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82 顔合わせ

 後日改めて詳細を伝えられる運びとなったキースは、エルティナと共に組合を後にする。


 そして改めてエルティナに事の発端を説明すると同時に、自身も気になっていたことをエルティナへ尋ねる。


「エルティナ、どうしてイデアランに?」


「えっとですね、それはご報告といいますか」


「報告?」


「はい。イデアラン冒険者で昇級審査を受けた後、街に戻って試験を受けてそれで晴れてB級に昇級することが出来ました。ですのでそのご報告をするためにイデアランに戻って来ました」


「その為にわざわざ戻ってきたのか?」


 だとしたら、なんとも律儀な話である。普通の冒険者はそんなことはしないものだ。それに昇級したことは組合を通してすでにこちらに伝わっている。わざわざ足を運ぶ必要はないのだ。そこをあえてそうするとは。


「少々真面目や過ぎないか。でもまぁ、エルティナがそうしたかったと言うのならば、らしいっちゃらしいのかもな」


 キースは改めてエルティナへと向き直る。


「ならばちゃんと期待に応えなきゃなならないな。エルティナ、B級昇級おめでとう」


「ありがとうございますっ!」


 キースの言葉にエルティナは顔をほころばせて感謝の言葉を口にする。


「せっかくイデアラントに来たんだ。ならば昇級祝いをしようじゃないか」


「えっ?」


「別に驚くことじゃないだろう。知り合いがB級になったんだ。祝の一つでもするのが普通じゃないか?」


「あ、ありがとうございます!」


 満面の笑みを浮かべるエルティナに、キースはちょっとした悪戯心が芽生える。


「本当は心の何処かでは祝ってもらえるかもと思ってたんじゃないのか?」


「そっ、そんなこと!!」


「本当か?」


「……ちょっとだけ……」


遠路はるばる他の町まで来て報告に来るぐらいだ、少しぐらいは褒めてほしいという気持ちが生まれても別に不思議ではない。だがそれを指摘されたエルティナは顔を赤くして下を向いてしまう。


「恥ずかしがってからに、可愛いやつだな」


 キースは下を向くエルティナの頭をゴシゴシとなでつける。


「えっ、あっ、 ちょ キースさんっ」


 少々乱暴ではあるが、キースは飾らず素直な気持ちでエルティナに接する。


「さてと、それじゃあさっそく行くとするか」


「え、行くって何処に?」


「先ずは一旦部屋に戻って――」


「えっ!!?」


「ん? いきなり大声を出してどうした」


「えっ あっ いやっ! な、なんでもっ! で、でもいきなり家にだなんて、あの、その……」

 

 エルティナがあたふたし始める。モゾモゾ動くその姿は挙動不審と言えなくもない。


「何をそんなグネグネしているのか知らないが、突っ立ってるなら置いてくぞ」


「あっ 待って下さいっ!」


 挙動のおかしいエルティナを置いてくようにキースはさっさと町中を突き進んでいくのであった。







――――――――――――――――――――







「にゃ? 今日は随分と帰ってくるのが早いにゃ」


「組合で知人と遭遇してな。だから仕事を切り上げて来た」


「にゃ? 知人にゃ?」


 室内で薬剤の調合をしていたミィーケがキースの横から覗き込むように顔を出す。


「にゃにゃ?」


「えっ、猫人??」


 ミィーケの姿を見たエルティナは見るからに驚いた様子をみせ、そして何度か瞬きをした後、目をゴシゴシ擦りそして改めてミィーケを視界に収める。


「にゃ」


「やっぱり猫人……?」


「なんにゃ! ウチになんか文句あるにゃ?」


「あっいえ! そういうわけではなくてっ! ただ珍しいかったものでつい……。気を悪くさせてしまって、すみませんでした」


「にゃ、わかったにゃ。でも人の顔をジロジロ見るのは控えたほうがいいにゃよ」


「はい。以後気をつけます」


「にゃにゃ。素直は良いことにゃ! ところで」


 ミィーケは呆れた様子でキースに視線を向ける。


「別にキースが複数のメスを囲うのは構わにゃいけど、家に連れてくるのは止すにゃ。部屋の中で発情してメス臭くなったらウチなかわにゃいにゃ。他所でヤるにゃ」


「なっ なななっ!?」


「お前は何を言っているんだ」


「思ったことを言っているだけにゃ。部屋の中で欲情されたらウチが困るにゃ。猫人は人間より鼻が利くにゃ。だから同じ部屋で交尾されると嫌にゃ」


「こここ、交っっ!?」


 ミィーケのあまりな物言いにエルティナは目を白黒させる。頭が痛くなるのを感じながらキースはため息を吐き出す。


「何を勘違いしてるか知らないが、エルティナとはそういう仲じゃない」


「にゃ、そうにゃか?」


 ミィーケはエルティナを一瞥する。それを受けエルティナが慌てて言葉を発する。


「わ、私は別にキースさんの、そ、その、め、メスとか、そういうのじゃありません!」


「ジーー……本当かにゃぁ?」


「本当ですっ!!」


 ムキになって否定していくエルティナであるが、ジト目のミィーケに見つめられ思わずたじろいでしまう。


「う、うぅ……」


「何やってんだお前ら」


 何度目か判らないため息をつきながら、キースはミィーケとエルティナの間に割って入る。


「どうでもいいがミィーケ。これからエルティナの昇級祝いをするんだがお前も参加しないか」


「にゃ?」


 先程組合で補佐長から言われたことをミィーケに伝えるキース。


「まぁ、言ってみれは昇級祝い兼親睦会みたいなものだな。これから一緒に行動を共にする仲間になるんだ。互いを知っていて損はないだろう」


「にゃ、そういうことだったかにゃ」


 ミィーケは納得した様子を見せる。


「だったら最初からそう言えば良かったにゃ。それなら逢引と間違えなかったにゃ」


「あっ逢引っ!?」


「にゃにゃっ。さっきから挙動がおかしいにゃ。やっぱり発情してるにゃか?」


「してませんっ!!」


「うるさいにゃ!!」


 キーンと鳴り響く耳鳴りに耳を抑え毛を逆撫でるミィーケ。しまいにはシャーと威嚇するミィーケに当の本人であるエルティナも顔を真赤にして対抗する姿勢を見せる。


「お前ら本当に何やってんだ……」


 もう何度目かわからないため息と共に、頭痛が起き始めた頭を掻きながらこの先が思いやられるキースなのであった。


「だっ、だから私はっ!!!」


「だからうるさいにゃぁぁ!!!!!」


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