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第11話 新商品を作ろうその2

 火の職業精霊のルビー。

 職業は精霊鍛冶師。

 ドワーフの鍛冶師が崇める鍛冶師の1人でもある。


「妙なエルフがうろついてるな~って思って様子を見に来たんだけどな。まさかイリスだとは思わなかったぞ」


 ルビーさんはそう口にすると、俺の方に腕を回して引き寄せてきた。

 汗臭い。

 すごい美人さんなんだけど、鍛冶師なせいか汗臭いのだ。


「またエルフの精霊術士でもきたんですか?」

「今回は違うな。そもそも精霊使いが力を得られるのは根源精霊だけだ」


 精霊術士。

 精霊術士とも精霊使いともいわれるのでまぁどちらでも表記上は問題ない。

 彼らは根源精霊と契約してその力を利用して精霊力を行使する。

 引き換えに術士は魔力と生命力を彼らに提供することで関係性を成り立たせている。

 そんな精霊術士たちは時折職業精霊に助力を求めることがある。

 まぁ大抵の場合は断られるんだけど。


 なぜ職業精霊に助力を頼むと断られるのか。

 単純に職業精霊たちの役割と彼らの国の法制度の問題だったりする。

 人間の世界に住み、色々なことに手助けはするが深くは介入しないというもの。

 その最たるものが戦争だろう。

 職業精霊は魔物討伐には参加するけど傭兵になることはない。


「じゃあ鍛冶師でも来ましたか?」

「なんか作ってほしい精霊素材があるんだと。まぁ断ったけど。だってそれ対価を渡せば根源精霊でも作れるものだぞ?」

「なるほど」


 精霊鍛冶師は精霊素材を作ることができる。

 でも精霊素材って根源精霊にも対価を渡せば作ってもらえるんだよね。

 精霊鍛冶師はその根源精霊に支払う対価とは違う別の形での対価で精霊素材を作ってくれる。

 なのですぐにでも欲しい精霊素材がある時は精霊鍛冶師に頼みに行くというわけ。


「どうせ気分が乗らなかったんでしょ?」

「面白みもないしな。なぁイリス? 精霊素材のローブとか作る気ないか? 今なら安くしとくぜ?」


 早速売り込みをかけてくるルビーさん。

 精霊素材のローブは欲しいけど、俺戦闘には行かないんだよなぁ。


「俺戦闘には出ませんよ?」

「んなこたぁいいんだよ。アタシが作ったローブを着たイリスが見たい」

「変態かっ」


 こんな感じのルビーさんだけど、その仕事は素晴らしいものがある。

 腕も一流なので本来だったらこんな辺境にいるべき精霊じゃないんだよなぁ。


「でもシャーリーのやつが作った下着は着けてるんだろ? ずるくね?」

「シャーリーさんは下心もって接してきてませんからね」


 シャーリーさんは裁縫関係を営んでいる風の職業精霊だ。

 一般の人向けの服も作っているし精霊向けの服も作っているので比較的人に近しい位置にいる。


「それはそうと、精霊文字の焼き鏝作ってほしいんですけど。回復魔法のやつで」

「お? いいぜ? 精霊力流しやすいほうがいいか? 最近エミルがイリスと契約したって言ってたけど」

「またあの子は……。それでお願いします」

「ほいよ。んで、当然アタシとも契約するんだよな??」


 ぐいぐい来るな、この人。


「まだ未熟らしいからもう少しスキルが成長してからになると思いますよ?」

「ちっ、ならそれまで待つか」


 そういえば精霊鍛冶師と契約すると何が得られるんだろうね。

 まぁ俺は錬金術師だから鉄系素材とかに恩恵がありそうだけど。

 俺のスキルの面白いところは、スキル単体で行使できるだけじゃなくて、素材にもその力を使えるというところだと思う。

 例えば師匠がアイデアをくれた回復の護符みたいな感じにだ。


「アタシの力を使えばそうだな、素材の加工がしやすくなったり製品の完成度が上がるな。あとは武具関係の素材も作りやすくなるだろうな」

「素材関係だけでも恩恵ありまくりってことですか」

「もちろんよ。素材に属性の力や精霊力を籠めるときにも便利だぞ」


 さすが火の精霊鍛冶師の力。

 魅力たっぷりで惹かれそうになる。

 でも普段他の職人にはそっけない精霊鍛冶師がこっちに力を貸しまくるとどこかでヘイトを買いそうで怖い。


「とりあえず契約できるようになったらですかねぇ。今はたぶんまだ無理」

「だよなぁ。そういえばイリスのところってスペースに空きがあったりするか?」


 ルビーさんとの契約に魅力を感じ始めていたころ、ルビーさんが突然奇妙なことを尋ねてきた。


「あるにはありますけど、どうして?」

「それはよかった。実はな。アタシ、イリスのところに引っ越そうかと思ってるんだよな」

「……はっ?」


 ルビーさんの言葉を聞いてもう一度考える。

 しかし何度考えても意味が分からなかった。

 

「まぁ待て落ち着け。グレモリー様から言われたことがあるんだよ。もしイリスにアタシら職業精霊と契約する能力があったら、契約してみるか? って。話を聞いた時は普通はそんなことできないから無理だと思ったんだよ。でも可愛いイリスのためならちょっとくらいは力を貸してやってもいいかな~とは思ってたりもしたわけで」

「また師匠か」


 どうやら師匠は俺の知らないところで色々と話を付けていたらしい。


「んでその結果がエミルの契約だ。深い絆を結んでいて能力が釣り合えば契約できるってことがわかった。しかもアタシにも恩恵がある。だったらいずれ来る契約に期待を込めてそっちに工房移すのもありかなと思ったってわけだ」

「なるほど……」


 ルビーさんの話にも一理ある。

 どうせ力を貸してくれるなら近い場所にいたほうが仕事も頼みやすいし……。

 実力のある職人を俺の傘下に迎え入れられるなら今後にも役に立ちそうだしなぁ。

 まぁセクハラさえしなければだけど……。


「師匠次第ってことでいいですか? ブランが大反対しそうですけど」

「それでいいぜ? ブランの件は……どうにかなるだろ」


 ところでうちの商店の防音性能ってどうなんだろう?

 近所迷惑だけは気を付けないといけないから1回調べてみますか。

 

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