↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説の始まりは現実の終わり  作者: 一ツ柳八重
第二章 奴隷都市ブロッサムプリズン
48/53

特訓1

長らくお待たせしました。

特訓編になります。

この状態にするのにすごく時間がかかりましたが、どうか楽しんでいただけたらと思います。

 クリス博士に言われたとおりに、始まりの街を出て北に向かった。

 今日まで、モンスターと戦ったのって、始まりの街に行くときと、ヨシュアさんに飛ばされた時だっけ。

 たった数回だ。

 それ以外は、人間との戦いになってしまっていた。

 ファンタジーってこんなものだっけ?

 でも、この世界が現実ならそうなんだろうとさえ、今は感じられる。

 現実でも、イノシシとかクマとかには滅多に出会わないし、害虫とかいても、小さいから気にしないんだよね。

 そんな感じで過ごしてたせいで、モンスターと言う物を忘れかけていた。

 周りは暗く、風が頬を掠める。芝の匂いを感じながら、ここは外なのだと認識させられる。

 そして、この時間にあまり出かけなかったからだろうか?

 今、僕の耳には虫の鳴き声が聞こえてくる。

 こんなにこの世界が輝いていたのかと、感じる。

 こんなに現実に感じるのに、僕は本物っぽいと、そう感じてしまっていたんだ。

 この世界でしか生きてなかったら、この世界が現実だ、とそう認識してしまう。向こうの……本来の世界が偽物にすら感じてしまう自信がある。

 そんな、エンドワールドの世界を再認識して、歩いていると、見慣れたスライムが出てきた。

 そう言えば、サーバー室で戦った時は感覚で行えていたけど、本来はどうなのだろうか?

 いろんなゲームやファンタジーでは、自動的に最適化される。

 つまり、数値=当たり前になるのだ。

 例えば、攻撃力を上げれば、何も考えずに殴るだけで適応される。

 それが普通だから気にする必要性がなく、そのような世界なら、そうなるであろうと自動的に適応される。

 でも、この世界はどうなのだろうか。


「試してみようかな?」


 顎に手を当てて少し考える。

 今の僕のステータスは、基本の身体能力に、器用さがプラスされている。

 その器用さは速さにも影響している訳だから、今の僕の速さは通常よりも早いはずだ。


「うん、やってみよう」


 目の前のスライムで実験しようと考え、あの時教えてもらった、クリエイトを試してみる。

 これも、まだ慣れていないから、とっさにできたのは運がよかっただけかもしれない。

 作るのは、薄く殴り、切る鉄の板。持ち手は鉄のパイプ。簡単に砕けてはいけないから、何重にも叩き延ばされ加工されている。

 そのイメージを右腕を前に伸ばして、軽く握る。

 紅い粒子が集まり、熱を持ち始める。

 そのまま、右後ろに動かす。

 腰を屈め、左手でガードの体勢。

 踏み込む。

 身体が弾ける。

 僕の通った所に紅い閃光が走る。

 その勢いのままスライムを通り過ぎる。

 切れなかった。

 でも、目の前にはポップが出てきて、経験値の表示。

 そう、クリエイトを失敗した。

 そして、同時にその余波と、踏み込みの加速に身体が付いていかなかった。

 これは、身体が慣れていない事を意味する。

 つまり、ステータスを上げればあげるほど、身体は強化されるが、感覚が伴わない事を意味する。

 これを、感覚であの時制御していたと考えると、手が震えた。

 この数値と言うのは時に大きな力になるが、簡単には扱えず、故にこれを扱えると言う事は、それはその人が培った感覚と経験という事になるのを今確り(しっかり)と理解した。

 だから、他人のスキルは使えないと言う制約があるんだ。

 それを可能にしてしまう七光の力は、それを補助すると言う事だ。

 またスライムが出てきた。

 今度は全力ではなく、軽い踏み込みを試す。

 身体を屈め、刀を抜くような抜刀の構え。

 すこし膝をおり、踏み込む。

 そして、振りぬく。

 紅い粒子が一閃。

 前方を薙いだ。

 スライムのいた所は、黒く焦げていた。

 そして、経験値のポップが現れる。

 このたった一瞬の一撃。

 何度もやったからだろうか?

 この一撃だけは、腕が付いていく。

 そして、今はまだ原型をとどめないが、粒子の刃とは程遠い斬撃が飛ばせる。


「これ、多分継承してくれた彼女の粒子飛ばしみたいなのかな」


 服屋であったあの女性が行った、粒子の吹き飛ばし。

 あの原理に近いただの暴力なのだろう。

 でも今はその莫大な力で、目の前を壊さなかったのは、この構えからなら自分で調整が可能なのを示しているのではなかろうか?


「この、武器なしでも粒子を扱えるようになったら」


 それは、武道になるのだろう。

 今のままだとただのボール投げみたいなのだ。

 これをマスターする。

 そして、クリエイトをマスターするのが現状の課題だろう。

 膨大な力を正確に扱うには、それ相応のステータスと慣れが必要だという事もこの事でわかった。

「そうと分かれば、森に急がないと」


♢ ♢ ♢


 森に着いたら、指定していた場所は直ぐに分かった。

 そう言うのも、森に入ると、ウィンドが出てきて、特殊エリアが近くにありますと、表示されたからだ。

 僕はその表示に従い、向かった為、迷わなかった。

 その場所は、森の中だと言うのに澄み切っていて、空から月明かりが広場を照らしている。中央には石舞台と言うのだろうか、一人の人が舞って踊るには充分な広さがある。

 この広さ、体育館に近いのかな?

 でも、自然生成されて居たら、このように整ってはいないだろうとも思えてくるのは、多分この場所に香る甘い匂いが原因なのだろう。


「確か、この森の北西に炭鉱があったよね」


 その炭鉱は、ここから10kmの位置に存在しているが、もしプレイヤーならば簡単に到達できるだろうとも感じる距離だ。

 そして、この場所で一番目に付くものがある。

 高さは90cmくらいで、大理石の様な磨かれた石の何か。

 そこに歩み寄り、観察すると文字が刻まれている。


【この石碑を読める人がいるならば、伝えてほしい。この世界は現実であるが、一つだけ違う世界がある。この石舞台は、この世界の、このゲームに存在してはいけないダンジョンだ】


 そう書かれている。


「存在してはいけないダンジョン?」


 この事が何を意味するのか分からないが、ここで特訓する事には変わりない。

 そして、この石碑の高さが問題になってしまっている事に気が付き、疑問を解消する為、右拳に意識を集中させる。

 紅い粒子が集まり渦を巻く。

 そのまま、剣の形をイメージして、伸びた粒子を両手で構えた。

 そして、振りかぶり、切りつける。

 その余波は、後ろの石舞台に黒ずみを残るほどの威力だった。

 なぜだろう。

 こうするのは罰当たりだと理解しているのに、大丈夫だと言う確信がそこにあった。

 なぜならば。

 そこにあってはならない、粒子が出てきたからだ。

 それは、黒よりも更に漆黒で、光すらも飲み込むほど暗い色。

 でも、その色はとてもきれいだった。

 出てはいけない漆黒の粒子なのに、何処か吸い込まれるような綺麗な黒は滅多にお目にかかれないと感じてその光景が脳裏に焼き付く。

 悪い、憎むべき奴の物かもしれないのに、どうして心が惹かれるのだろう?

 そんな疑問を持ちながらも、今やる事を思い出す。


「この強度なら、多少無茶しても問題ないよね」


 声に出す事により不安を払拭(ふっしょく)する。

 現在は夜の23時を回ったころだろうか? 

 辺りには月明かりが零れており幻想的な場所になっている。

 そんな中で、静かに深呼吸をし、粒子を振りまくイメージを構築する。

 安定しないが、少しずつ粒子が舞っていき、数秒後爆発した。

 紅い閃光と、暴力的な爆風により、身体が吹き飛ぶ。

 木々の葉がざわつく程度に収まったのは、爆発する瞬間に環境を思ったからなのだろうか?


「いったー」


 木に打ち付けられたけど、身体には異常はなかった。

 でも痛みがある。

 なぜかを考えるのは今は辞めようと思う。

 もう一回。

 さっきは、力の大きさを制御できるのか、と言う疑問を解こうとしたが、無理な事を理解した。

 次やるなら、具現化と対象の選別だ。

 これが上手く行かないと、まずいだろう。

 刀は流石に構造を知らない。

 だから、もしやるならくろがねだろうか?


「クリエイト」


 複数の金属、クロム、鉄で高温で溶かし圧縮。

 このイメージを両手に集めて手を合わせる様に圧縮していく。

 その間、赤い粒子が集まり、手の間隔を狭めて行くにつれ、発光と粒子が激しく動く。

 右手のブレスレットからは絶え間なく粒子が放出されており、両手に注がれて、中央の球体に集まっていく。

 そして、発光が強くなるにつれて熱が放出されているようで、周りから焦げる臭いがした。

 これはまずいかな?

 クリエイト事態にこのようなデメリットがあるとは思わなかったが、もしこれも『七光鉱石の性能によるもの』だったら制御できるのではないだろうか?


「はぁあああ、ふううう」


 息を吸い、深く吐く。

 熱の放出を内側に。

 そうイメージしてはいるが、上手く行かない。

 これじゃだめだ。

 粒子の影響を、僕のみに設定。燃える熱が僕を通して下に還元。

 全力で放出を抑えようとする。

 じんわりと手から肘にかけて熱が伝わってくる。

 上手く行ってるのかな?

 同時に髪が暴れだすのも感じた。

 莫大なエネルギーが体を通している為に、外に逃げようと暴れているのだろう。

 胃の辺りが痛くなってきた。



ここまで読んでいただきありがとうございます。

今回は、ゲーム世界と言う感覚と、現実と言う感覚の差をどう表現したらいいのか悩みながら書きました。

由紀自身はステータスや効果に関して、精一杯自分で考えようとし始めました。

ですが、やはり現実と言う感覚の為、ステータスと言うデジタル補助はかなわないと感覚的に理解をします。

それ以外にも、クリエイトというスキルも、今まで感覚的にしか使っておらず、理解しようとしたのは今回が初めてです。

そんな由紀は、創作ならば大きいのを作ろうとしますが、本人は黒鉄を選択しました。それは刀にも使われている金属の一つなので、一つずつ理解を深める事の大切さも表現できたらと思います。

つぎは、由紀自身の悩みとも向き合いますので、次回までお待ちください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。