95話:魔法使いとの戦い
「アルタロム、そろそろ起きろよ。」
「うぅ……。」
シャカの声が聞こえる。
あれ、いつの間にか寝てた……?
「な、何時間経った!?」
「えっと、五時間くらいか?」
五時間!?
完全に寝過ごした、早くナーヴァを連れて次の階層の攻略に行かないと……
「待てよ、まだ計画も準備もできてねぇだろ。」
「……悪い。」
そうだった、何をやってるんだ俺は。
ナーヴァに注意されて、自分でも反省したばかりだろ。
「ナーヴァは?」
「ん。」
なるほどね、精神統一していると。
だからシャカは妨げにならないよう何も言わず指を差したのか。
「それで、アルタロム。
次の階層はどうやって進む?」
昨日はゲームの電源が急に落ちたみたいに眠ってしまった上に寝過ごしたせいで対策が立てられていない。
こんなこと言い訳にもならないな。
なにかパッと思いついたものでもいい。対策になり得るものを少しでも考えよう。
「四層はカースドレイクが出てくるらしいし、今までと同じようにオイラが前に出るよ。思いついてないんだろ?」
「悪い……。」
不甲斐ない。
結局焦っていただけで失敗ばかり、終いにはリーダーであるのに何の計画も建てられない。
「それじゃあ荷物を確認したら出発しようぜ。」
この感じ、前の世界なら確実に絶対呆れられているよな。
いや、さすがにこれはこの世界でも呆れられるか。
「おい頭巾娘。行くぞ。」
「俺は失礼なやつは嫌いだなぁ。」
「別にお前に嫌われたって構わねぇよ。」
なんかバチバチしてるんだけど……。
やめてくれよ。俺の都合だが、気が重い時に誰かが喧嘩してるのを見ると更に気が滅入る。
「……。」
シャカがこっちを見た?
なんだ?こっちに放り投げてくるつもりか?
「はぁ、ほら。準備できたら早く行くぞ。」
「言われなくても。」
シャカのあの態度、気を使わせたかな。
そんなに表に出してしまっていただろうか、もう少し表情を変えないようにしないと更に気を使わせるな。
「さ、出発するぞ!」
階段を降りながら四層の環境を軽くふりかえっておこうか。
地図を確認すると第四層にはカースドレイクが出現すると書いてある。
カースドレイクはA級の魔物だが、シャカなら問題は無いと思っていたが……
「暗いな。」
一層から三層まで照明になっていた発光石が、この階層にはない。
それに、魔力濃度も高すぎる。
なにか妙な感じがするな。
「ちょっと待ってくれ。確か光球のスクロールがあったはずだから。」
「お、そりゃいいな。」
前に光源のない迷宮には潜ったことがある。万が一を考えて来る前に作っておいて正解だったな。
光球
ハンドボールくらいの大きさの光源が四、五個あれば足元が見えるくらいには照らされるか。
やはりスクロールは一つ分で十分だな。
それよりも問題なのは、壁も見えるということだ。
今までの階層の半分以下、俺たち三人が横並びで歩いけば道が塞がるくらいに狭い。
これだと敵が来た時に広範囲の攻撃を無闇に使えないし、そもそも戦闘するのにも狭すぎて直線的な動きしかできない。
「……っ!なんか来るぞ!」
シャカよりも少し遅れた。
奥からなにか飛んでくる、あれは───火球か?
「シャカ、俺が止める。」
水壁
威力は俺の水壁を貫く程ではないが、直撃を喰らえばまずいな。
それより、魔法を使える相手がいることの方がマズイ。
「ナーヴァ!この先に何がいるか見えるか!?」
「暗すぎてよく見えないけど、人型でボロボロのローブを着てるみたい。」
「それで十分、この敵はレイスだ!」
レイスは魔法を使ってくる霊体の魔物だ。
魔力が多い物理攻撃が効かない霊体と言うだけでなく、この狭い一本道だと魔法を避けるのも困難になる。
今みたいに魔法を放ち続けられるだけで、受ける必要があるこっちは消耗させられ続ける。
これは、あまりに厄介な相手だな。
「四層はカースドレイクが出るって書いてあったろ?」
「……多分だけど、ここは地図に書いてある場所じゃない。」
地図に書いてある場所とはあまりにも環境が違いすぎる。
「このまま進んでいいのか?」
「あぁ、進む。」
「根拠は?」
「勘。」
「よし、十分だな。」
ほんと、シャカは話が早くてありがたい限りだ。
だが、いつまでも水壁を発生させている訳にもいかない。
こっちから攻撃に転じ無ければ……。
「俺が言ってくる。アルタロムは俺の合図で魔法を解け。」
「えっ……あ、そうか。わかった!」
レイスの弱点は物理攻撃が効きにくい分魔法攻撃にめっぽう弱いことだ。
基本的には魔法で相殺されるが、当てることさえ出来ればほぼ勝ちだ。
シャカの剣術を使う戦い方とは相性が悪いと思ったが、シャカの青龍刀は日本とも魔剣だ。
振るだけで魔法が発動する武器なら、接近さえすれば確実に攻撃を当てられる!
「それじゃあ行くぞ、三、二、一。」
水壁 解除!
それと同時に、シャカが物凄い勢いで一気に駆け出した。
それから俺は、魔法を捌きつつ援護に……
”バン” ”バン” ”バン”
いや、捌く必要もなくシャカが全て叩き切ってくれてるわ。
それなら、範囲内に俺は一気に駆け出して行った方がいいな。
「ここまで来りゃ、てめぇは何も出来ねぇだろ?」
シャカが間合いに入った!
でも、そんな大振りだと攻撃され……いや、それが狙いか!
氷柱
来た、魔法を使う魔力の流れ……!
反魔法 蔓の拘束
「っ……!?」
魔物とはいえ、魔法が急に使えなくなれば驚きを隠せないみたいだな。
「これで終わりだよ!」
シャカのあの力強い振り下ろしを喰らえば確実に倒れるだろ。
魔剣でなくても倒せていそうな威力に見える。
「話には聞いていたけど、強いなそれ。」
さすがにナーヴァにも反魔法のことは知らされていたか。
さすがに用心深い……いや、さすがはこんなところに隠れるチキン野郎だ。
「ナイスアシスト!」
「うん。」
シャカが反魔法に合わせられるなら今後レイス相手にはこの戦法を基本にして立ち回るか。
これなら俺の魔力を使わずとも勝てる。
なんなら、影で俺が倒せばいいだけの話だし。
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