84 ノーリウス
「これから向かうノーリウスってどんな街なんですか」
ノーリウス。例の薬をイデアランに持ち込んだ商人が以前居たとされる街。話によれば結構大きな街だとのことだが、実際のところどのような街なのかキースは知らなかった。
キースら一行はノーリウスに続く街道を馬車で移動しつつ、これから向かうことになる街について話をしていた。長い旅路では時間たたっぷりとある。そんな中これから赴く街について話をするのは、ある意味当然の流れなのだろう。
吹き抜ける風に髪を揺らしながら、キースは前方に伸びる街道を遠くを見るように眺めていた。
「ノーリウスですか。実は私、以前街に行ったことが」
「にゃ、エルティナは行ったことがあるにゃか」
「とは言っても詳しいというわけではないですけど。そうですね、街の規模は大きいかと思います。人口も確か五万を超えるかと」
「五万? それはなんとも……大都市だな」
辺境の町イデアランの人口は五千にも満たない。そう考えると十倍以上の規模ということになる。大都市というのもうなずける。
「そんな大人数の中から手がかりを探すのか……。骨が折れる調査になりそうだな」
「通行人に手当り次第声をかけるってのは現実的ではないですね」
「そんなん嫌にゃ」
「小さな村程度だったらそれでも良いかも知れないが、そんなことしてたら時間がいくらあっても足らないだろう」
「先ずは冒険者組合に行って協力を仰ぐんですよね」
「ああ、その為の書状も補佐長から受け取っている」
手元にある書状に視線を向ける。この書状には事件における一連の内容が書記されている。そしてノーリウスで活動出来るよう組合からの助力を要請する旨も記されている。これをノーリウスの冒険者組合の組合長へ届けることもキースに命じられた仕事の一つなのである。
「まぁ何事も問題なく行けば、それに越したことはないんだがな」
これから行わなければならないことに、キースは面倒くさそうにしながらそう思うのであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「にゃにゃー 随分立派にゃ城壁だにゃ」
頭上高く聳え立つ堅牢な壁にミィーケを上を見上げるように声を上げる。
「これほどの規模の大都市だからな。イデアランとは違うだろうさ」
辺境の町であるイデアランもそれなりの城壁を有していたが、これと比べると少々心もとないと言わざるをえない。大の大人が十人縦に並んだとしても届かないであろうその高さ。そして頑丈さが容易に想像できるその厚み。たとえ攻城兵器を使用したとして破ることは至難の業と言えるだろう。
「これでも王都よりかは小さいってんだから本当呆れちゃうわよね」
「本来の城壁の役割を考えたら仕方のないことだがな」
上を見上げその大きさを改めて感じながらキースたちは城門を潜り抜けていく。辺境の町とは違い大都市ともなると人の出入りもそれなりの数であるため、キースらが街に入る為にそれなりの時間が掛かってしまたが、これでようやくノーリウスへ足を踏み入れることが出来たのだ。
「それで、この後はどうするんですか?」
「そうだな……」
空を見上げる。太陽はまだ高く日が落ちるまでかなり時間的余裕があるだろう。
「先ずは宿を探そう。先に冒険者組合に行って書状を渡してもいいが、すぐに話しを取り付けるとも限らない。暗くなってから宿を探すのは勘弁してほしいからな」
出来ればその日の内に話を進めたいとは思うが、そうすんなり行くとは思えない。時間的余裕を持って行動をするのが良いだろう。
キースらは街の中を進み一行が泊まれそうな宿を探す。仕事の為にノーリウスに来ているのであって観光目的ではないキースからしたら、それほど室の良い宿でなくても構わないのだが、ソフィアやエルティナといった女性陣がいるので、あまりにもな宿も除外しなければならない。とはいえ、これだけ大規模な街なだけあって条件に合った宿を探すにそう時間がかかることはなかった。
目当ての宿を見つけたキースは受付に二部屋分の代金を支払い鍵を受け取る。
「ソフィアとエルティナ、俺とミィーケの部屋割りで部屋を取った」
「なんにゃ、個室じゃにゃいのかにゃ」
「この調査がどれくらい時間がかかるか判らないからな。そんな贅沢するわけにはいかない。かといって大部屋というわけにもいかないだろう。だから辛抱するんだな」
「しかたにゃいにゃー」
ミィーケは渋々といった様子で鍵を受け取り通路を進んでいく。
キースは残った鍵をソフィアへと手渡す。何か言いたそうなソフィアであったがキースは苦笑いしながらそれを受け流していく。
「まぁそういうことだ。しばらくは我慢して欲しい」
「……わかりました」
「すまんな。エルティナも窮屈かもしれんがそういうことで頼む」
「いえ、私は別に構いません。冒険者をやっていればもっと酷い状況だって多々ありますし」
「はは、違いない」
「キースさん。もしよろしければ私も支払い――――」
「いや、それには及ばない。一応は調査費として組合から支払われているからな。エルティナ個人から金を出す必要はないさ。それに俺も一応は男なんでな。女の子に支払わせるなんて真似は出来ないさ」
冒険者の級位で言えばエルティナの方が圧倒的に上ではあるが、それはそれこれはこれである。それを理解したのだろうエルティナはクスリと笑い返す。
「わかりました。ですがもし私になにか出来ることがあったら気軽に行ってくださいね。私達仲間なんですから」
「そうだな。その時はよろしく頼むよ」
「はい」
「それじゃあ、とりあえず部屋に行って荷物やらを置いて、少し休憩した後組合に行くとするか。二人共それで構わないな」
ソフィアとエルティナはうなずいて返事をする。
しばらく間を挟んだ後、一行は改めて冒険者組合へと足を運ぶのであった。
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