94話:進展と焦燥
「おかえり。」
ナーヴァと話しを終えて、みんなの元に戻るとシャカが頬を膨らませてこちらを睨んでいた。
「何話してたんだよ?」
「それを話したら二人で話した意味が無いだろ?」
「ま、そうだよな……。」
納得がいかないのもわかるが、受け入れてもらわないと俺の面目が立たないからな。
釈迦には悪いがここでは受け入れてもらうしかない。
「それと、勝手に決めて悪いとは思うがナーヴァを連れていくことにした。」
「はぁ!?」
本当に悪いと思ってる。
警戒すべき対象をパーティーに入れるというのは俺だけでなくシャカにまで危険を課すことになる。
そもそも、シャカは元々関係ないのに俺が甘えて着いてきてもらっている。
本来俺が何かを言えるような立場ではないのだ。
「……そいつ連れていくのはいいけどさ、こいつらになんて言うんだよ。」
「え、いいのか?」
「パーティーメンバーの引き抜きは問題になることが多いだろ?
問題にならないようにしてくれればオイラは別に構わねぇよ。」
相変わらずシャカの器は広いな。
パーティーを組んでからずっと、俺は釈迦に助けられてばかりだ。
「置き手紙と一緒に食料といくらか金を置いておくつもりだ。」
「それならいいか。」
この世界ではよくある話だ。
本来なら俺にとって多少抵抗のあることだけど、この提案はナーヴァからしてきた。
「俺は最近入っただけの新入りだから、あいつらにとって金が手に入るなら切り捨てることに何の葛藤もないさ。」と。
俺からすれば、このパーティーがそんな薄情なことをするとは思えない……。
いや、そういえば蝙蝠の巣を調べる時にナーヴァを押し付けてきていたな。
「何はともあれ、ナーヴァからは何か言いたいことはあるか?」
「改めて自己紹介するくらいかね?
俺の名前はナーヴァ、弓を使うから後衛に回して。」
「……シャカだ。とりあえず敵はオイラがぶっ飛ばすからお前は何もしなくてもいいよ。」
「りょーかーい。」
シャカはまだナーヴァが入ってきたことに違和感を感じてそうだな。
でも、俺と組んだ時にはそんなことはなかったのに一体なんでだ……?
「行くぞアルタロム、案内してくれ。」
「あ、うん。」
まぁ、そんなことを今更気にしても仕方がないか。
人には得意不得意があるわけだし、シャカにだって関わりにくい人はいるのだろう。
今はそれよりも先行して水中に潜らねば。
この先の道を知っているのは俺しかいないんだ。
「先に言っておくが、階段に続く穴は暗くて狭い上岩が鋭い。手や足、体を擦れば怪我をするから気をつけて入って行ってくれ。」
「わかった。」
「了解。」
「行こう。」
入水前にはああいったが、水中では二人が怪我をしないように細心の注意を払う必要がある。
深くまで潜るだけなら問題は無いが最後のこの穴は一人ずつしか入って行けない。
居ないとは思うが穴の中に魔物が襲ってきたら先頭では対処しきれないからな、二人を先に入らせて俺は最後に向かおう。
「ぷはっ。」
怪我をする様子も、魔物が襲ってくることもなく無事に階段のある場所までつけたな。
「まさか日に二回も着替えることになるなんてな。」
「俺は三度目だよ。」
後に来るやつには悪いが、魔物が入ってこないように最初と同じくこの扉は閉めておこう。
さて、シャカの方はどうなっているのか……?
「シャカ、そんな端の方で蹲ってどうした?」
「な、なんでもない。着替える。」
なんで涙目なんだよ……。
水が目に染みたのかな。
「この水ベタベタして脱ぎにくいんだよな……。」
「お前は着替えるならもう少し隠れるとか何とかしてくれ。」
待て、ベタベタだと?
……大丈夫かなんて気にしても仕方ないか。
中ったらその時はその時だ。
ええいままよ。
「……しょっぱ。」
というか塩辛い。
本来真水であるはずの湖にシーサーペントがいたことに違和感を感じてはいたけど、これ海水だな。
さすがの迷宮でも中に海ができるなんてこと聞いたことがない。
もしかすると、外から海水が流れ込んできたのかもしれないな。
……そうなるとこの下は沈んでいないか心配になってきたかも。
「どうしたアルタロム?」
「ん?いや、なんでもないよ。」
ナーヴァのおかげで気がついたが、この下が浸水してなんてさすがに気にしすぎだろう。
だって、この下から感じる白の魔力が更に濃くなっている。
本人が居ないと説明がつかないほどに。
「二人とも、着替え終わったらすぐに行くぞ。」
近づいてきた。
ようやくだ、たった半年、されど半年。
この半年はとてつもなく長かった。
ようやく迎えに行ける。
ようやくこの指のお礼ができる。
「少し休んでってもええんとちゃうか?」
「……は?」
このハリネズミ何言ってんだ?
俺の服の中に隠れてるだけの、昨日の朝偶然会っただけの畜生風情が……
「俺も賛成。
水中って結構体力もってかれるんだって感じだよ?」
「お前はあんなこと言ってたのに、悠長なんだな。」
「慌ててもいいことないからね。
近づいてるのは俺もわかってるけど、あんまり焦らないでよ。」
焦ってるか、そりゃ焦りもする。
だけど……
「そうだな、ごめん。今日はここで休もう。
俺も、色々ありすぎて疲れた。」
確かに、冷静ではいられていなかったかもしれない。
あいつと戦うならもっと冷静に、なおかつ体力を温存した状態でないといけない。
ここで休むのは最善の手なのかも。
「明日、目を覚ましたらすぐに出発する。
よろしく頼む。」
「了解。」
「シャカは、聞こえたか?」
「聞こえた。わかったよ。」
三人に増えて、動き方はそれなりに変わるはずだ。
それは、二人が起きるまでには考えておかないとな……。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回から第四層?です。
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