新たなスキル
お久しぶりです。
今回は、七光鉱石の所有者が継承するための話と、服装に関してのものです。
外伝作品を読んだ方は、何となく気が付いてる人もいるでしょうが、今回由紀がどんなスキルを継承するのか楽しんでもらえたらと思います。
それから、答えの出ない悩みに頭を悩ませていると、後ろから声がかかった。
「お待たせしました。ええっと鏡さんですよ……ね!?」
驚きの声を聴きそちらを見ると、そこには銀髪の若い女性が立っていた。
歳は見た感じ二十代くらいで、スキニーにシャツ、そこに何故か白衣の地味と言われそうな服装の女性だ。
そんな彼女の中で一番目を引いたのが瞳だった。
透き通って、濁りのない藍色の瞳。その目を見ていると引き込まれそうになって、硬直してしまう。
「ええっと、鏡ってあの鏡さん?」
「あ、どの鏡かは存じ上げないですけど、僕は鏡ではあります」
少し考える素振りを見せてから、ポケットから小型の端末を出して操作する。
「なるほど。やっぱり、あなた鏡博士のお孫さんね。はぁ。やっぱり彼は凄い。取り繕うのもばかばかしい。とりあえず、普通に話させてもらうわね」
「は、はい」
お爺ちゃんを知っている人?
そう考えても答えは出ないけど、それでも意識が何かを訴えてくる。
「初めまして。私は戸倉マリア。日本名ね。地元名はマリア・クロスフォード・クリスタル。貴方の祖父、鏡博士の研究チームに居た科学者の一人よ。もっと区別させとくけど、初期メンバーと言う事になるわ。ついでに、衣類も合わせながら話さないといけない事があるから、聞いて」
「は、はい」
そう言うと、外に置いてあったのだろう、棚か何かから何着か服を持ち込んでおもむろに下半身を触る。
「いい体系してるわね。肉付きもいいし、柔らかさ大きさも悪くない。腰回りの感じもいいし」
そう言って、撫でまわる指が太ももから、腹部、そして。
「胸もそこそこあるわね! なんていい身体してるの! すべすべで、女の私でも襲いたくなってしまう。と、言いたいところだけど、息荒くしないでくれる?」
「はぁはぁ、え?」
「変な気分になるじゃないの!」
そう言っても、こんなに撫でまわされたことなくて、初めての感覚に心拍数が上がってしまうのは仕方がないのでは?
「はぁ。まぁいいわ。とりあえず貴女の場合は、ショートパンツにジーンズ系、それとトップスは……戦闘スタイル教えてくれる?」
「基本接近戦です」
あまり意識していても悪いと思い、静かに答えようと努めてたのだけど、それでも下腹部は何かに反応している感じだ。
「接近戦ね。そうなると下着はこの大きさだと通常のがいいけど、戦闘と言う事から考えると、スポーツ系の方が良いかしら。おまけに通常のも持ってきているから合わせてみて」
手渡された衣類を、付けようとしてもうまく着れない。
そもそも、ブラ? 自体着けかた知らないんだけど。
どうしたら良いのか分からず、手に持ったものを弄っていると。
「あなた、そうゆう趣味あるの? って、そうだった。確か男の子だったわね。それは普通のとは違うスポーツ系だから下から着るのよ。上からもいいけど、それだと形が崩れるから、自然な形で合わせてね」
そう言われたので、下からつける。
ん? 何だろう? ちょっと緩いような?
確かに胸の所で絞まる感じがするけど、なんて言うのか、ゆったりしているような?
「ちょっと失礼」
すると、後ろから手を回されて、胸を押し上げられる。
「ひゃ!?」
「ちょっと緩いわね。脱いで。一回り小さいのを持ってくるわ。それと、このタイプよりももう一つ上のがいいわね」
急いで脱いで手渡す。
ちょ、ちょ、何なの? 女の子ってこうゆうもんなの?
「じつは、私さっき言ったように初期開発メンバーだった。その時、あなたの祖父、鏡博士から言われたのよ。私たちは必ず七光鉱石の所有者に引かれる。それは、君たちに預けるシステムが彼女たちを呼び寄せるからだ、って」
「彼女?」
胸を隠しながら、戸倉さんの話を聞く。
「そう。彼女。でも、鏡博士は全てを教えてくれなかったわ。多分、裏切り者が出ることを予測していたんでしょうね。私のも博士の言ったとおりに、こう出会ってしまったんだから」
そう話す戸倉さんの声は、もう居ない故人の話をしている感じだった。
「はい。さっきと同じ要領でつけてみて」
「はい」
手渡された物を付け始める。
「私達、初期開発メンバーは、全員この世界に住むことになったわ。後期開発者達により、閉じ込められた人もいれば、離反した人もいる。エメラルドの少女を教えた科学者はその離反した人ね。鏡博士は開発を終えて発表した後、運営人から追い出された。理由は分からなかったけど、このシステムプログラムの断片をロックし、初期メンバーに分けて、こちらの世界に適応させた。それを七光鉱石所持者に伝えるために」
渡されたものを付けると今度は少しきつい感じがした。
「あの、ちょっときつい感じがするんですが」
「そう? 苦しさとかは?」
「ないです」
いきなり、胸を触られた。
何度か揉まれている訳だけど、だんだんと、そのなんと言うか。
「うん。きっちりとあっているわね。それで屈伸や捻り、ジャンプしてみて」
ちょっと顔が赤くなっているのを確認して、言われたとおりにやってみると。
「え? 何これ!」
全然辛くない!
戦闘していた時は邪魔に感じていた胸だけど、今は全然気にならない。
なんて表現したらいいんだろう? 強いて言うなら抵抗がなくなって、しっかりとついてきている感じ。
いくら激しく動いても苦しくないし、着けている感覚には違和感はあれども、それでも抵抗がなくなった感覚は、僕にとっては天からの授かりものだった。
「これ、すごいですね!」
「女性はそうゆう物よ。今度は通常のだけど、そっちは目的が違うから、動く時はそれを付ける事」
「はい」
感動のあまり、自分で何度も胸を触るけど、微動だにしない。
「で後は、このショートパンツに、ベルト、後はへそ出しになるけど、このノースリーブのトップスに、このコートを羽織って、後はハイソックスで、終わり。きてみて」
言われたとおりに来てみる。
「ちょっとダサいけど歩く時は、コートは締めとくこと。そうすれば見栄えは良いわ」
着終わって鏡を見てみると、女性らしさが強調されてはいるものの、コートの前を閉じると性別が分からない様になっている。
「これいくらですか?」
「いいわ。ここは気にしないで。あの子から料金は貰ってるから。これで終わりだけど、もう少し話させてちょうだい」
「はい」
コーディネイトされた服に身を包み話の続きを聞くことにした。
「私の持っている情報は、七光鉱石はリアル世界の法則を壊すカギ、と言う事。ほかのメンバーは私の持っている情報は知らないわ。そして、継承されている物は、クリエイト。二つ名は、『クリエスト』。クリエーターとリストの複合称号。そう、こんな風に」
戸倉さんは、右手を握り突き出すと、透明な光を放ち、胸に持っていく。
そして弾けたら、手の中の物を僕に見せてきた。
「これは、ルビー?」
「そう。貴方の持っている七光鉱石の創作。でも力は貴方ほどではないわ」
すると、ルビーを握りしめて、左手で右手首を押さえた。
「リアクト」
薄い赤い粒子が舞って、フィッティングルームに大量の正方形が散らばり、囲っていく。
「今から私のスキルを見せるわ。それをあなたが継承しなさい。それが、私のいる理由だから」
またルビーを作り出して、握りしめる戸倉さん。
「いい? このスキルで作ったものは、基本的に本物と同じ能力を持つわ。ただ例外があって、七光鉱石だけは作ることは出来ない。一度使ったら壊れてしまうと言う点があるの」
「他のは?」
「他のも耐久以外は本物と同じよ」
そう言って、先ほど作り出したルビーを見せてから、左手で覆った。
「クリエイト、リアクト」
ひと際大きな光を放つと、そこにはショートソードが存在していた。
「これは使えるんですか?」
「使えるわ。ただ」
すると、戸倉さんはショートソードを握って肩に担ぐように構え、後ろに少しとんだ。
「あの!? ここ店の中ですよね!?」
「大丈夫よ! 初めに作ったそのエリア内はコピー空間だから。あなた自身が体験した方が、認識できるでしょう!」
そう言って、腰を落とし始めた戸倉さん。
「クリエイト、琥珀石。スキル、結閃」
オレンジ色の粒子が舞い始めて、剣に収束していく。
戸倉さんの左手は僕の方にまっすぐと伸びており、懐に潜り込んでくるときの体勢だ。特にゲームだとそのまま切り捨てるときの。
「鏡君は前に粒子を出しときなさい。意識したら出来るはずよ」
言われた通りに、意識をして目の前に粒子を流すようにイメージする。
すると、目の前に紅く輝く粒子がうねる様に現れた。
そして突っ込んでくる。
剣が振り下ろされるときに、左手が後ろに行き、オレンジ色の粒子が剣の軌道に沿って迫ってくる。
「クリエイト、アメジスト、スキル、閃竜槍波」
「え?」
その技は錦戸さんの。
薄紫色の光が戸倉さんの左手に収束しているのを確認したら、剣が紅い粒子に接触。
霧散。
右手を、光を放っている左手に添える。
咄嗟に両腕を交差。
突き出される。
弾ける。
目の前を紅い閃光が覆い、何も見えなくなる。
何で、彼女が錦戸さんのスキルを? 同じスキルは存在しないんじゃないの?
光が落ち着くと、目の前には何ら変わりのない戸倉さんが立っていた。
そして僕には傷一つない。
「わかったかしら」
「え?」
理解が追い付かない。
「私の持ってる物は、全て一回限りであって、数値が分かれば他人のスキルの模倣が可能なの。ただ、威力は見ての通り。本家には遠く及ばないわ。ただ、スキル模倣には唯一の長所も存在する。それが、昇華よ。後ろ見てみなさい」
恐る恐る後ろを見ると、鏡があった場所に真っ黒な人型が存在した。
その黒い型には紅い粒子が散っていて、冷静になった頭でそれを見た時、その型は僕自身の粒子によって焼けたという事が理解できた。
それは、つまり、ここ一帯、いいや、僕一人だけを弾き飛ばしたと言う事。
粒子で守ってはいたけど、粒子で僕自身の型だけ抜くようにはじき出した。
そう、防御は出来たけど、同時に防御だけはがされた。
僕の目の前だけを弾き飛ばした。
錦戸さんのは、文字通り防御を貫通させる一点突破型。
でも戸倉さんのは、同じ防御を貫通させるモノだったが、一点突破ではなく対象者の防護だけを吹き飛ばす防御貫通型になっている。
スキル自体にダメージは無かった。
でも、もし錦戸さんの一点突破のスキルが全身に適応されていたら。
それが昇華。
威力は落ちるが、性能を作り上げる。
「すごいですね」
「ありがとう」
「その力は無敵なのでは?」
創造系は大体チート能力として扱われるものだけど。
「私の能力自体はチートでは無いわ。その原理を知らないと作り出すことが出来ない。電車を創ろうとしても原理を知らなければ作れないもの。もっと言うと拳銃を創ろうとしても、構造だけじゃダメ。発射される原理や、それが及ぼす影響、性能に係数。つまり、数値を弄れるのはその物の基礎情報が完ぺきにならないとだめなの」
「なるほど」
つまり、車を創ろうとしたら、部品の一つ一つまでの技術、構造、それが及ぼす影響を把握しとかないといけないと言う事。
「でも鉱石は?」
「鉱石とか科学的基礎構造が存在している物や、自分が扱ったことあるものなら、そうゆう物だ、と言う限定的な用途として作ることが出来るわ」
「でも拳銃は撃つ、と言う限定的なものではできないんですよね?」
「さっきのショートソードは、鉄で切る、もしくは突くと言う事で作り上げたのよ。鉄パイプで殴るなど、つまり、鉄製の何かで切る、もしくは殴る、それだけの用途で、記憶にある剣を振る動作に合わせるように数値をくみ上げただけ。拳銃なら打ち出すことは可能だけど、初速や爆発の威力なんて分からなかったら、ダイナマイトで打ち出すのと同じ。つまり死ぬことになる訳だけど、それを禁止している為に原理が分からないと作れないという事になるのよ。そして、オリジナルを超えてしまったらいけないから一度のみと言う制約が存在しているの」
言っている事は分かったけど、ここに来て本当に言うのを躊躇われる疑問がわいた。
「あの、ここってお店の中ですよね?」
右手が飛んできた。
いや、わかってます。明らかに変なタイミングで言った事。人によっては話を聞いてなかった、と取られる行為だと言う事も。
「貴女、やっぱり変だわ。一応、さっきの衝撃でここに張っていた空間は消えたけどね!」
その言葉のまま、中に入ってきて、その勢いで鏡を背に押された。
その綺麗な顔が僕の前まで来て、その時に真っ先に頭に思い浮かんだのは。
壁ドン。
ちょっと待って? 女性にやられてもドキドキするもんなの?
いやいや、そもそも僕って年上好きだったっけ?
「これは仕返し。さっきの場の空気を壊したね」
左手で顎を持ち上げられて、顔を近づけられる。
「このスキルをあなたに継承させないといけないの。それが私の役目。だから、今基礎データを送るわ」
鏡に置いていた彼女の右手が、肩に触れ、腕を滑り、僕の左手に触れた。
その手は指を絡める形で握られ、身体を密着してくる。
お互いの体温が伝わっているのが分かり、更に彼女の唇が触れ合うと感じる距離で、額を付けあっていた。
「コマンド、譲渡。オブジェクトスキル。クリエスト。転送先固定。数値を自動入力」
目の前に? 違う。目の中に緑の枠が出てきて、謎の文字が移動していた。
『承認』
その文字が見えた途端、頭が弾かれた衝撃を受けた。
その一瞬で、戸倉さんは後ろに飛んで離れていた。
「終わったわ。その服はもう貴女の物だからそのまま行っていいわよ。それと、今送ったのを確認して時間ある時に私の所に来なさい。色々教えないといけないし」
まだぼやける頭でその言葉を聞きながら質問をする。
「女の人は、皆触りあうのが普通なの?」
「!」
何でかわからないけど、また変な事を聞いた感覚があった。
「確かにスキンシップはする人は多いわね。ただそれは悪まで感覚の浄化、すなわちストレスの発散効果や、愛情表現などの非言語コミュニケーションであって、それを可能にできるのが同性と言う事だけ。男性にすることもあるけど、それは信頼しているだけだったり、意識的にやっていることだったりであるから、深い意味が付きまとうわ。特に信頼のみで行っている行動なら、男性は勘違いする人多いでしょ? だから、女性だけのコミュニケーションになっている訳。それと、私のは! さっきの送ったのを見ればわかるでしょうが、数値をリスト化する事が同時にできるから、触っただけで数値を記録しないといけないのよ。作るのにはね。それをするのは説明した通り、触れるほうが早いだけ。感触と言う数値データ、重さ、感覚を登録できるからね。だから私のやり方が普通とは思わない事ね」
そう言って、そそくさとどこか行った。
僕はその場で座り込んで、胸の中で鼓動している心臓に意識を任せながら、先ほどの事を思い出す。
それだけで、熱が顔に上がっていくのが分かり、その場でのぼせてしまう。
やばい、きれいな人に、身体だけなら同性だけど、詰め寄られるだけで意識が飛ぶほどにドキドキしてしまう。
これは、ゲームだから、と言うだけでは片づけられない程だった。本当なんだ。こんな状態になるのも現実だったからこそ。
そう、考えが完全に変わった事を自覚しながら、その場所で熱が冷めるのをただただ待っている事しかできなかった。
この感覚が何なのか分からないけど、たぶん流されちゃいけない物なんだ、と言う事だけは分かった。
特にこっちの世界での異性からは尚更。
いかがだったでしょうか?
服に関しては、初めの方でもやりましたが、その後破損してそのままだったのを思い出して、正式に制服以外のベースを作りたくてこの話になりました。
継承スキルは、創造ですが、このような小説ではありふれた最強能力としてなっているのが現実です。
ですが、本来の創造やクリエイティブと言うのは、基礎知識があってそこに付加価値を付けることだと思います。
電車は遠くに走っている物、これは誰でも知っているので完成系として出されていくものであって、わかりやすいからこそ創作では省かれている物です。
謂わば『常識』と言う事ですね。
ですが、もし自分が作るとしたら? と考えた時、車輪があってモーターで前進させて、電源を切ると止まる、この感じでは人を乗せて走らせるのには厳しいと感じてました。
その為、システムのアシストがあったとして、基礎部品を思い出すことできる事、つまりその物の性質を知っているからこそ、作れると言うのがクリエイティブであって、創造なんだと思います。
そこだけは出来るだけ壊したくなくて、このような万能でありながらも、それを扱うのはとても難しい、と言うのが本来の形だと伝わってくれればと思います。
次回は第二章につづく大きなトラブルであり、一章最終章になります。




