後日談:勧善懲悪と必要悪
後日談です!
今回は、悪についてです。
いろいろこの話ではおかしい所が出てくるでしょうが、どうぞ考えずに読んでもいいですし、考えて読んでもいいですので、楽しんでください!
今いる所は、TLSの25階にある会議室だ。
会議室と言っても机があるのか、と言えば全くなく、シンさんの専用机が置かれているだけだった。
「まず確認だ」
シンさんは、手を組み僕の方を見つめていた。
確かにこの人がこの街のリーダーなのだと、そう感じるには充分な風格をその服装含め漂わせている。
「アンダーじゃないから、まともに話していくけど、僕の名前はヨシュアだ。ヨシュアアーサー、それが本名で、今から見せる姿が本来の俺の姿になる」
ところどころ優しくなりながらも、シンさんという事を忘れさせない様に、がたがたな会話になっている。
そして、青い粒子がシンさんを包み込み、少しした後霧散した。
そこに居たのは、白い衣装に身を包み、腰からは装備の一部だと思われるプレートが右側についていた。
そして一番の違いは見た目だ。
髪はミディアムで金髪、碧眼で透き通っている白い肌。
どことなくイギリスの貴族を思わせるそのいで立ちは、日本人だとは思えないレベルに別人だった。
「すまない。こっちが本来の僕だ。俺と言っているのは簡単に言うと、身元を隠すためだった訳だが、混乱するだろうから、シンのままでは泣いていこうと思う」
「は、はい」
そう言うと髪の色だけ変えて、深呼吸をしたシンさんは、考えに耽ったのち、口を開く。
「俺は確かあの時、君にサポートを、と言ったはずだが、それに関していう事はあるか?」
「それは、僕も何か力になりたいと」
あの惨状を見てしまい、身体が勝手に動いた。
頼まれたことは確かにサポートだった。でも。
「それで、君は何かできたか?」
「いいえ」
恥ずかしい事に、助けてもらった。
二度も。
そして、ついていけなかった。
戦いに。
「現実の物語ならば、君は英雄になれるだろう。ネット小説然り、ドラマ然り。読者のストレスを発散させるために、最強の力を得、チートと言われる物を手に入れた。そんな主人公になれただろう」
「何を言いたいのですか?」
回りくどい言い方だ。
この回りくどさは、何か目的がある訳だけど、そんなのは伝わらない人がほとんどだ。
「その主人公では無い。そしてこの世界も物語ではないんだ。人が簡単に死ぬ。同時に最強でもない。努力と言うのをした上で、それは本当の力になる」
「まだ弱いってことですね」
「違う。君は漫画やドラマ、しかもネット小説系に毒されている。簡単に弱いからだと思うのは、力を力としか思っていない事だ。だからあえて言おう。君は無知だ。知らなすぎる。戦いと言う物、現実と言う物。世の中の理不尽、苦悩を」
「シンさんは知っているんですか?」
少し考えた後に、何を離すか決まった感じで立ち上がる。
「君は絶対悪と言うのは信じるか? 反対でもいい。絶対善は信じるか?」
「え?」
絶対悪、絶対善。
この二つは必ず存在するだろう。
犯罪を犯せは、それは許されることでは無いし、誰が見ても悪だと言うだろう。反対に仏や神様、僧侶や警察など善人だと言われる人は絶対に良い人だ、という事から絶対善は存在する。
そうでなければ、宗教と言う物は成り立たない。
「あると思います」
「なぜ?」
「もし、その二つが存在しないならば、人はみな良いも悪いも無くなるからです。成績が低ければ、
それは悪い事だとレッテルを張られる。頭が悪いとか馬鹿にされる。もしこれが悪い事じゃ無ければ、言われることこそが問題になり、それこそ批判される事の意味がなくなります。それは簡単に例えただけですが、これが犯罪ならする事が悪じゃないならば、批判することも悪じゃなくなり、何してもよくなってしまうから、そこには絶対悪と言う物があるんだと思います」
「なるほど」
この理論は、たぶん分からない人もいるだろう。
人は必ず批判する。それは気に食わないからなど沢山あると思うけど、その批判する人が何かを悪だと決めつけたからそこに悪が存在し、その批判をすることがまた悪と化す。悪い事が繋がれば、それは無法となり、良い方に行けば調和ともなる事。
「君が言っていることは矛盾してる。そこには」
「気が付いてますが、それでもあると思います」
「なら、いい。俺が送還したあの女性は、現実世界ではDVを受けていた」
急に何の話をし始めたのだろう?
「彼女は、現実から逃れるためにこの世界に来て、四か月前にあの性格になった。どうしてかわかるか?」
あの人は、もともとあんな感じではなかった?
「もともと、そのような性格があったから、現実から逃げたため好き勝手したとか?」
「違う。彼女はこの世界に来たばかりは大人しい人だった。だが、現実の起こったことと言うのはこの世界でも変わりはしない。関係した事に本人は望まなくても巻き込まれる。彼女は俺がここを解放する前に、地下施設で、弄ばれてた。解放後、アンダーができ、男性と言う物を恐れ隠れていたが、副会長になり、力を付けた途端に、変わってしまった。自分と同じ人を増やさない為に、って言ってな」
人にはたくさんの過去や、経験がそこにある。
その経験によって起こるものは、善でも悪でもない。
「その結果、対応を間違えた。恐怖と言う物に縛られ、優しさに依存した。それが善であると信じ、同じ境遇の人を巻き添えにし、今回の騒動を起こした。その上で聞く。君は、鏡はこの俺を悪と言うか?」
彼女は、現実の辛さから性格がゆがんだ。
それは、男性から受けた傷で、その事を一番恐れていた。それが性格に影響を及ぼし、託せられた事によって、シンさんに心許した。それが唯一の救いだと信じて。
でも、力を持つことによって、暴力の怖さを拭えなかった。そして、こっちの世界で過ごす内に、同じ人を出さないと言う名目で、助けをくれると言う人に頼ってしまった。
結果、シンさんは彼女を現実世界に返してしまった。
そう、地獄のようなあの世界に。
「僕は、僕にとっては、シンさんは悪に見えません。人を、この世界の人たちを守るために仕方がなくそうしたんですから」
「そう言うだろう。なら現実ではどうか? DVに合い、助けを求めて見殺しにしたら、世論は最低だ、痛みを分かってないと言うだろう。これが、現実だ」
たしかに、シンさんの言っていることは現実である。
警察に被害届や、相談をしても何もしてもらえず、事件に発展するケースもある。
それは、悪と断罪される。
なら警察や助けられなかった、力がある人が助けることが出来なかったことが悪なのか?
違う。
彼らにも、確かに何かが合ったのかもしれない。出来ないような何か事情が。
そうなると絶対悪って。
「シンさん。僕分かりました。この世界に絶対悪は存在します。でもそれは人やモノ、事象じゃなくて、概念なんです。人が起こす行動一つ一つは悪でも善でもない。評価する人により変わって、その評価が悪となった時、全ての行いが悪になる。それが僕が思う絶対悪です」
「ふ。それでいい。この話は終わりだ。今回のした事は大目に見ると言いたいところだが、責任は取ってもらう。今から一か月後に、奴隷都市の解放に君一人で当たってもらう。その際に一人護衛を付ける。奴隷都市に雄二がすでに入って調査をしている。合流して対処に合ったてくれ」
雄二さんと。
「わかりました」
「あと、彼女は現世に送検したが、彼女は今警察に居る。沢山の罪を犯したが、必ず守れるように特別処置法の適応を申請している。これで彼女は僕の国に来るだろう」
「それって」
「そうだ。彼女にとってここは呪縛でしかなかった。だからこそ、僕が責任を取り、彼女を保護する。それが僕の役目だ」
シンさんは、地獄に返すわけじゃなかった。
彼女の気持ちも、助けもすべて行うために、斬ったんだ。
「そうそう。君を助けた女の子居ただろ? 話があるようだから、10階のラウンジに言ってやってほしい」
「わかりました」
僕はそう言って、シンさんの元を後にした。
この世界はゲームではない。
そして、僕は全然強くはない。特に精神的に。
敗北感は無かった訳だけど、それはたぶん気が付けない程、精神がぼけているからだ。
感情が死んでいる。
これ治らないと、僕は僕で居られなくなってしまう。
変えるんだ。
僕が僕であるために!
はい。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
今回の話は前回のラストで、ヨンハさんを切ったことに関する考え方や見方の違いを表現したく書きました。
人の立場や、見方が一つ違うだけで善にも悪にもなる、そんな感覚を失っている人が多くなってる気がしたので書いてみました。
今回はシンさんの行動に関して書きましたが、ではヨンハさんの方ではどうっだったでしょうか?
彼女は前回アンダーグラウンドの有志をたくさん盾にし、自分たちの、シンさんの幸せを願って事を起こしました。
その結果、地上の人たちにも犠牲が起き、悪い思考の人は快楽の赴くままに行動を起こさせるきっかけを作ったヨンハさんは誰が見ても悪事の親玉だと答えるかと思います。
でも、その根底にあり、戦ってた中ではアンダーの幸せのための戦いであり、シンさんを守りたいただその一心で起こした事でもあります。
これは、現実でも起こりうることで、誰かを守ることが悪として映るのか、結果的に被害を出したら悪と映るのか、そんな悪とは何か? と言うのを表現でき、少しでも読んでくれた方々に伝わってくれてたらと思います。




