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第12話 空間の精霊現る

 「で、何でついてくるんですか?」


 ルビーさんに注文を終え、店に帰ろうと歩き出したのだが、なぜかルビーさんが後からついてくる。


「ついでにと思ってよ。グレモリー様にもお会いしなきゃいけないし」

「ふぅん……」


 まぁルビーさんがついてくるのは個人的に構わないのでいいけど、さりげなくお尻を触ってくるのはやめていただきたい。

 揉むな!


「っとと、悪い悪い」


 口ではそう言ってるけどどう考えても悪いと思ってないですよね??


「しかし、改めて触ってみてもやっぱりイリスはこっち側なんだなぁ」

「? そうですかね?」


 ルビーさんの言うこっち側とは『精霊寄り』ということだ。


「やっぱりスキルのせいですかね」

「それはあるだろうけど、元々だよ。グレモリー様も、今は神の領域へ旅立ってしまったティアナ様もイリスもルナクルス様の親族だろ? だからやっぱりこっち側なんだよ」

「ふむ……」

「本来精霊と人類は別の生き物だ。だから精霊は対価なくして人類に力は貸さない。その最たる例が根源精霊だ」

「あぁ……」


 根源精霊は人類の願いを聞く代償に魔力と生命力を持っていく。

 これが本来の形だ。

 それは職業精霊であっても本来は同じだ。

 まぁ職業精霊は根源精霊とは違って話が通じる分、だいぶマシなんだけど。


「根源精霊でできることをアタシらに頼まれてもアタシらは相応の対価を得られないからな。だから積極的に力を貸すことはない。でもイリスは別だ」

「それはスキルのせい?」

「そのスキルはどっちかというと中間に位置してるイリスをどちら側からも受け入れられるようにしてくれてる緩衝材みたいなもんだよ。まぁ違和感を無くすためのもんだな。だから人類の力も使えるし精霊の力も使えるって感じかな。それに、アタシら側のイリスのことはやっぱり大事だし家族だと思ってる。だからみんな対価なしで力を貸してくれるんだよ。他の人類のことは別にどうとも思わないけどな」


 それを聞いて少し納得することができた。

 俺のエルフの兄妹たちはそんな風に精霊に受け入れられるから、俺のことを羨ましがってしまったんだなって。


「改めて思うと、俺って特殊な立ち位置にいたんですね」

「だな。イリスなら精霊王って名乗ったとしてもアタシは支持するけどな」

「セクハラやめてくれたら受け入れてあげますけどね」

「それは難しい」

「即答するな!!」


 しかしこれでよくわかったことがある。

 ルナと繋がっている俺はどうあがいてもルナ側であり精霊側。

 エルフとして人類側にいるのが本来は違和感ありの存在なんだということ。


「はぁ、まぁとりあえず行きますよ……」

「おうよ」


 そんなわけでルビーさんを引き連れ店へと向かう。

 ところがここで問題発生! 道中めちゃくちゃ人に見られるのだ。

 なんでかな〜? と思って聞き耳を立ててみるとルビーさんがエルフとエルフといっしょにいるのが珍しいらしい。

 しかもやたらと親密そうだって言うんだからそりゃまぁ見られもするか……。


「ルビーさん、アホほど目立ってますよ」

「ふふん。そりゃあ鍛冶ではそれなりに有名だからな。アタシくらいなら好奇の視線に晒されててもおかしくはないだろ」

「は、はぁ。そうですか……」


 この自信はどこから来るんだろうか。

 さすがの俺でもここまではできないぞ。

 そんなわけで若干呆れつつも店へと急ぐ。

 しばらくして店が見えてきた頃、突然俺の足が誰かに掴まれてしまった。


「な、なんだ!?」


 驚いて足元を見てみると、小さなエミルくらいの身長の職業精霊の子供が俺の足を掴んでいたのだ。


「えっ? だれ?」


 職業精霊の子供はどうやら女の子のようで、被られたフードの隙間から長い髪の毛がチラチラ見えている。


「おねえちゃん」

「ん??」


 突然お姉ちゃんと声をかけられた俺は混乱に渦中にいる。

 そんな風に混乱する俺をよそに、ルビーさんはこの子どもの正体を口にしたのだ。


「あれ? 【アルテミシア】じゃん。お前引きこもりやめたのか?」

「ルビー。なんで、いる」


 2人はどうやら知り合いの様子。

 ただ、アルテミシアと呼ばれた職業精霊の子供は不満そうだ。


「おいおいイリス。こいつのこの格好に騙されるなよ? こいつこう見えてブランと同じだぞ」

「というと?」

「こいつ管理者の1人だってこと。つまり大精霊だ」

「ほ?」


 なんとこの職業精霊の子供、大精霊らしい。

 まじか。


「今は見習い」

「は? お前それどういうことだ!? ってまて、お前精霊の国の図書館の引きこもりだったはずだよな。そんなお前がここに来てちっこくなってる……。てめぇエミルパターン狙ってきやがったな!?」

「当然。私の特権」

「ちょ、ちょっとまって? どういうこと?」


 どうやら俺にはわからない話が繰り広げられているようだ。


「こいつはな、【空間の精霊】なんだよ。精霊でもほぼ唯一と言ってもいい存在だな。んでこいつ自分の年齢や見た目を好きにいじれるんだ」

「つまり、本来はもっと年上ってこと?」

「おうよ。グレモリー様と勝負できるくらいの見た目ロリババアだぞ」


 なんてこったい。

 そんな精霊がいたなんて知らなかったよ。


「というかそのロリババア発言、師匠聞いてると思うからね」

「げっ」


 さり気なく師匠の地獄耳について伝えたら表情を青ざめさせてしまった。

 かわいそうに。


「と、とりあえずだ。お前、なんで来た」

「もち、イリスお姉ちゃんと契約しに」

「ははは、残念だったな。まだイリスのスキルレベルが低いから上位の職業精霊とは契約できないんだよ」

「うん。今【見習い精霊級】」

「は? て、てめぇ! 転生してきやがったな!?」

「当然の権利」


 一体どういうことなんだろう? 精霊が転生する? 聞いたことがない。


「イリス。こいつはな、【空間】を操る能力を持ってるんだ。どうやってるかは知らないけど、自分の身体も自在に変えやがる。その極めつけが自分自身能力はそのままに、自分の階級と身体自体を昔のサイズまで戻せちまうんだよ」

「語弊がある。性格には身体を複製して保管してる。だから入れ替えた。だから転生」

「こいつ、イリスのところに来るためだけにずるしやがった!」

「権利の行使。仕事はしてる。問題ない」


 何か頭が痛くなってきたぞ?

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