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伝説の始まりは現実の終わり  作者: 一ツ柳八重
アンダーグラウンド
29/53

葛藤、そして決断

今回はやっと書き終えたところになります。

書き上げてすぐに上げてますので、誤字脱字があったら申し訳ないです。

もし見つけましたら、どうぞご報告をお願いします。

 さて、これから始まりの街に戻る訳だけど、また同じ距離もしくはそれよりも長い距離を移動するとは思わなかった。

 ここにきて、一年間隔離されていた訳だけど、あの時はどうして街に行こうと思ったんだっけ?

 自分の目的がない事に気が付いて、何をしたいのかを真剣に考えようとし始めたら、アクセス機から音が鳴った。


「ん?」


 何となく右手を目の前に持ってきて、表示されている文字を確認した。

 そこには赤い文字で、『CALL・匿名により表示不可』と映し出されている。

 はて、僕に連絡してくれる人なんて、数が知れているんだけど。

 ここ二日間の出来事であった人と言えば、錦戸さん、クリス博士、雄二さん位だ。

 それに連絡の仕方が相手の名前を知っているという事ならば、また話は別だけど、それでもわざわざ掛けてくる人なんて……。


「あ。もしかして戦闘中に僕からクリス博士に掛けたから、その事についてかな?」


 たしかあの時に通話した気がする。

 そう言うのも、外に出てからかなりの時間がたっている感覚がぬぐえない。

 僕が飛ばされた時は昼間だった。でも今は夕方で普通なら六時間弱の感覚のはず。

 でも実際には三日経っているような……。


「グダグダ考えても分からないから、とりあえず出てみよう」


 そう言って通話しようとしたんだけど。

 出方が分からない。

 その場であたふたあたふたしていると、さっきまで出ていた表示が消えてしまった。


「あ」


 それしか言えなかった。

 掛けることは出来たのに、出れないとか何しているのだろう。


「考えても仕方ないからマップを表示して、方角確認しないと」


 マップを表示すると、戦闘の時の場所から北東に10km移動していた。

 ざっと考えて、51kmくらいかな?

 一キロも増えている。

 とりあえず、向かおうと走り出したら。


「わあ!?」


 右の方向に30×15cmのウィンドウが開いて声が流れてきた。


『久しぶりだな』


 この声は、あの時僕を飛ばした変態!

 面倒くさい感覚が湧き出てきて、どうしてくれようかと考えていたが、そんな気持ちを無視して話しかけてくる。


『この通話が可能って事はゴブリンの王を倒せたと言う事だな。素晴らしい。だけど渡したものは起動してないようだから、倒せてもリンクどまりと言う事か』


「何ですか? またどこかに飛ばすんですか? もしそうなら切り方教えてください」


『いきなりそれとは肝が据わったと言うかなんというか。まぁいい。それよりも、今から君に仮想スキルを送信する。それを使って始まりの街に戻ってきてほしい。向かっている間に簡単に説明を兼ねて、現状把握をさせよう』


 そう言われたと同時に目の前に一文。


 仮想スキル・疾風

  移動時間の短縮。設定された場所までの移動を短縮するリンク型スキル。


 リンク型スキル?

 スキルは確かオンリーワンで同じものが無く、共鳴も七光鉱石同士じゃないと出来ないはずなのに?


『細かい事情は移動しながら話す。リアクト、仮想スキル疾風と言って使用してくれ』


 怪しいけど、普通に走っていたら何時間もかかるだろうから、仕方なく言われたとおりにする。


「リアクト! 仮想スキル疾風」


『仮想スキルの使用申請――確認。スキル所有者認証――承認。仮想スキルの使用の為、アクセス機にスキル所有者のアクセス機をリンク――不可』


 失敗してない?

 機械音声がいろいろ言っている訳だけど、最後のモノが不可ってはっきりと言っていた。


「できないんだけど?」


『大丈夫だ。飛ばしたのも同じものを使用したんだ。もう少し待ってな』


『リンク形式を変更。鏡様のアクセス機からの供給を遮断。スキル保持者のアクセス機限定仕様の確認――可。使用スキルの限定解除を申請、許可。特別使用可能スキルに登録、完了。スキルを使用します』


 緑色の粒子が噴き出て身体を包み込み、宙に浮かす。

 なんかよくわからないけど出来たならいいかな?


『起動できたみたいだな。簡潔にまず話す。現在、君を飛ばしてから3日経っている。その間、始まりの街で地下集団、アンダーグランドの勢力が、TLSの自警団体と戦闘を繰り広げている』


「は?」


 これしか出てこない。

 戦っていた時間ってそもそも三時間くらいだよ? 今三日って言った? 明らかに時間がずれてない?


『そこに君を行かせ、事態の鎮圧をお願いしたい』


「なんで僕が?」


 正直、アクセス機自体の性能は強いけど、一介の高校生だ。本体は男子だったとしても、今は女性の身体で、まだどうしたら良いのか迷っている。

 それにTLSには錦戸さんや、クリス博士が居るはずだ。あの二人が居る中で僕が行く必要も無いし、何よりも出力限界を使用してもあの二人に勝てないし、他にも強い人は沢山いるはずだ。


『なんで? それは君がそれを収める為に受け継いだものがあるからだ。強さの代償と言う訳ではないが、君じゃ無ければいけない理由がある』


「僕じゃなきゃいけない理由?」


 その間も、かなりのスピードで移動しているが、酔うとかそうゆう感じは全くない。


『事の発端は、アンダーグラウンドに居るはずのリーダーが居なかった為、七光の情報が漏れたこと、それと同時に、どっかの馬鹿が奴隷都市のスパイを許したことによって、交換条件を持ち掛けた。その交換条件が七光鉱石の所持者を受け渡し、女を売女として譲渡する事だ』


 僕と、女性を?

 奴隷都市?

 かなりやばい事になっているのは分かるけど、それこそ僕みたいなのが行くべきではない気が?


「でも、そのアンダーグラウンドにも女性はいる訳ですよね? その方たちは?」


『そいつらは問題ない。味方として管理される契約を結んだようだ。それを知った上で錦戸が先頭に立って戦っている。奴も気が付いている。この広範囲を収束させるためには七項鉱石の力が必要だとな』


「僕も女性なんだけど?」


『確かにそうだが、君だからこそ出来ることがある』


 何度も何度も僕にしかと言ってくる。

 物語の主人公ならここで助けに行きます! と簡単に返事をするのだろう。

 そうする事が人の為になる、善人として認められる、憧れると言われるのだろう。

 でも、僕には何もない。

 スキルは結局一つだけ。

 力も無い。

 ゴブリン王は倒せたが、強くなったわけじゃない。結局揺れている。自分は誰なのか。何しにいるのか。

 電子の力を借りた世界で、何をしたいのかも分からないままだ。

 そんな僕に何が出来る?


『答えないなら構わないさ。君は街についたらそれを目の当たりにし、戦うんだからさ。正直こう言うと頼っているとか言われるだろうが、頼るんじゃない。人は生まれながらにして必ず使命や役割、才能を持って生まれる。それを否定するかは君の自由だが、もし君がここで助けないと言う選択を取ったとして、その行動は君の嫌いな大人と同じだという事を忘れるな。君を助けてくれるであろう人が居たとしても、それは偽善だ。真に助けようと思う人はこの世界にはいないという事になる』


「そんな言い方は無いんじゃないんですか!!」


 怒りに似た感情が沸き上がる。

 勝手に巻き込んで、勝手に飛ばして。

 それで今度は人助けをしろと言われて。

 ご都合主義もいい所だ。

 こんな事がポンポン連続で起こって、はいそうですか、なんて言えるようなものじゃない。

 そうなりたくない。誰かを助けたいとは思っている。誰も認めてくれなかった、否定した、怖いって泣いたのもすべて現実だった。

 初めて街に行って、殴られて、痛い思いをして、恐怖を与えられて。

 そんな事しかなかったのに。


『どうするか君が決めろ。この通信は切るが、スキルは維持される。あと通話はCALLを触れることで出られる。切り方はウィンドウに触れて横に流すことで切れる。君が聞いたことは教えた。後は勝手にしな』


「ちょ!?」


 切れた。

 一見無責任に思える感じだったが、初めて会った時から何かを見透かされているような感覚があった。

 髪をぼさぼさにして、深呼吸をする。

 簡単に人を信じろ、なんて無理だ。人を助けろ? そんな事出来るはずがない。だって、錦戸さんでも無理な状態なのだから。女装していると言うだけで毛嫌いされ、それでいる事が落ち着く状態だったのに虐められ。大人は気持ち悪がり、人によっては変な目で見てきたりもした。そんな経験しか無くてどうやって助けろって?

 そう考えていたら何かがはじけた。


【ごめんな、こんな親を育てて。儂が必ず由紀を助けるからの。高校に入ったら必ず、だ】


【由紀君は変じゃない! 私知ってるから。由紀君は自分らしくありたいって思ってる事、それを馬鹿にする、いじめる、あんた達が頭狂ってるのよ!】


 なんでこんな事を思い出したのだろう?


「あー、そっか。僕はこの言葉が何よりも嬉しかったんだ」


 助けてくれた人、今では思い出せない女の子の言葉と、叔父の言葉。

 これがあったからこそ、僕は生きていけたんだ。

 叔父や彼女に恥じない為にも助けないといけないのかもしれない。

 こんな単純な奴だったって思われるだろうか?

 簡単に靡くって思われるだろうか?

 でも、二人のあの心から言っていた想いと優しさだけは、他の人たちとは違った。

 輝いて見えた。ヒーローにさえ見えた。


「僕は。無力だけど、それでも」


 僕を助けようとした人に恥じない為に。

 ヒーロー? いや、ヒロインにはなれないかもしれない。

 へましたら、犠牲者が出るかもしれないし、子供の僕では何もできないかもしれない。

 それでも!


「僕は、また再開したときに笑顔で居るために助けないといけない!」


 何かがはまった感覚がした。

 それは、心地いい感覚で身体を満たしていく。

 その為にはまず、ゴブリン王との戦いの時のような迷いは捨てないと。

 改めて自分の身体を触る。

 胸も出ていて、おしりも少し大きい。

 スカートがはためいている。

 自分の身体なのに情けない認識。

 足を開くっていう感覚を想像するだけでも恥ずかしさがあふれ出てくるから、本当に頭の中も女の子なのだって感じる。

 この状態でできることは。

 本当の自分を、街の戦闘の中で見つける事。

 あとは、この世界に来る目的を明確にする。

 それでいて、助ける。

 手を伸ばせる人は全員助ける。それ以外考えるな。


「私は私。僕は僕。自分を見つけて見失わない。それが目標」


 そう呟き、スキルに身をゆだね街に向かった。


いかがだったでしょうか?

ここが、一つの決断の場面です。

前回にもありましたが、この世界には奴隷都市と言う物が存在してます。

こと奴隷と言っても色々ありますが、この世界では労働として使うわけではなく、特別な戦力として使用されることになりますが、それは今度の更新をお待ちください!


奴隷都市の話の時はリリィさんも介入しますので、また違った話が書けると思います!


それでは今年最後になりますが、来年もよろしくお願いします!


近況報告でもあいさつしたいと思いますので、その時はぜひコメントなどなどよろしくお願いします!

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