乖離・兆候・理解
一か月かかりましたが、人によっては刺さるかもしれません。
そして、今回は初めて由紀が行うことがあります。
どうぞ、楽しんでいただけたらと思います!
これ以上何もできないと考え、自室に籠ろうとしたら、玄関が開いた。
既に21時を回ってるんだ。
親が帰ってきてもおかしくない。
「はぁ、腹減ったなー」
そんな声が聞こえる。
「由紀―。ご飯はどこにある?」
そんな声を聴き、少しストレスが溜まる。
「はぁ。仕事から帰って来たのに、出しもしないんだな」
そう言う。
「ちょっと待って」
急いで、リビングに行く。
冷蔵庫にしまっていたおかずと、炊飯器からご飯をよそってテーブルに置く。
「はぁ疲れた。あ? はぁ、これ辞めてくれって何度言っても理解できないんだな。疲れてるって言うのに」
そう、おかずにラップをかけて出していた。
人によっては許さないだろうし、我慢できないのだろう。
こんな事を思っていたら、批判も出ると思うが、仕事してればいい訳じゃない。
言い訳に聞こえるが、人にはそれぞれやらなければいけないことが存在している。
それを行うのが、働く事よりも楽なのだろうか?
そう、考えてしまうときがある。
昔の話だけど、SNSで仲間になった人が居たが、確実にルールを決め、それをしっかりとやらなければいけないという事があった。
その窮屈なルールに意を唱えた。
『仕事みたいじゃないか』
これを言ったのがダメだった。
働いたことも無いのにそんなこと言わないで。と。
ゲームはすぐ辞めれるけど仕事は辞めれないと、そう言った。
働いてないから分からない、そうゆうのは確かにある。
それが大変なのもあってるのだと思う。
でも。
それは、学生時代よりも現実が厳しいからだと感じる。
そして、何よりも責任の大きさだと感じるんだ。
これが、何よりも大きいが、言っている側には分からないのだと思う。
それ以上の責任を強要していることに。
働くのは、嫌だから、辛いから、我慢しないといけないから。
その感情によって、不満が溜まっていく。
その為、家庭でその不満を、ネットで不満を漏らす。
それが、さぞ正しいと言うように。
働くことは、素晴らしい事なのに、それが外から見たらどんなに大変でも。
それを見ている人は、頑張りを見ているんだから。
でも。
他の人の頑張りを見えてない。
学生は楽なのか?
受験がある。
勉強が義務づけられている。
ただ責任がないだけ。
でも、それを、責任を進んで取ってくれない大人もいる。
そう。
他人に危害を加えて、強要する人は責任感を持ってない可能性がある、と個人的に感じていた。
そして、役目や役割を与えて、願望道理にこなせないと、不満だけ口にする。
その事は当人にとって、あくまで優しく諭したと、そう考えている事が多い。
直せると、そうただ教えてるだけだと。
それが、溝を生んでいるのに。
「ご、ごめんなさい。今度は気を付けるから」
「もうういい。どうせ直す気なんてないんだろ」
そう、怒りを含ませていってくる。
「ごめん」
その一言が。
気持ちに刺さる。
怖いんだ。
父親はTVを付けて、笑い始める。
僕は、自室に向かった。
働くって、どうゆう事なんだろう?
他人を傷つけてもいいのだろうか?
「おじいちゃん」
お爺ちゃんもそうだったのかな?
記憶の中に、お爺ちゃんの顔が浮かぶ。
ベットに倒れ込む。
その間も父親の声が二階まで聞こえてきてる。
若いって、それだけで罪なのか?
いう事を聞かないといけないのか?
そこに、本人の気持ちは。
その人の気持ちは?
こんな事を考えれば、わがままだと取られても仕方ないだろう。
『由紀。お前は素直に過ごしなさい』
その言葉を思い出す。
「人それぞれ違うんだ。今自分にできる事を」
そう。
向こうはゲームかもしれないが。
僕がやらないといけない事がある。
調べよう。
まだたくさんのやる事がある。
机に向かって、椅子に座る。
手元にある書籍を漁り、ある一冊の本をめくる。
その本のタイトルは。
「イマジナリーヒーロー」
この本は、昔に読んだ本で大切にしていた。
今でこそ絶版になり、この日本では珍しい禁書指定されてる。
「この本が禁書にされた理由」
ページをめくり、マーカーを引いた部分を見る。
人は生まれながらにして、役目がある。人を殺す事が役目の人もいるだろう。宗教では許されない行為だ。だが、それが環境によって変わってしまう。もし、戦時中なら、戦った人を責めるだろうか? その時は戦わなかった人を責めるだろう。戦時中じゃ無ければ? 戦う人を責めるだろう。その責任は、誰に行くのか。それを言い始めると、何も変わらないのだ。その人にとって本当に大切なのは、正義感や責任感じゃない。その人が正しく在ろうとする心なのだ。他人を、見知らぬ人を助けよう、その事に大人も子供も関係ない。出来る人が進んでやらなければいけない。成長とは。歳をとる事ではない。大人とは、働ける人の事ではない。本当の成長と大人は。正しい事を、正確に読み解き、間違いない事を疑える事だ。自分自身の事を疑い、他人を認めようと、理解し手を差し伸べる人その人なのだ。それこそが本当のヒーローである。
この言葉に救われた。
分からないけど、何を言いたいのか全部は理解できないけど。
自分の役割は、自分だけが知っている。
幻想だと思う。
自分の事なんて分からない。
でも。
その事を疑い、やれることを信じることの大切さは。
「今の僕になら、分かる」
この言葉は社会に響かないだろう。
「やるべきことは」
システムに使う正しい基準と、滅ぼした人が走らせたプログラムの内容の把握。
その把握した後に、切り取る断罪のシステムの理解が最優先。
公安の人が話していた感じだと、たぶん身体と精神に影響させることだと考える。
「精神と肉体」
この二つだと、宗教が出てくるだろうが、多分そのたぐいじゃない。
それならば、洗脳した方が早い。
わざと、影響を出させるようにしたんだ。
そうなると、もっと根本的で人にもともと備わってるものに作用させる事。
「欲求」
そうだ。
公安の女性が制御が効かない、意識が持っていかれると言っていた。
そして、男性は筋肉痛と過度の恐怖。
「三大欲求と、強制力」
この二つ。
もしこの二つなら、切るに切れない。
悪の、いわゆる強制力は切り離せる。
断罪は罪を罪として切り裂く仕組みのはずだ。
殺人を起こしたら、その人の邪悪の種を切り裂き、その大きさをダメージとして与える。それが断罪だ。
その罪が許されない、いいや、違うその事柄が、生に向かってない事柄を切り裂くことが本質だったとしたら。
「三大欲求の一つ、多分男性は睡眠欲を消されたのかもしれない」
昔、非人道的な実験があった。
睡眠の重要性を検証するもので、確か。
睡眠実験。
この場合、15日眠らない場合精神に異常をきたす筈だ。
近くに置いてある携帯を持ち、検索を掛ける。
ノートを出して、メモを取る準備。
睡眠実験。
強制的に覚醒状態を維持させた場合、数日後に幻覚を見始める。
更に期間が過ぎると、叫び声を上げ始め、不安と恐怖感覚を失わせる。
つまり限界を超えている事に気が付かないんだ。
「これだけじゃ、向こうの世界では死んでしまう。アリスから聞いた話だと、間違いなく」
そして、短時間に激痛が走った。
これは、僕も経験していたから、多分意識的にかかった負荷だとも思ったが。
経験を何百とさせて、たった一日が何日分として、フィードバックさせるための物なら。
確か強化学習。データーが存在するあの世界なら。
上手くいったものを、正規として扱う、そんな事だった気がする。
本来可能じゃない事を起こしたんだ。
彼ならやれるはずだ。
それだけの事はやってのけると、感覚的につかめる。
だって、彼はチュートリアルを行う村を滅ぼし、研究者が多かった、今なら分かる隔離地域にまで侵入し殺したのだから。
そうなると、僕が切らなきゃいけないのは強欲だろう。
欲望に逆らえなくし、上手く行った、悪く言えば欲望に忠実になった精神状況を上書きしたのだから。
「もしそうなら、今の僕には切ることが出来ない」
ゲームなら、このような事態に対応する仕組みが存在するだろう。
運営が用意しているだろうし、そうなる事は検証済みのはず。
でも、七光鉱石の暴走に関しては、対策されてなかった事を考えると、その対策はされてないのだろうと考えられる。
そうじゃ無ければ、僕の力を使う話なしで、ヨシュアさんがそのシステムを特定できるはずだ。
あの後も何度か向こうの世界に行ったが、何も変わってない。
準備にかなり時間かかっているのは、僕に原因があるのかもしれない。
「いかなきゃ」
僕は、このもやもやした気持ちのまま、向こうの世界に行くことにした。
♢ ♢ ♢
エンドワールドに来てから、初めに向かったのはTLSのクリス博士の場所だ。
理由は簡単だ。
この始まりの街周辺の訓練場を聞くためだ。
「ん? おお、由紀じゃないか。こんな夜遅くに歩いてたら、儂みたいな変態に絡まれるじゃろ」
「今回も遠慮しますが、この付近でレベルを上げる所はありませんか?」
「ふむ」
顎に手を当てて考え込んでる。
「この付近でと言っても、お主は七光じゃ。並の相手だったら地域をそのまま焦土にするじゃろう。儂の記憶上だと、プレイヤーが狩る場所ではダメじゃな。少し待っとれ」
そう言うと、手元からスマホを出した。
スマホ?!
「く、クリス博士! スマホって持ってこれるんですか?」
「ん? ああ、持ってこれると言えば持ってこれるわい。ただ、端末にかなりの負担をかけるからお勧めはしないがのう」
「じゃあどうして?」
どうして持ってくるんだろう?
そんなリスクを負ってまで。
「今見せてやろう」
「はい」
「へい、し……。メインサーバーに接続して初心者以外が戦える場所を教えて」
ちょっとまって。
いやいや、ちょっとまって?
今なんて言った?
へい、し――。
言おうとしたら、なんか言葉に詰まる言語を言わなかった?
「何でリンゴなんですか?!」
「若い者が何言っておるんじゃ。あたり前じゃろ? 音声入力なんて」
「いやいや、確かに使う人はいるけど、そこで使うんですか?」
「そっちの方が使いやすいなら使うじゃろ、お? でたぞ。ここから、北に向かって3キロ。そこから東に5キロ進んだ先に沈黙の森とテロップが出てくるところがある。そこなら問題ないじゃろ」
ここで突っ込んでは話がおかしな方向に行くのが分かるので、スルーしないといけない。
「ありがとうございます。それでは」
気持ちを抑えて向かおうとすると声がかかった。
「すまんの。由紀の様な少女に頼らないと、この事態を収拾できなかった、わしら大人のふがいなさが恨めしいんじゃ。ここ数日、ワシ等はこの世界の判明している所を探したんじゃが、精神汚染の解除するものを見つける事が出来なかった。申し訳ない」
その声は、悔しさを感じるには大きすぎた。
「大丈夫です。クリス博士にはたくさん助けてもらってますから。今回は見つけられなかっただけで、実際はあるかもしれないじゃないですか。向こうで、医学が発展するのも、知らなかったことを見つけられたからです。ゲームでもデバック作業を行って、不具合を修正するじゃないですか。でもそれは普通のやり方で見つけられるものではないです。だから、今回は僕が出来るだけだった、それだけですよ」
後方に向けて話しかける。
そう僕は考えていたから。
世の中には、さも当たり前と、行う人もいるだろう。
でも、中には怖がり恐怖を覚えながら頑張る人もいるんだ。
その人たちが頑張ってくれたから現実では、沢山の研究や発展が行われた。
だからこそ、クリス博士の苦痛は、何となくわかる。
だから少しでも、クリス博士の苦痛を和らげるように、振り向きながら一言。
「ありがとうございます」
そう笑顔で言った。
そのまま、僕は走り出した。
たぶん見てはいけないんだろう。
歳いっても尚、誰かの身を案じるそんなお爺ちゃんなら。
言われた所に向かい、ただただ目的地に向かった。
いかがだったでしょうか?
今回は、若い故の悩みや、大人が故の考えがそこにはあると思います。
その中で、双方が理解しあえるのは本当に少なく、由紀自身にも分からないことが起こってます。
でも、ゲームに入り少しずつ、変わり始めてます。
自分とは何か、何がしたいのか、それを見る様になってきました。
もし、今回の話で、当たり前だろ、と思っていただけたなら、それは本当にありがたい感想です。
そうじゃない、わかってないだろう! そう感じたのなら、きちんと表現が出来てると感じます。
今は由紀の周り、特にゲーム世界では、人に恵まれてます。
ですが、現実では反対です。世界は狭い範囲でしか物事を把握できませんが、たった少し違うだけで、このように対照的になりえます。
理想だとしたら、その理想は、誰が手に入れられたのか? それを感じてもらえたら、執筆してる私自身とても嬉しいです。




