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13話 梅雨の日

中間テストも終わり、六月。

テスト後の解放感も台無しにする梅雨入り。

ちなみにテストは、まあまあの出来だった。


「甘いものを食べに行きましょう。」


キクエがそんなことを言い出した。

バスで少し行ったところに、新しいカフェができたらしい。


「いいよ。じゃあ土曜日いこっか。」


「はい!」


そんなわけで、土曜日。

生憎の雨。

まあ、梅雨だからしょうがない。

キクエと二人、バス停でバスを待つ。

他には誰もいない。

雨は嫌いじゃない。外に出なければ。


「梅雨明け、いつなんだろうね?」


「……。」


「キクエ?」


キクエの反応が鈍い。


「あ、ごめんなさい。なんですか?」


「?どしたの。寒い?」


「いえ、寒くはありませんよ?」


まあ、そうだよな。キクエ長袖だし。


「……。」


「……。」


「あの、アラト君。」


「ん?」


「もうちょっと、こっちに来ません?」


「え?いいけど。なんかあった?」


キクエが俺の腕を引く。


「もう少し。」


「……?」


言われるままに近づく。

傘があるから、そんなに近寄れない。


「……キクエ?」


「はい。」


「なんか近くない?」


「……そうですね。」


「……。」


「……。」


なにこれ。

キクエは俺の腕を掴んだまま、何かを気にしている。


「……バス、遅いね。」


「そうですね。」


そんな会話をしていると、ようやくバスがやってきた。

助かった。

何が助かったのかは、よくわからないけど。


バスに乗る。

ガラガラだ。

運転手さんと、乗客が一人。

一番後ろの窓際に、女性がポツンと座っていた。

赤い傘を持った女の人。


「アラト君。こちらに。」


キクエが前の方の座席を指さす。


「ん?後ろ空いてるよ?」


「ここがいいです。」


「……そう?」


まあ、どこでもいいけど。

二人掛けの座席に並んで座る。


「……。」


「……。」


キクエは何だか落ち着かない。


「キクエ。」


「はい?」


「今日、なんか変じゃない?」


「……そうですか?」


「うん。」


「……。」


「……。」


「雨のせいでしょうか。」


「雨のせい?」


「はい。」


「……そっか。」


雨のせいか。

……雨のせい?

まあ、いいや。


窓の外を眺める。

雨粒がガラスを流れていく。

道路も、建物も、歩いている人も、みんな濡れている。

早く梅雨明けないかな。


「そういえばさ。」


「はい。」


「今日行くカフェ、何が美味しいの?」


「パンケーキだそうです。」


「へえ。」


「季節限定のものもあるみたいですよ。」


「いいねー、楽しみ。」


「はい!」


キクエが笑う。

ようやくいつものキクエだ。

それからしばらく、カフェの話をしていた。


「次、降ります。」


キクエが言う。


「あ、もう?」


降車ボタンを押す。

ピンポーン。

バスが停まった。

席を立ち、何となく後ろを振り返る。


「……あれ?」


一番後ろの座席。

さっきまで女性が座っていた場所。

誰もいない。


「アラト君?」


「ん? ああ、今行く。」


キクエに続いてバスを降りる。

雨は相変わらず降っていた。


「……。」


「どうしました?」


「いや、なんでもない。」


さっきの女の人。

いつ降りたんだろう。

窓の外ばっかり見てたからな。

気づかなかっただけか。

あれ?停車したっけ?


「アラト君。行きましょう。」


「ん。そうだね。」


キクエが傘を開く。

俺も傘を開いた。

さて。

パンケーキ、楽しみだな。

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