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カラスの図案とリイドさんの調査結果

私は元の世界に居た時、雨の中に佇むカラスが好きだった。


シトシトと降る雨に耐えて、羽を膨らませ、ジッと佇んでる黒いカラス。

半分目を閉じて、ほとんど動かないで。


どうしてカラスは雨宿りしないで、屋根の上や、橋の欄干に留まって雨を受けてるんだろう。

いつも不思議に思って見てたっけ。


そりゃ、流石に台風なんかの時は見かけなかったけど。

小雨程度では姿を隠したりしなかった。


なんだか、ひどく、孤高を感じた。

そういうカラスは、何故だか、いつも一羽で佇んでたから。


だから、私は佇むカラスを図案におこした。

辺りには雨を降らせる。


まるで隠者のような、真っ白い大ガラスを描きたいと思ってた。


ニコラに図案の原案を見せたら、彼は大きな焦げ茶の目を何度も瞬いた。

「これ、リンが描いたの?」

「……そう。どうかな?」


彼はジッと図案を見て、静かに頷く。

「そっくりだよ」

「……え?」


ニコラが不思議そうに私を見て微笑む。


「シルビアの大ガラスに、すごく似てる。見た事あるのかって思うくらい」

「本当? なら、このままブラッシュアップして大丈夫かな?」

「うん。いいと思う」


私はホッとして図案とニコラを見て笑った。

「良かった。これで、少し前進できる」


ニコラはライアンと同じ事を言い出す。


「これで仕事できそうだよね。魔法使いを副業にすれば?」

「ニコラ。さすがに、プロには敵わないよ」

「そんな事なさそうだけど。なんか……勿体無いな」


私は、ただ笑ってお礼だけ言っといた。

「褒めてくれて、ありがと」


              ☆


その日、掲示板に遠征の知らせが張り出された。

隣国のバザフ国との国境線まで、数名の魔法騎士が遠征にゆく。


活火山の動きは活発で、付近では魔物が増えているそうだ。

放っておけば、増えた魔物が村々を襲う確率が高いとリイドさんの報告にあった。


地脈の流れを変える。

それは口で言う程には簡単ではなさそうだけど。


放置すれば、トルア国への被害が想定される。

魔法騎士団としても威信をかけて挑む仕事になるようだ。


指定された魔法騎士は七名。団長としてシルビアさんも参加する。


シルビアさん、ダインさん、ルシア、ニコラ、ディアン、グリスさん、タクトさん……そして私。


グリスさんとタクトさんは挨拶した事がある程度でよく分からないけど、二人とも魔法騎士になって長く、経験が豊富だってシルビアさんが言ってた。


魔法騎士団の半数が参加するって事だから。

本当に大掛かりな遠征なんだな。


出発は一週間後と明示してあった。


剣士の方々も、第一、第二ともに、騎士団のほぼ全員が参加するらしい。

残るのは数名の方々で、彼らは近衛兵と一緒にお城の守りで詰めるそうだ。


シルビアさんは団員達のスケジュール調整と、割り振りに頭を悩ませてた。


「王からの命令で、遠征前に二日間、遠征に参加する騎士達に休みを作んなきゃいけないのよ」

「そうなんですか?」

「うん。家族と離れて暮らしてる騎士もいるからね。遠征する前に会いに行かせてやれって。何が起こるか分からないんだからって」


王様って謁見したことはないけど。

シルビアさんの父親だけあって、情が深いのかもしれないな。


彼女は少し眉を顰めた。

「里心がつくから、止めとこうってよって言ったんだけどね」


……あ、ははは。

そうですか。


シルビアさんはニコッと笑った。


「リン。だから、あなたにも二日間の休みが与えられるよ」

「え? あ、そうかぁ」

「リンには今回、特別任務があるから、ゆっくり休んで欲しいんだ」

「特別任務ですか?」


彼女は真顔で頷く。

「ディアンと二人で地脈に干渉してもらうから」

「……あ。はい」


そして、なんだか、不思議な笑みを浮かべた。

「リン。だからね。今回は私と一緒に別荘に行こう」

「……え?」

「町から、いくらも離れてはいないんだけど、近くに湖があるんだよ」


私は思い切り戸惑う。

だって、家族と過ごすんじゃないのかな?


「私はグレイと行くから、リンはライアンと一緒においで」


……え?


「あ、あの?」


彼女は婉然と微笑んで私を見た。


「言ったでしょ? いい加減に決めちゃいな。サバサバするからって」

「い、いや。あの」

「嫌なの?」

「……嫌ではないです」


シルビアさんがニッコリと微笑んだ。

「なら、決まりね。現地では別行動だから、気兼ねなく過ごしてよ。アイアンさんの許可は、もう取ってあるからね」


……ウィンクされちゃった。

ええと。


ちょっと待って。

私、今、脳内がパニクってますけど。






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