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夢の奥で  作者: 関根ゆい
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数学

作中の雑誌について、心当たりのある人はきっとあると思います笑。


ちなみに作者は数学は現在進行形で勉強していますが、あまり…笑


 “お前なにそれ?”

 僕が体育の後剣道着をロッカーにしまう横で友達が笑う。

 “雑誌?へぇ、数学のやつじゃん~。なんでこんなもんここにしまってんだよ?”

 “ちょっとうちに持ち帰りたくないんだよ。”

 僕は焦りを悟られないようにできるだけ普通に答える。

 “なんじゃそりゃ。これおこづかいで毎月買ってるの?意外と高いじゃん?、その雑誌。お前こんな難しいんとけるん?”


 僕のロッカーには、月刊の数学雑誌がずらりと入っている。中2の頃から時々買いはじめて、中3の今まで。

 高校生向けの数学雑誌で、毎月の課題問題がついてるようなやつ。まだあんまり解けないけど、一応中高一貫だから高校の範囲はもうやってるからなんとか。


 数学はきれいだから好き。

 なぞなぞみたいに面白いから好き。

 架空の世界が現実を表せるから好き。


 でも、数学をするのは、お兄ちゃんから遠くなること。お兄ちゃんが歩いてきた道から外れること。

お兄ちゃんはバリバリの文系で、将来は弁護士かジャーナリストになりたいらしい。もう高校では文系を選択している。


 もちろんお兄ちゃんのしている勉強も素敵だと思う。でも僕はこっちのほうが好きなのかもしれない。でもそれは…。

 だから僕はこの興味を隠していた。好きだからって学校のテストの点がいいわけでもなかったしね…ははは…。


 夜、二段ベッドの下の段で水色のお布団に潜り込むと、雑誌を開く。時々、一冊だけ学校から持ってかえってきて、家族にみつからないように学校の鞄に隠しといて、布団の中で眠くなるまで読んでみたりするんだ、こっそり。


 今夜も、パラパラと枕に頬杖つきながら読む。まだあんまり理解できない。でも、難しい問題でも方程式がするする解かしていくのはきれいだ…。


 “おい、おまえ何読んでんの?”

 ふぇ?!

 顔を上げると、ベッドの上の段からお兄ちゃんが覗き込んでいた。しまった、全然気がつかなかった…。

あわてて枕の下に雑誌を隠す。

 “なに隠してんだよー?そんなやらしいもんなんですかー?”

 “ち、ちがうもん!”

 “じゃあ見せてくったっていいじゃん。”

 “やだね。”


 ぶつぶつ言うお兄ちゃんを無視して、僕は掛け布団を口元までかける。布団に半ば潜るようにして寝るのは僕の小さな時からの癖。枕の下の雑誌は、頭でガードしてるから安心だ。


 けちなやつーおやすみー

 お兄ちゃんが電気を消すと、部屋は真っ暗になった。


 次に視界が明るくなったとき、僕は大人になっていた。

 (うそ!)

 160cm弱の身長ははるかに伸び、薄く頼りない胸板や手足もぐんと力強くなっていた。

 そして、なにより驚いたのは、僕は高校一年生の数学の教科書を持って教壇に立っていたことだった…。

一応次話につづく感じになります!

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