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夢の奥で  作者: 関根ゆい
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3/21

夢の中のおくすり

初の私、サイドです。


自分で読み返し、少しわかりにくく感じたので補足すると、

あの男の子→前から登場している、僕、のこと

あの人→また別人

です!

 夜10時にリビングというなんとも干渉いっぱいの空間からのがれ、自分の部屋に潜り込むと、本棚の秘密の場所からパープルの手帳とピンクのシャーペンを取り出して、ひろげる。中学生の頃に手帳にいたずらを何度もされてから、部屋から持ち出すのをやめた。でも、家族に読まれるのももちろん嫌だから隠してある。

 そして綴って行くのは今日をベースにした、現実味のないお話…


 私はいつも祈っている。あの人にもう一度逢えるのを、ひたすら、ひたすら祈っている。

朝の下駄箱、授業中の窓の外のサッカー、昼休みの図書館、放課後のバス停…

 目を開けていても閉じていても、泣いていても、怒っていても、ひとりぼっちでも、ぶたれてもたたかれても、意地悪されても…

 あの人なら、きっと…


 そこまで綴るとシャーペンはぴたりと止まってしまった。なんて情けない逃避なんだろ、ほんとに。あの人は本当は同じ学校の一つ上にいる、でも、私の知っている小学校の頃のあの人ではもうない。廊下とかですれ違っても会釈するかしないかぐらいだし、そもそも滅多に見かけない…。だから…


 私の中のあの人はあの時のままの、男女へだてなくよくしゃべる、優しくていろんなこと知っててって人で…今はもう触れられない。


 そういえば、あの、夢の中の男の子は今どうしているだろう。ふと、彼の影が頭をよぎる。初めて会う人だとはたぶん思う…でも、どこかで会ったことある気もする。

 こないだ中学の頃に戻った夢の時の教室でしていた、まだあんなさびしそうな、悔しそうな顔してんのかな…現実では元気しているかな…


 目をつぶると、そのまま意識はどこかに逃げていっていた。


 私は夏休みにいた。いた、って表現するのは、本当は今は10月のはずだからだ。しかもまた時間も巻き戻っている。

 小さな私は炎天下の中、水色の自転車をこぎ回っていた。

 おーい、おーい!

 通りすぎた、一軒の小さな個人経営のコンビニのほうから声がするから振り返ると、10歳ぐらいの頃のあの人がいた。一番仲良しだったころだ。見慣れた青色のTシャツに短パン、髪は短く切り揃えてある。


 今日はあの男の子の夢にはつながっていないようだ、残念。

 しかし、あの人に夢で会うのは久しぶりだなあ。しかも一番仲良かった頃だよ、ラッキー。


 “おい、ちょっとこいよ、すごいもん見つけたぜ。”

 あの人は、ぎゅっと私の手を握るとお店の方に引っ張っていく。もちろんたいした意味なんてない、小学校の頃って普通に誰とでもそういうことするじゃない?

 “ねぇ引っ張んないで!転んじゃうよ。一体なにを見つけたの?”

 “これだよ、これ。みてみ?”

あの人が差し出してきた、お薬が入っているような紙袋には、<思い通りの夢が見れるくすり>と書いてあった。

“はぁあ?”

あんた小5になってまでんなもん信じてるの?おばかねぇ…しかも中身飴だし。

そう私が笑うと、あの人は向きになって頬を膨らます。

 “だって、もしかしたら、イチパーぐらいはそうかもしれないだろ?ねぇ80円ずつ出して買わない?ねぇ?”

…本当はお母さんに買い食いは禁止されていたけれど、あの人のお願いならしょうがないよねぇ。心の中で今の私と小さな私の声が被った。


 袋の中に飴は4つ入っていて、2個ずつ分ける。寝る前になめると効果があるらしい。

 “一個は弟にあげんの。”

あの人は大事そうにポケットに飴を仕舞う。そういえばあの人はいつも二つ下の弟の話をよくしていたな。

小学校違うから会ったこともないのに、あの人の弟さんのことはよく知るようになっていた。

 “へえ、優しいね。弟さん元気?”

 “うん。あいつ、こないだ俺にカードゲーム勝つ夢見たいって言ってたの。最近新しいデッキ組んだんだ。おまえもする?”

 “興味ない。ねぇ、そういえばあなたは何お願いするの?”

 “俺は…うーんと…えっとねぇ…”


 知りたい。それが知りたい。今の私の鼓動が跳ね上がる。

過去のことでもいいから知りたい…あの人はいつもなにを考えてたの…?


 ジリジリジリジリ…


 (うぅ…あと少しだったのに)

けたたましいベルの音で現実に引き戻される。急いでベルを止めたってもうさっきの夢に戻れない…


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