選定の剣とシン
今回は七光鉱石についての話が大きく動きます。
何がもとで作られ、何を以て七光鉱石になったのか。
その部分を推測して楽しんでもらえたらと思います。
数分走ったのちに、ひと際大きな爆発を見かけ、そこが指定されたポイントだとすぐに分かった。
どうしてか?
子供を助けた所からここまでの間に、近づくにつれ破壊されている物の頻度が多くなっていたのと、血の匂いが大きくなっていたことでわかった。
今いる場所も市街地の真ん中で、中央には壊れた噴水があり水が噴き出している。
周りは、瓦礫の山で、いたるところが崩れ燃えており、人がいるのかすらも分からない程、激しかった。
「錦戸さん! 言われた通り来ました!」
そう声を上げるも、返事は帰ってこない。
再度ウィンドウを操作して、マップを確認したが間違ってない。
どうゆう事だ?
騙された?
いいや、あの時の人たちは確かに旗に書かれていた紋章を出していた。
「待たせたな」
そう声がした方を振り向くが煙で分からない。
だが、この声は。
「悪い悪い。ちょっと待ってな」
その瞬間、緑の粒子が巻き起こり、煙を吹き飛ばす。
「あなたは何なんですか」
そこに立っていたのは、黒いジャケットに、黒いズボン、胸ポケットには銀色のペンを差しており、右手には銀色の本。髪型は前会った時との印象が変わっており、今はセミロングで漆黒の髪色だ。
「ここに呼んだのは俺だ」
そこに居たのは、幾度となく僕を苦しめた張本人の男性だった。
「自己紹介がまだだったな。俺の名前はシン。一応仮名だ。アンダーグラウンド統括理事会会長をやっている。所謂、この反乱者たちの親玉っといったところさ」
「あなたが元凶?」
なんだろう? 全くそうは感じなかった。
確かにめちゃくちゃな事を僕にはしてたし、無理やりここに来させたのは事実。
でも、なぜだろうか?
彼、シンさんからは全く邪悪な、いやな感じがしない。
それどころか、厳しさの中にも優しさすら感じる。
「初めて会った時とはえらい違いだね。って、こんな話し方だと、俺と言う人柄が分からないな。普通に話すがいいか?」
「はい」
そう返事をして、改めて考える。
初めて会った時は飄々として神経を逆なでする話し方をされた。しかも不審者よろしくいろいろ話してきた挙句に、ゴブリン王の所に飛ばした。その後出てきたら、また神経を逆なでするようなお前の責任と、責任ばかり言ってきたひどい奴だった。
そう、何故か『だった』としか言えないんだ。
今の状態を見て、あのアンダーグラウンドの人と戦って、そして何かを掴んだと思った。そして、決意を決めたら、全く違う人物に見えてしまう。
「疑問に思っているようだが、その答えは後で答えてやる。それよりも破片の起動は出来たか?」
そう言うと、僕の腰の方に目を流したが、今の状態だとそもそも無いはず。
「あの刃折れの刀はどうした?」
「たぶん気が付いてると思いますけど、この姿になってから自動的に粒子になって消えました。予想なのだけど、解除したら出てくるかと」
「はー。まぁいい。とりあえず悠長なことは言ってられない。簡単に説明するから、今のうちに覚えろ」
ため息をついてからとんとん拍子に進んでいく。
こんな状態じゃ話もできないから当然と言えば当然だが。
そんな中、ふと疑問に思った事がある。
「まず、君はここから北に行った所にあるアンダーグラウンドの出入り口に行ってもらいたい。そこで錦戸、クリス他数名が戦っている」
「そこでの戦いに参加しろと?」
「いいや。君には今から言う事を錦戸に伝え、時間稼ぎをお願いしたい。この問題は、このおれ自身が片付ける。特に錦戸には迷惑をかけてるからな」
どこか戦友のような空気を醸し出しているシンさんの表情は、どこか愁いを帯びていた。
「わかりました。それでなんと伝えれば?」
話を進める。
「錦戸に、七光鉱石の力を集めてきた。そのコネクションを開くから、アクセス器のリンクを開きっぱなしにしといて、とな」
どうゆう事だろう?
七光鉱石のリンクは七光鉱石でしかできないって言っていた。代わりに、七光鉱石は通常の鉱石と片道リンク、つまりスキルの使用が可能という事だったはず。
「詳しく、今は離せないが頼めるか?」
「わかりました。代わりと言っては何ですが質問良いですか?」
シンさんの頼みを了承して、すかさず質問をしようとした。
そう、僕はあの時、人に向けて攻撃を行った。だが、死ななかった。どうゆう事なのか? という疑問が一つ。
もう一つは、ありえない現象になってる血の表現だ。
「七光鉱石は人を殺してしまうのに、なぜ攻撃した人が死ななかったのか、それとこの惨状にある血液はどうゆう事ですか?」
その質問を投げかけたら、考える素振りをするシンさん。
そのあと何度か頭を掻いたのち口を開いた。
「隠していても意味ないか。まず初めの質問の答えだ。俺はこのリンクされているアクセス器を持っている」
すると胸ポケットの銀色のペンを見せてきた。
そこには透き通った翠色の宝石がはまっている。
「これはエメラルド。七光鉱石の一つだ。あくまでリンクしている物であって、それ以上でも以下でもない。だがこのペン型のアクセス器は正真正銘の俺のものだ」
「つまり持ち主から継承したわけではなく、代わりに使えるようになっていると?」
訳が分からなくなってきた。
そもそもアクセス器に使用されている鉱石の変更は不可能だ。
その上で、シンさんはエメラルドが自分のアクセス器に付いていると言っている。リンクして。
「そうだ。現在本当の持ち主は生きてるし、アクセス器も使用可能な状態だ。そしてこっちだ。これもアクセス器になる」
また訳の分からない事を。
シンさんは抱えていた本を見せてきた。
そこには黒い球体に白い三本の線が入った鉱石が埋め込まれている。
「本はアクセサリーではないですよね? どうしてアクセス器としてあるんですか?」
「アクセス器と言っても、機能していない。正確にはアクセス器になる前段階の加工品だ。そしてここに填まっているものはオニキスだ」
オニキス!
村を襲い焼いた、あの男の持て居たものと同じ。
「貴方だったんですか」
「どうだろう。そしてこのオニキスの粒子は黒だ」
一瞬怒りが湧き、シンさんに向けて拳を放つ。
「それでいい。格闘では不便だろう。リアクト。選定の剣」
黒い粒子が集まり剣になってシンさんの前に現れた。
そして、その場に突き刺し後ろに飛んだ。
ギリギリのところで躱し、剣を見る。
長さはショートソードくらいのもので、柄はぼろぼろ、刀身は刃こぼれしているが、きれいな白色をしていた。
「君のブレスレットを付けてる手で握り、認証と言うんだ。承認と出たら引き抜き、全力で振れ」
言われるがまま、柄を握る。
「認証」
青い円が二重三重と出てきて、数秒後にはアクセス器に集まり青く発光した。
すると緑の文字で『承認』と出てきたので引き抜く。
「本気で行きますよ」
今少しずつ冷静になっている為、明らかにこの人じゃないと考えてるのに、感情がいう事を聞かない。
「一つだけ言っとく。その姿が維持できないかもしれないから、替えの服の確認はしとくんだな」
「うるさい!!」
振った。
赤い粒子が爆発的に増え、シンさんに一直線に向かう。
時々どす黒い赤い粒子が混じり始めて、街の瓦礫を吹き飛ばし、地面を抉り、更には何かを蹴散らして粉々にする。
「ああああああああああ」
待って。何かがおかしい。
意識が、殺せ、殺せって言っている。
人を殺した、沢山のモンスターを使役した、そんな人を生かしてはいけない、殺せ殺せと。
「わかるだろう。感じるだろう。そろそろ、意識をアクセス器に向けろ! それで片が付く!!」
言われるがまま、意識をアクセス器に向ける。
その間も、どす黒い声が頭の中を怒りや憎しみで染め上げようと迫ってきてる。
「うわああああああ」
叫びながら剣を話そうとしたが、手が言う事を聞かない。
それどころか、力が更に入っていく。
どうして? 何で? ルビーに意識を向けようとしてるのに、意識がそれる。
なぜアクセス器じゃなくてルビーなのか?
それは、彼女の思いが具現化したものだから。
お願い。あの時誓ったのに。決めたのに。殺したくない! 殺したくないんだ! だから止まってよ!
この感覚はクリス博士の時に似ている。
そう。本能。
それが暴走している。
『ったく。しゃーねぇな。今回は俺が止めてやる。いいか。今度起こしたときは自分で止めろ。そうじゃ無いなら心を強く持て。理想と現実を分けろ。思考と感覚を遮断しろ。真実をその目で見据えるんだ。それが七光鉱石の原型だ』
そうエルの声が聞こえたと同時に、赤い光があふれ出る。
『断罪』
瞬間どす黒い赤い粒子が消え、深紅の炎になり、本流だけがシンさんに向かった。
「ふ。君はまだ駄目のようだな」
赤い本流に呑まれたシンさんは微笑んでいるように感じる。
程なくして奔流が収まり、辺りが元に戻る。
僕のいる場所と、シンさんを中心に後ろに35度の範囲以外が消し飛んでいて、5メートルくらいのクレーターが出来ていた。
「シンさん!」
「大丈夫だ」
そう言ったシンさんの右腕は血だらけになっていた。
僕は、どうやってシンさんの方に行こうか考えていたが、答えが向こうからやってきた。
緑色の粒子が僕を包みシンさんの元に連れていく。
「シンさん! ごめんなさい。こんなことになるなんて」
「構わない。右腕で終わったのが幸いだ」
そう言いながら、微笑んでいた。
無事な左腕で僕の頭をなでる。
「解ったか? これが七光鉱石だ。君の力自体は人を殺せない。だが、もう一つの側面がこれには存在している。オニキス。これは七光鉱石の前の形だ。もとはモリオンと言う鉱石から誕生している。漆黒の水晶だ。そこから七つに分かれ、さらに保険が生まれた。それがオニキスだ。そのオニキスは二種類の特性を持つ」
オニキス、七光鉱石。
色々出てきたが、今はどうでもいい。
「ごめんなさい」
「よく聞くんだ。そのオニキスは七光鉱石とは別の発展を遂げる。その結果が、ブラックオニキスでしかない。同時に七光鉱石が集まることによって真価を発揮する。それがオニキスと言う物だ。オニキスは反対のものがある。ホワイトオニキスってやつだ。一つの鉱石に二つの色が存在している。しってたか?」
「いいから! もう話さないで!」
あれ?
いつからこんな涙もろくなったんだろう?
女の子で居すぎた弊害なのか、それとも別の関係があるのか?
「答えないといけないだろ? そのオニキスはもう一つの形態がある。それが俺の持っていたオニキスだ。真のオニキスと言ってもいい。黒と白の混ざったオニキス。これが七光鉱石になる前の姿だ。それで、なぜ死ななかったのか? それは、君のは難しい正の方向に出力したからだ。それの表れがそれだ」
僕の胸辺りを指して言った。
そこには深紅の胸当があり、小さく火の粉を纏っていた。
つまり。
七光鉱石は未知の部分があるのは知っていた。
その中で解っていたのが出力のみだった。
鉱石が変化することは知らず、その強大な力のみを把握していただけに過ぎない。
そして、鉱石は進化する。
そう、黒にも白にも。
それって。
「七光鉱石は。人と交わる事で感情や意志、存在の在り方を学んで、初アクセス時にその人に合った形で存在証明がされる。その結果、構造違いの宝石になったり、鉱石にもなる。その始まりの鉱石があって、それに適応しなかったものがオニキス」
「よくわかっているじゃないか」
そう。
七光鉱石含め、アクセス器の宝石は初アクセス時に装着される。アクセスされる前までは何もない貴金属なのだ。
そして、アクセスしているときにアクセス器に鉱石が生成される。
プログラムだと思っていたが、今なら分かる。
鉱石自身が生き物なんだ。
「これが答えだ。二番目の質問に答えよう。血が出るのは、警戒態勢だからだ。人は誰しも痛覚だけでは止まらない。気が狂っている人は尚更だ。その為、警戒時には生身だという事を視覚からも認識させて、恐怖と言う感情を呼び起こす。そうする事で、戦いを回避すると言うプログラムを走らせているんだ」
そんな事までして。
それだけ、ここの街は人と言う概念に全面的な警戒をしていて、同時に新人や人を生かそうと言う努力があったんだ。
「争いは簡単には止まらない。だが、争う意識には抵抗できる。戦意喪失を直接的に作用させることは出来ないが、人の感情は今の君みたいに呼び起こすことができる。洗脳じゃない方法で、な」
「ありがとう。僕行かないと。シンさんに頼まれたことで罪滅ぼしするから」
「おう。行ってくれ」
そう言われて、振り返り走り出した。
「いつからあんな女っぽくなった?」
その声を聴いて急に恥ずかしくなった僕だった。
由紀は少しずつ自分の中の意識を受け入れ始めました。
今まで、由紀は戦闘に勝つのも、力不足でが武者ならな所がありました。
今回のシンさんとの会話も、形的には負けに見えますが、これは負けとして表現したわけではないです。試練と言う訳でもなく、人には誰しも二つの側面があります。
その二つの側面に向き合う事こそが、今回表現したかったことで、感情の暴走とか、結果的に何もできてない、と言う事は由紀自身の強さゆえのものだ、とこれからの重要な事の一つになっていきます。
強さとは何か? 何を以て最強となすのか? 現実を終わらせるのには何を知り、何を選択するのか?
由紀さんの成長を自分に合わせたり、僕ならこうする、私ならこうするなど、コメントで書いてくれたら嬉しいです。




