指さした先は街道から少し離れた場所にある平原と森の境目あたりだった。

 よく見てみると何体かのゴブリンの死体が転がっている。


「誰かが倒してるのかな? それにしては音がしないけど。とりあえず警戒しながら近寄ってみようか」

「ん」


 俺たちはゴブリンの死体付近までそろりそろりと近づいた。

 倒れているゴブリンは2体いて、近くに小さな盾と折れたショートソードが転がっているのが確認できる。

 軽く調べたところ、ゴブリンの持ち物は木の棍棒と木の槍だったので別の人の持ち物のようだった。


「アルテミシア。ちょっと周囲を警戒してて。このショートソードが気になる」

「わかった」


 さっそく折れて捨てられているショートソードを調べてみる。

 するといつ壊れてもおかしくないような古い品であることが分かった。

 騙されたのか、それとも手入れしないまま受け継いだのか、はたまた戦場後で拾ったのかはわからないけどとてもボロボロな状態だったのだ。


「資金難? 無謀な……」


 ゴブリンは基本三人一組で動いているわけで、2体が倒れている以上もう1体が確実に存在しているはずである。

 となると、攻撃者は逃げてゴブリンはそれを追ったのだろう。


「一体どこに……」

「ん、あっち」


 俺が攻撃者の行方について考えていると、アルテミシアが俺の服を引っ張った。

 アルテミシアが指さした先は、森の中だ。


「森へ逃げたのか。危ないかもしれないけど探しに行ってみる?」

「ん。いく」


 どうやらアルテミシアも行く気があるようだ。


「じゃあ注意しながら進んでみますか」


 俺たちは周囲の痕跡を探しながら森の中へと入っていく。

 まぁ本来は素人な俺には細かい移動の痕跡なんかわかるわけはないのだけど、攻撃者は慌てて逃げたのか草木を潰したりへし折ったりしながら逃げていたようで痕跡だけは残っていた。


「こっちに逃げずに街へと逃げればいいのに。警備隊に助けを求めるのもいいと思うんだけどなぁ」


 ちなみに警備隊は魔物に追われている旅人を助ける義務を負っている。

 なので街の近くまで逃げてしまえば助けてはくれるのだ。

 ただあまりにも頻度が高いと捕まって事情聴取をされたりするのだが。


「周囲には何もなし。痕跡は続いてるけど、慌てたのか躓いてるっぽいね」


 途中見つけた痕跡は石に躓いた跡と、血の付いた石ころだけだった。

 どうやら転んで負傷したらしい。

 こうなると新人探索者の線も出てくる。

 改めて周囲を確認してみると、どこからか声が聞こえてくるのが分かった。

 

 声は2つ。

 1つは「ゲヒヒ」という気味の悪い声が複数。

 もう1つは「こっちに来ないで!」という女性の声だ。

 この森には誰かの声をまねる魔物はいないはず。

 となると、この声は探している攻撃者の声ということになる。


「ん~……。声はどっちだ……。こっちか」


 耳を澄ませながら声の発生源を辿る。

 すると、少し開けた森の木の根元に足から血を流している少女の姿を発見することができた。

 運悪くもう1つの組も合流してしまったようでゴブリンは4体になっている。


(逃げすぎてほかのゴブリンにも見つかっちゃったってわけか)

(ん。助ける?)

(そうだね。見捨てても寝覚めが悪いし……)

(ん。わかった)


 俺たちの話もまとまったところでさっそく行動に移すことにした。

 まずは先制攻撃だ!


「【グラビティーボール】!!」


 早速アルテミシアに貰ったスキルを投入。

 俺の目の前には黒い渦を巻いたような球体が出現、それを撃ちだすとまっすぐゴブリンに向かって飛んでいく。

 すごい速度で飛んで行ったそれはゴブリンの頭に命中すると軽く吹き飛ばしてしまった。


「アルテミシア。このスキルえぐくない?」

「圧縮した重力を放って攻撃するから当然。当たればひしゃげてもげる」

「爆散したように見えたよ!」

「……爆発することもある」

「ゲヒャー!」

「グゲー!」

「ギャー!!」


 突然現れた俺に驚いたのか、ゴブリンは慌てて揃って俺に攻撃を開始。

 1体は棍棒、1体は錆びたナイフ、1体は弓を装備している。


「弓はまずいな。【シャード】!!」


 スキルを唱えると俺の周囲に4つの空間の亀裂が発生。

 亀裂はそのまま小さく鋭い針のような形になると、弓を構えたゴブリンにすごい速さで飛んでいく。


「ぎゃっ、ぎゃっ、ギャー!!」


 弓ゴブリンは2本まではどうにか避けたものの3本目が命中。

 身体を曲げたまま吹き飛ぶと背後にあった木の幹に打ち付けられ貼り付け状態になってしまった。

 

「ギャッ! ギャッ!」


 3体目と4体目が迫る中、俺は一旦その場を離れる。


「手伝う。【グラビトンスロー】」


「「ギャギャー!!」」


 アルテミシアがそう口にした途端、2体の動きが突然遅くなった。

 足止めか!


「さんきゅー。これならいけ【グラビティーボール】×2」


 俺の生み出した2発のグラビティーボールが足の遅くなったゴブリンを強襲。

 2体とも胴体から爆散し、敵はいなくなった。


「戦闘終了っと。アルテミシア。このスキル強いね?」

「私のスキル、強い。使用注意」

「だな。さてと、とりあえず話を聞きに向かおうか」

「ん!」


 俺たちは未だに座り込んでいる謎の少女にの状態を確認しに向かった。

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