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87 謝罪

「それではこちらでお待ち下さい」


 ノーリウスに到着した翌日。キースら一行は昨日予定していた通りに改めて冒険者組合に足を運ぶ。事前に話しを通していた為、受付前で待たされるという事なくすぐに奥へと案内された。そして通された部屋でしばらく待っていると、室内に幾人かが入室していくる。


 最初に入ってきたのは、髪を上に纏め上げきちんとした服装でいかにも仕事が出来るといったような雰囲気を持つ妙齢の女性。そして次に入ってきたのは、昨日キースらの訪問を対応した若い受付の女性。若干疲れたような表情をしており、昨日は無かった隈が目の下に浮かんでいた。そして最後に入ってきたのは、初老の男性。しかし歳の割にしっかりとした体躯をしており、老いを感じさせないその眼光は熟練者のそれを連想させられる。しかしながらどことなく疲れたような感じが伺えるのは、仕事の激務からなのだろうか。


 そんな三人が室内に入って来るのを確認すると、キースは椅子から立ち上がり三人に向き直る。それに倣うようにソフィア、エルティナも立ち上がる。そんな中ミィーケはただ視線を向けるだけで動くことなく椅子に座ったままでいた。猫人我関せず。


「イデアラン冒険者のキースです。お時間を取らせてしまい申し訳ない」


「同じく冒険者のソフィアです。よ、よろしくお願いします」


「ミルディア冒険者組合所属のエルティナです」


「にゃっ ミィーケにゃ」


「ノーリウス冒険者組合、組合長のゼタンだ。イデアランから遠路遥々、歓迎致す」


 組合長ゼタンが手を差し出してくる。それを受けキースも手を出し互いに握手をする。続いてエルティナ、ソフィアと握手をしていき、最後のミィーケは握手をするというより手を握られる形となった。


「本日はよく参られた。して、先ず初めに。君等には申し訳ないことをした」


 挨拶もそこそこにゼタンがそう口を開く。そしそれを見計らったようにして、ゼタンの後ろで控えていた受付の女性が勢いよく頭を下げる。


「昨日は申し訳ありませんでした!」


「……?」 


 声を震わせながら謝罪の言葉を口にする受付女性。そのいきなりの状況にキースは状況が上手く飲み込めず困惑した表情をしてしまう。同じくエルティナ、ソフィアも困惑しているがミィーケだけはそんな様子を気にもせず受付女性に話しかける。


「にゃ? どうしたにゃ」


 軽い雑談でもするような喋り方。そんなミィーケに応えたのは受付女性ではなくゼダンであった。彼は説明する。本来であれば即座にゼタンに届くであろう筈の封書が届いておらず、そして運の悪いことに封書を届けに来たキースらをその場で追い返してしまった。そしてその原因を作ってしまった受付女性は、その事に対し謝罪しているのだという。これは客観的に捉えるならば、イデアラン冒険者組合に対し、ノーリウス冒険者組合が不義理を働いたという構図となるらしい。そこに意図はなくとも、そう取られても仕方のない事が起こってしまったのだという。


 普通ならばこのような不手際は起こらない筈なのだが、今回に限っていえば起きてしまった。受付女性は封書の封蝋を見て、そこまで重要な書ではないと判断したのだ。もしこれが組合長印であれば受付女性は即座にゼタンに封書を渡していたであろう。だが今回の封蝋には組合長印ではなく補佐長の印が押されていた。補佐長という役職はあまり一般的ではない。だから受付女性はその印の意味を知らなかったのだ。その為封書を普通の書類と同じように処理したのだ。


 そんなことをゼタンから説明されたキースであったが、


「なんにゃ、そんなことにゃ。ウチは別に気にしてないにゃ」


 ミィーケに同意見である。むしろそれで謝られてもこちらが困る。それがキースの率直な感想であった。手紙はきちんとゼタンに届けられ、こうして約束を取り付けて実際会うことが出来た。キースとしてはそこに何の不満もないのである。


 そのことを伝えるとほっとした様子で胸を撫で下ろす受付女性。


「君らには迷惑をかけてしまったな。さて、ではさっそく手紙の内容のことなのだが――」



 そしてここから調査についての話し合いが始まる。まず初めに手紙に書かれていた内容について話しをするゼタン。その内容を確かめる為にキースに事の真意を確認する。キースはその内容が間違いで無いことを伝える。

 

 そしてキースはこれまでの経緯をより詳しく、自身が知っている内容を補足するように説明していく。そして例の薬の内容にさしかかったところでミィーケが話に加わりさらなる詳細を説明していく。


 これまでの経緯を一通りし終えたキースは、これからの調査についてをゼタンに話していく。


「ノーリウスにて調査をするに至り、まずはノーリウス組合にて許可を頂きたく思います。余所者が無闇矢鱈に街中を探りまわるのは地元の立場からしたら快く思わない者のいるかと思われますし」


「いや、その点は問題ないだろう。ノーリウスはそれなりの規模の街だ。多くは街の外からやってきた者たちだ。帰属意識はそれ程でもないだろう。そして純粋な地元の者は意外と少ない。だから余程縄張りを荒らさない限りは大丈夫だろう。そして許可との事だが、こちらとしては何も問題ない、組合長権限で許可する」


「ありがとうございます」


 キースは丁寧に頭を下げる。続いてエルティナとソフィアも頭を下げる。ミィーケは手を上げてるだけ。猫人我関せず。


「それで、ゼタン組合長にお聞きしたいことがあるのですが――」


 例の薬はイデアランに少ないながらも流れてきた。そして手がかりとしてノーリウスに行き着いたのだが、では発生元のノーリウスではどのような状況なのか、それをキースはゼタンに尋ねる。


「その事なのだが」


 ゼタンが街での様子を説明しようとしたその時、部屋をノックする音が聞こえてくる。

 それに気がついた妙齢の女性が扉の前に移動し訪問者を確認する。


「組合長、ユリウスさんがいらっしゃいました」


「そうか、通せ。話を止めてすまなかったなキースくん」


「いえ、構いません」


 女性が扉を開き訪問者を室内へ招き入れる。ユリウスと呼ばれた訪問者は軽く一礼すると、部屋の中へと足を踏み入れる。


「組合長、私に話があると伺ったのですが……」


 ユリウスがチラリとキースらを一瞥する。その顔には疑問が浮かんでいた。話があると呼ばれたら何故が客人が居た。


「呼び出してすまないなユリウス。実はお前に聞きたい事があるのだが、それについて彼らにも話をしてもらいたくてな」


「いったいどのような」


 ユリウスの言葉をゼタンは手を上げて制する。そしてキースに説明するようにして話を進めていく。






「キースくん、紹介しよう。彼はこの街出身の―――――B級冒険者ユリウスだ。今回の事件について彼を交えて話を進めていきたい」


 


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