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伝説の始まりは現実の終わり  作者: 一ツ柳八重
アンダーグラウンド
11/53

由紀の現実

更新です。今まで書く事がありませんでした由紀の現実についてです。

誤字、脱字、感想などありましたらコメントください!

地獄の時間を乗り越えて、外に出た僕は現実に戻るために気持ちを落ち着かせる。

こっちの世界から戻る方法は来る時とは違っていて、来る時みたいに目を瞑って集中したら誰かの邪魔になる事は明白だった。

今も、ここの通りには沢山の人が往来している。長袖のサラリーマンのような人に、学校が終わって友達とはしゃいでいる高校生。それ以外にも主婦っぽい人に小学生くらいの人がたくさんいる。他にも露店で商売している人もいればそれを見るために集まっている人もいて、この風景を見ていると本当に法律などの規則が無いのか疑わしく感じる。

周りは少し暗くなっていて、ところどころに光が見える。街灯替わりなんだろう。一定距離に点々と浮いている。

僕は、そんな活気がありそうな場所で、帰る場所を思い浮かべる。場所と言っても部屋とかじゃなくても大丈夫で現実世界ならどこでもよかった。

「どこを思い浮かべようかな」

 思い浮かべているけど、どうしても現実世界にいい思い出は無い。それでも、家の形を思い浮かべる。

 すると赤い粒子が円になりゲートみたいなのが出来上がる。中は白い空間でどこかにワープする空間に似ていた。

 その中に一歩踏み出す。意識が落ちて行き、何も音が聞こえなくなった。


 重力を感じでゆっくりと目を開け周りを見渡す。

 そこには机と、ベッド、クローゼット。カーテンは閉まっていて向こうに行く前に漏れていた太陽の光はなく、部屋の中は暗闇に支配されていた。

「帰ってきたんだ」

 自分の部屋って認識すると少しさみしく感じる。何もない、生活はしているのに生活臭がない。長期旅行とかで久しぶりに帰ってきた時の独特の帰ってきたんだって感じもない。

 僕はドアを開けて部屋から出て、一階に向かう。

 僕の家は二階建てで、四人家族用の広さ。今は家族三人で暮らしているから少し広く感じる。階段を下りるとその横に電話がある。

 だからこそ聞こえる。話し声が。

「はい。はい。それは申し訳ありません。由紀にもいろいろありまして」

 母親が電話で話している。話し方からして多分学校の先生で、今日行かなかったことを電話で確認を取っているんだろう。

 階段を全て下りきらないで途中で止まり、話に聞き耳を立てる。殆ど降りたら電話先の声も聞こえる。母親は少し耳が遠いから電話の通話音量を最大にしているから。

「はい。はい。学校には行かせたいんですけど、本人がいつの間にか消えていまして」

『そうは言ってもですね。今年入ってまだ一度しか来ていませんよね』

「はい。すみません。何とか言って聞かせますから」

『去年もぎりぎり追試を突破できたくらいで、今年も大丈夫なんて思わないで下さいよ』

「重々承知しています。本人も分かっているとは思うんです」

『そうは言いますけどね。去年は制服も違っていましたよね?』

「はい。あ、あれは本人がそうしたいと……」

 戸惑いながら話をしている母親には申し訳なくは思うけど、学校の担任になんて会いたくない。あんな担任。

『と言っても、去年もそう言いましたよね? いい聞かせますからって。で? 結局どうだったんですか。今年も始業式でスカートでしたよね?』

「男子の制服は買っているんです」

『あなたみたいな人が居るから学校の責務が増えるんですよ。学校は親じゃないんです。何でもかんでも押し付けて、責任逃れするあなたみたいな親が居るから』

「申し訳ございません。今度こそ言って聞かせますので」

 電話先なのに頭を下げてる感じがした。

『本当にお願いしますよ。教員だって仕事でやっているんですから暇じゃないんです。いつも家に居る保護者ならそれくらいやってください』

「はい」

 疲れ切った声を出して受話器を置く音が聞こえた。

「なんで、由紀は」

 そんな言葉が聞こえてその場から離れていく。

 僕は下りきって、電話の前に立った。

 掛けなおしてあの先生に文句言おうかと迷った。僕は僕のはずなのに、全てを否定される。一時期からこれが普通になっていたけど、でも今はある事が原因で着ている。戒めとしてきている。それも何も事情を知らない人にとやかく言われたくない。成績もギリギリとか言っていたけど、そんなことは無い。学年でも並みの方だ。ただ、あの先生には一切教わりたくなかったから、一度も出てない。その結果あの先生に全ての責任が行く。

 そんな事を考えてリビングに脚を向けた。

「由紀! また学校から電話があったわよ!」

 いきなり怒鳴られた。あんな事を言われれば誰だって怒るだろう。僕の父親みたいな話し方だった。

「うん」

 気持ちが沈んで軽く返事をする。

「またそんな格好して! 何でもっと男らしくできないの! そんな女みたいな恰好で恥かしくないの? 戒めとかなんだか知らないけど早く着替えて!」

 母親の顔は窶れと、怒りによって暗い感じに顔が少し赤くなってる。もう嫌だ、なんでこうなるの、私の何が悪いの、夫も全て消えればいいんだわ……、そんな事を呟いてる。

 僕の父親は結果主義の悪化したパターンだった。何もしない、仕事してお金を稼げばそれでいい。家の事はずっと家に居る人がやるのが当たり前。楽しているんだから。

 そんな言葉をいつも吐く。

「早く着替えてよ! 私の精神をおかしくする気!」

 僕はその場を立ち去って、二階で寝巻に着替えた。ぶかぶかで、体格に合わなくて、着ているというより着られてやっているんだよ、って言われそうなほど不恰好。これのどこが男らしいのか分からないほど整っていない。

「着替えてきたよ。これでいいんでしょ」

 母親にそう言ったけど、こちらには振り向いてもくれなかった。

 料理は出来上がっているのに台所で包丁をまな板にトントンと当てている。それも、何度も何度も。まるで生きているなんて感じなく、死んでいるのに動いている様なそんな感じと空気を纏っていた。

 冷蔵庫を開け、晩御飯を取り出しレンジで温める。温め終わると、それを持ちリビングのテーブルに座って食べ始める。

 時計を見ると時刻は20時少し過ぎ。12時間向こうの世界に居た事になるけど、そんなに居た感じがしなかった。それもそうだって考え直した。錦戸さんにやられて気を失っていた時間が長かったんだと思う。

 何気なしにテレビをつけるとニュースがやっていた。

『本日未明、謎の変死体が見つかりました。外傷は無く心臓だけは止まっており、恨まれていることもないので警察は、リアルバーチャルでの死亡として公式発表をしており』

 こんな時にもまだ起きるんだ。向こうでの死亡事故。いや、殺人かもしれない。そんな世界が向こうの本当の姿で、街の姿は理想とそうあってほしいと言う人々の思いで出来上がったのかもしれない。

『次のニュースです。本日、リアルバーチャルで秘湯が見つかりました。我々取材陣が行く事に成功しますが、その秘湯にはロックがかかっており今も解析班が外すために頑張っております』

 こんなニュースもやっていたんだ。それからニューは聞き流し、晩御飯を食べ終え片しに行く。

「お母さん、食べ終わったからここに置いとくね」

「うるさい……うるさい……その声で話さないでよ!」

 途端に包丁をまな板に突きたてた。まな板に二㎝ほど突き刺さるそれは、母親の憎しみと怒りを表しているようだった。突き刺さったそれを抜いて何度も何度もまな板に突きたてる。まな板はどんどん傷がつき、もう使えないと感じた。

「ただいま。はぁ疲れた。腹減った飯!」

 父親が帰って来た。そして第一声がこれ。僕もそんな言葉なんて聞きたくないし、怠そうな声で言われるとイライラする。

 リビングに入って来た父親はネクタイをそこら辺に置いてワイシャツも放り投げ、ズボンも脱ぎ捨てテーブルに着いた揚句テレビをつけた。

 チャンネルを何度も変えて、バラエティ番組を見始めるだけ。

「腹減り腹減り」

 ただそう繰り返すだけで笑っている。それ以外は何もしない。

 働いている人は確かにすごいと思う。生活できているんだから。生きていけるんだから。僕みたいな学生とは違い、憧れる対象のはずだった。でも違う。僕の憧れるのはこんな社会人じゃない。自分の親を見ていると絶望に飲み込まれそうだった。学校の担任も、他の大人もそう感じて、この世界には居場所なんて無いと考えて、その場で棒立ちしていた。

「飯はまだかよ! こっちは稼いできてやってるんだ! 一般の家庭だとすぐ出すだろ! 家に居るのに何もできないのか!」

 怒鳴るくせに動こうともしない。すぐに普通はって持論を持ち出す。本当に普通の家で父親が言う事が正しいのなら、向こうの世界はもっと混沌として、平穏何て求めない。でも違う。リアルバーチャルとは言うけど、こんな人だけじゃない。

「たく、使えねえんだよ。こっちはお前らを生活させてやってるのに、これくらいの義務すら果たせないとか。おい! 由紀居るんだろ! さっさと飯もってこい!」

 そう言われた。僕は素直に従う。少しずつ僕の感情が消えかかっている感じがした。

 冷蔵庫からおかずを出して、温めたのち持っていく。ご飯も運んだ。これで終わり。

「はぁ。だからさ、疲れている人にラップを外させるのか? 何度も言ってるだろ! 外してくれって! 学習くらいしろよ!」

 激怒してラップを投げ捨てる。そして、食べ始めた。文句を言いながら。

 その間も母親は何も言わず、まな板に包丁を刺していた。

「本当になんで女の子に生まれなかったの。なんで出来そこないの男の子だったの」

「ほんと使えねえな。娘ならもっと良かったのによ」

 二人からそんな事を毎日言われる日々。こっちの方が僕にとっては混沌としていて、無法地帯で、精神を殺す殺人鬼が居るようなものだ。それに痛みも感じる。泣きたいのに泣けない。声出すだけで母親が発狂するから。父親もいると、声だけで何か言わせられる。そんな家庭が普通なわけない。こんなのが現実で、助けてくれる人や、優しい人、僕を僕として見てくれる人があっちの世界。

どっちが怖いのだろうか。現実と言う規則やルールに守られた逃げ場のない世界で、存在すら否定される状況と、法律もルールもないのに良心で皆を守りたいと思える人たちの集まったもう一つの世界。

「お休み」

 ただ一言だけ言って、出て行った。部屋は明るくなっていてけど空気はどす黒い、恨みや憎しみ、怒りや悲しみで支配されていた。

「おい! 由紀! 今日の親子のかいわするぞ!」

 そう声が聞こえたが僕は迷わずに階段を駆け上がり部屋に行きベットに倒れ込んだ。

「あんなの、家族じゃないよ。本当の家族ってこんなのじゃないよ」

 心の何処かでまだ希望を探していたのかもしれない。毎回毎回同じことを思って、何度も何度も泣いていた。

「誰か助けて」

 その言葉だけが救いだった。気持ちを支えるためには声を出さないといけない気がした。過去に一人だけ居た。僕を僕として見てくれたけど、男と知った時に面白おかしくばらして。その後どうなったんだっけ。他の人は信じたけど対応は変えなくて、その子だけ男になれって言っていた気がする。でも、何か問題があって転校して。髪はロングだったはず。

「僕は居ない方が良かったの?」

 そう自問自答を繰り返して眠りについた。


皆さんここまで読んでくれてありがとうございます。

今回で何とか一つの物が終わった気がします。これからが由紀にとっても私にとっても大変な時期になりそうです。

今度の更新はまとめていこうと思ってます。予定変更するかもですけど。

最近自分の書き方という事が分からなくなって、余計謎仕様になるのを防ぐためと、一話の修正を少し行おうと思うからです。

楽しみにしている方や、なんとなく読んでいる方は、次回をしばらくお待ちください!

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