第17話 探索者組合への配達と奇妙な精霊の話
「おはようございまーす。配達に来ましたー」
今日も今日とて納品業務。
まずは探索者組合に魔法薬を納品、同時に傷の回復が早くなる包帯や傷当ても納品する。
「いつもありがとうね~」
「いえいえ。定期的に依頼が来るので師匠も儲かって嬉しそうですよ」
もはやルート営業と化したこの配達業務は毎日一定の収益を生み出している。
元々の素材も安めなので利益率が高いのは内緒だ。
「そういえばこの前回復の護符っていうのを作ったんですよ。試供品に置いていくんで試してみてください」
「回復ってことは傷とか治せる感じなの?」
あれから数日が経過し、ルビーさんから納品された精霊文字の焼き鏝を使って革製の護符を作ったわけだけど、なかなか効果がよかった。
回復用の魔法薬や傷当てなどの所持量を減らしつつ複数回使うことが可能なのだ。
1枚の護符で10回まで使うことができ、傷は中度の傷までなら対応できるが深すぎると気休め程度の効果しか得られない。
発動トリガーは対象に張り付けてから「傷を癒せ」と口にするだけ。
「というわけである程度の傷までなら治せますね。魔法が使えなくても「傷を癒せ」と口にするだけで発動できますよ」
「へぇ~、いいじゃない。でも売ろうと思うと結構高いでしょ?」
「そうですね。銀貨8枚、8000ブラウくらいですかね」
「中度の傷の回復ができる魔法薬が1本銀貨1枚だから少しお得なのね」
「ですです。2本分お得は触れ込みに使えそうですよね」
うちとしても魔法薬の瓶は嵩張るので護符の納品の方が圧倒的に楽なのだ。
まぁそのうちもっと性能の良い商品を開発する予定だけど。
「じゃあだれか良さそうな人がいたら実験してもらうわね」
「お願いします」
ちなみにこの世界の通貨のうちエルフの国の通貨は次の通りになっている。
銅貨→10ブラウ
小角銀貨→100ブラウ
銀貨→1000ブラウ
小角金貨→10000ブラウ
金貨→100000ブラウ
プラチナ貨→1000000ブラウ
といった感じだ。
小角系の硬貨は江戸期の一朱銀や一分金みたいな感じになっている。
「なぁエルランド、お前本当にそんな精霊商人に出会ったのか?」
「なんだよロイ。疑ってるのか?」
「いや、疑ってなんかいないけどさ。ただ信じられなくてなぁ」
「ほら、証拠もあるだろ?」
「そうなんだけどさ、やっぱりなんか信じがたいんだよなぁ」
「気持ちはわかるけどな。俺も遭遇しなかったらそう思ってたわ」
不意に2人の男性探索者の会話が耳に飛び込んできた。
何の話をしているんだろう?
「ねぇエルダさん。あの2人何の話をしているんです?」
先ほどまで納品の話をしていた受付職員の女性エルダさんに俺は聞いてみることにした。
「なんでも森の中で困っていた精霊商人がいたらしくてね? 手助けしたお礼にって小さいけど空間収納ポーチをくれたんですって」
「へぇ~? どのくらいの量が入る感じなんです?」
「さぁ? 詳しくは聞いてないけど小さな部屋程度のサイズらしいわよ?」
「ほ~ん……」
どうやら近くで困っていた精霊商人がいたらしい。
それで人助けをしたらなかなかいいお例が貰えたのだとか。
人助けしてみるものだねぇ。
「精霊商人ねぇ」
その精霊商人がどんな精霊なのかはわからないけど何に困っていたんだろうか。
そんなことを考えていると、急に背中に何やら重みを感じた。
「うおっ!? なに!?」
慌てて振り返ると、そこにはいつのまにかアルテミシアがいた。
「イリスお姉ちゃん帰ってくるの遅い~」
「あぁ、ごめんごめん。ちょっと話し込んじゃってて」
「むー」
俺はむくれるアルテミシアを前に持ってきてエルダさんの前の台に乗せる。
「イリスちゃん、この子は? 精霊の子よね?」
むくれるアルテミシアのほっぺたをぷにぷにと突いているとエルダさんが声を掛けてきた。
「そうですよ。俺が契約している職業精霊です」
「へぇ~。小さい子だけどまだ子供でいいのかしら」
「う~ん、見た目ほど子供じゃないので戦闘はしようと思えばできるんじゃないですかね?」
ずっと引きこもっていたというアルテミシア。
見せてもらった力を考えるとサポート系という感じだろうか。
「お姉ちゃんと一緒になら外で戦ってもいいよ。まだお姉ちゃんは私の戦闘スキルは使えないけど、慣れてきたら許可出してあげる」
「おぉー。でも俺、非戦闘職だよ?」
「大丈夫」
「ということらしいです。登録できそうですかね?」
「ちょっと確認してみますね~」
エルダさんはそう口にするとその場を離れて事務室の方へと向かっていってしまった。
まぁアルテミシアの見た目は幼女だからだめかもしれんね。
「探索者組合。知識では知ってる。お姉ちゃんとなら戦闘も頑張ってこなす所存」
アルテミシアは気合十分といった感じだ。
「俺の方が戦闘スキルないんだよなぁ」
「じゃあ2つだけすぐに使えそうな戦闘スキルあげる」
『空間の職業精霊アルテミシアから【グラビティーボール】と【シャード】のスキルを授かりました』
「【グラビティーボール】と【シャード】? グラビティーってことは重力かな?」
「そう。私実は重力も兼任してる。【グラビティーボール】は圧縮重力のボールを敵に投げつけるスキル。【シャード】は簡易空間を生成して破砕、敵に空間の破片を投げつけて切り裂くスキル。お姉ちゃんにちょうどいい」
「ほほぅ」
何やら強そうなスキルを与えられてしまった。
これなら少しくらい戦闘もできるのかな?
「お待たせしましたー。登録可能とのことです。職業精霊用の登録カードを作成しますね」
「あっ、お願いします」
どうやらアルテミシアも登録は可能とのことらしい。
見た目は問題じゃないのだろうか。
「じゃあこちらの板に指を置いて認証登録をお願いしますね」
「ん」
アルテミシアはエルダさんに言われるがまま、初期登録用の透明な板にその小さな指を載せたのだった。




