↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/77

四本目のブレスレット

 魔法騎士団の詰所で、私は午後の清掃の為に外を掃いていた。入口が数段の階段になってるから、室内にゴミやホコリが入り込む事は少ないんだけど、その代わりに階段下にホコリが溜まってしまうんだよね。


 それに、小さな雑草も生えてきてるな。明日は草むしりでもしようかな。

 そんな事を考えてると、珍しく午後出勤のダインさんが来た。


「やあ、リンさん。いつも綺麗にしてくれて、ありがとう」

 相変わらずの優しい笑顔、私も思わず笑顔になる。

「いえ、仕事ですから。珍しいですね、午後からですか?」


 彼はちょっと苦笑を浮かべて立ち止まった。

「本当は非番だったんだよ。午後から会議するから出て来いって、団長に呼び出されたんだ」

「それは……お疲れ様です」

 シルビアさんなら、それぐらい平気でしそうだよね。本人が仕事第一の人みたいだからさ。


「ああ、そうだ」

 ダインさんは私を見てポケットに手を入れた。

「リンさんに会ったら、僕もコレを渡そうと思ってたんだ」

「……え?」


 ダインさんは玉虫色のビーズのブレスレットを差し出した。

「君が腕にしてるのは、アイアン家の人達にもらったんだよね? だから、僕からも君にあげたいと思って」


 あまり仲良くない人から、ホイホイ物を貰うのは躊躇われるんだけど。

 ……どうしよう。

 断ったら失礼になるかな。


 私が戸惑ってると、彼は包むような笑みを浮かべた。


「リンさん。この先、君が自分で魔法を使えるようになったら、きっと多くの人を助けるよ。あの村で見た回復魔法は凄かった。あんなの、見た事ないよ。だから、その前に君に怪我なんかして欲しくないんだ」


「いえ、あれはリイドさんが凄かっただけで……」


 彼は小さく首を振った。

 真顔になった彼は、思ってたより鋭い顔をしている。

 眼鏡の奥から見つめてるのは、アーモンド型の大きな目で、顎のラインも細い。

 元が整っているから、少し怖い雰囲気を出してる。 


 ……ちょっと、緊張する。

 ダインさんは、その表情のままで、私をじっと見つめた。


「それは違うよ。確かにリイドさんの魔法も強い。けど、あれは君から流れ出た魔法だよ。今度、機会があったら観察してごらん。僕らが使う回復魔法は黄緑色をしてる。でも、あの魔法は白かった。君の魔法だ」


 ダインさんは私の左手を取って、ブレスレットを握らせた。


「もらって欲しいんだ。そのブレスレットは一度に数を使えば、それだけ大きな閃光を生み出す。多すぎて困るってことはないと思うよ」


 彼はそう言ってニコッと笑った。

 やっと、雰囲気が和らいで、私は思わずホッとする。


「……ありがとうございます」

 ダインさんは軽く頷いて笑った。


「それにしても、リンさんはアイアン家で大事にされてるんだね」

 私の腕の三重になったブレスレットを、面白そうに見る。


「はい。とてもよくして頂いてます。私の状況が特殊だからだと思いますけど」


 そこに、ライアンが歩いて来た。

 なぜ?


 ダインさんが私の手を離してライアンを見る。

 ライアンは私を見て甘くない声で聞いた。


「中に団長はいるか?」

「あ……団長室にいらっしゃいます」


 彼は手を上げて了解を示し、ダインさんを横目でチラッと見てから詰所に入って行った。


 ダインさんは含んだ笑みを浮かべる。

「状況のせいだけじゃ、無さそうだけどね」


 私はよく分からなくて首を傾いだ。

 それにしても……。


「剣士の方もここに来るんですね?」

「ああ、ブライアンは団長補佐だから、僕と同じ会議に出るんじゃないかな」

「団長補佐なんですか」

「そうだよ。団長が忙しいんだろ。あれ? 知らないの?」


 私は苦笑を浮かべるしかない。

「仕事の話しを家でする事は、殆どないです」

「なるほどね」


 私が彼のくれたブレスレットを腕にはめながら。

「お守りだって聞いてますけど。これ、不思議なブレスレットですよね。投げると閃光を放つなんて」

 そう言うと。


 少し微笑んで教えてくれた。

「魔法付与してあるんだよ。魔法使いの中には、そういう仕事が得意な人もいる」

「へえ。そういう仕事もあるんですね?」


 彼は面白そうな笑みを浮かべた。

「興味があるなら、工房に連れてってあげようか?」

「え? 本当ですか? い、行きたいです」


 ダインさんが表情を崩して眉を下げた。

 口を押さえて面白そうに笑う。


 ……え? ここ、笑うとこ?


「君は表情がクルクル変わるんだね。うん。今度、予定の合う日に一緒に行こう。じゃ、また」

 そう行って私の腕をポンッと叩いて、詰所の中に入って行った。


 やっぱり、よく分からない人だな。


「あの人、魔法騎士か?」


 急に声を掛けられて振り返ったら、ミリアンが苦い顔して立ってた。

 この人、なんで不機嫌なの?


「えっと、ミリアン。訓練の帰りですか?」

「そう。で、あの人は魔法騎士?」

「そうですけど」


 彼は眉間に皺を寄せて私を睨んだ。

 なに、ミリアン怖い。

 

「リンさんは、誰にでも愛想が良すぎだと思うんだよね」

「……は?」


「ニコニコして、ハードルが低いっていうかさ」

「え。普通、挨拶は笑顔でしますよね?」


「だからって、体に触らせるのってどうなんだ?」

「え? 触るって、腕を叩いて行っただけですけど?」


 ミリアンは更にムッとした顔になる。

「俺からは逃げるでしょ」

「いや、だって、髪に触ろうとするのと違うし」


 そこに走りこんで来たルシアが、兄の足を思い切り踏んづけた。


「痛って、何すんだ、ルシア!」

「リンさんが困ってる。何してるんですか、ミリアン」


 彼女は私に抱きついて庇うように兄を睨んだ。

 ミリアンがハッとしたように私を見る。


「……い、いや。なんていうか」


「男の嫉妬は見苦しい」

 

 ルシアが歯に絹着せない感じで言い放つと、ミリアンはグッと詰まって妹を見て目を瞬かせた。


「けどね、ミリアンの言う事、分かるよ」


 彼に助け舟を出したのはディアンだった。

 たぶん、ルシアと一緒に戻って来たんだろう。


「リンは、もう少し警戒心を持った方がいいよね」

「……はい?」


 なんで、ディアンにまで冷たい目で見られなきゃいけないの?

 ミリアンが腕を組んで大きく頷いてるし。


 ルシアが二人を睨んで言った。


「もう一回、言おうか? 男の嫉妬は見苦しい」


 二人がグッと詰まってルシアを見る。


「ハードルが低いのも、愛想がいいのも、リンさんの良いとこだよ。冷たいリンさんがいいなら、そういう事を言ってもいいけどね。自分にだけ愛想良くしてろなんて、我が儘もいいところ。リンさんは、このままで良いのよ!」


 ああ。なんて、なんて、可愛いい。


「ルシアちゃん。ありがと」


 私は思わず彼女をギュッと抱きしめて、その頭に自分の顔を埋めた。

 ルシアちゃんは蕩ける笑顔で声を出して笑った。


「くすぐったい、リンさん」

「うう、ルシアちゃん、好き!」


 ディアンとミリアンは苦い顔のまま、私達を見てた。


 







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。