84話:雑談
見たところ氷が侵食していたのはシャカが大剣を振り下ろした場所から、大体半径五メートルくらい。
氷が侵食していない場所に行くと急に気温が変わるな。
境界を越えると極端に気温が変わる。
魔力で迷宮の領域に干渉したのかと思ってたけど、これ迷宮の領域を自分の領域に無理やり置き換えたんだ。
だから境界の内側にある氷が迷宮の気温で溶けないのか。
「シャカ、さっきの剣について話を聞いてもいいか?」
「別にいいけど、なんで?」
「こんなもの見せられたら誰だって気になるだろう?」
いつの間にかあの剣が消えているんだよな。
それはそうとして、シャカはこの魔法を使う時に詠唱をしていなかった。
それに、どれだけ巨大な剣だったとしてもただの斬撃強化でゴーレムの体を切断することも難しいはずだ。
巨体と氷の能力ということで一体何が素材なのかは検討が着いているが、本人の口から聞いておきたい。
「こんなの滅多に見ないし、そうだよな。
さっき言ってたドラゴンの牙から作ったんだよ。スノードラゴンのな。」
「能力を聞いてもいいか?」
「触れたものを凍らせて、凍った物の強度を無視して切断できる。」
予想通りだけど、なんかとんでもねぇこと言ってる。
「その武器を作ったのは誰だ?」
少なくても俺は今までドラゴンの素材から作った武器なんてみたことがない。
そもそもドラゴンの素材を加工することが難しいからな。
「ビギンズに常駐してた鍛冶師だよ。」
ビギンズって、確か北東にある街だよな。
フィーアの件があって最近はあまり顔を見せていなかったんだっけ。
スノードラゴンが野生で出現していたり、ドラゴンの素材を加工できる鍛冶師がいたり、ちょっと様子を見に行かないとダメだな。
「あれ、でもスノードラゴンの牙って二本あるよな。
シャカが普段使っているのが二本で、さらに一本。数が合わなくないか?」
「普段使ってる二本は一本を分割したもんなんだよ。
あんな巨大な剣を普段使いできるわけないし、使いやすい大きさにするなら二振りに分けた方がちょうど良かったんだよ。」
つまり牙の一本はそのまま剣に、もう一本の牙は二振りの剣に分割して今は三振りの剣を持っているという状態か。
「だけど、どうやってあんな重そうな剣を持ち運んでいるんだ?
双剣だって普段は持ってないのに急に空中に現れるだろ?」
「これだよ。」
綺麗なペンダントだな。
この中心の宝石はなんだ?透明に見えるほど澄んでいるが、青みがかっている。
こんなペンダントを持っていたのか。
服の下に入れていたせいで気づかなかった。
「ちょっと離れててくれ。」
「わかった。」
あのペンダントに何かあるんだろうな。
収納か転移の魔法か?
どちらにしても、あれだけの質量の移動となると相当の魔力を消費すると思うが……。
「ほっ!」
おぉ、大剣が出てきた。
しかし、そもそも魔力を消費したようには見えないな。
どこから魔力を供給してきているんだ?
「収納の魔法かな。
ドラゴンを倒した時に巣に転がってたんだ。
多分、他の冒険者の持ち物だったんだろうな。」
「それを持って来ちゃったのか? 」
「もちろん遺品はギルドに提出した。
だけど、「使われた方が死んじゃった冒険者も、この魔道具も本望だ。」って言われて、ギルドマスターから色々貰っちゃったんだよな。」
色々って、これ以外にもまだあるのか。
「シャカ、そのペンダントは重くないか?」
「全然!持ってみるか?」
「いいのか?」
「ここじゃ持ち逃げもできねぇからな。」
引き輪の留め具を取って差し出して来たが、やっぱり軽々と持ってる。
というか、実際に持っても軽い。
「中の物はどうやって取り出すんだ?」
「取り出したい物をイメージするだけだぞ。」
イメージ……シャカが普段持っている青龍刀でいいか。
「あ、気をつけろ!?」
「え……ヒッ!?」
突然空中に現れてな、落ちてきた剣が足に刺さるかと思った……。
シャカはよくこんな物を当然のように扱えるな。
「二本とも落としてごめん。」
「大丈夫。
てか、お前が怪我しなくてよかったよ。」
「しまう時はどうやって?」
「ペンダントの中に入れ!って念じると入るぞ。」
入れ!ねぇ……。
本当に入ったし。
なるほど、魔力消費は収納する時に発生するのか。
でも、この性能に対して思っていたより魔力消費は少ないんだな。
「その大剣重くないか?」
「重いよ?持ってみるか?」
「うん。よっ……!?」
馬鹿なんじゃねぇの!?
え、重。
落とさないように持ってるのが精一杯で持ち上げるのも、振り回すなんてことも出来ねぇ。
「シャカはよくこんなのを実践で使えるな。」
「あ?普通は無理無理。さっきみたいなデカブツに思いっきり振り下ろすくらいしかできねぇよ。」
あ、だからこの剣を取り出すとに腕を振り上げてたんだ。
「てか、それもしまってみろよ。」
「はぁ?えっと……入れ!」
「ははっ!口で言わなくてもいいだろ!」
そんな笑わなくてもいいじゃないか……。
こっちはそれだけ必死だったんだぞ。
それにしても、入ったら一気に軽くなった。
ペンダントの中に入ったら重量は関係なくなるんだな。
「シャカ、この中に他には何が入っているんだ?」
「え?んー、服とか前に買い込んだ食料とか……かな。」
中身は色々ごちゃごちゃしていそうだな。
「前にっていつ?」
「ビギンズにいた時だから、二週間くらい前?」
「腐ってないか?」
「このペンダントに入れておくと腐らねぇし、スープとかも取り出した時に暖かいまま飲えるぞ?」
つまり、収納したものはこの中では時間が止まっているってことね。
色々と入れてるってことは、入れる物の数には上限が無さそうだ。
これは完全にゲームのアイテムボックスだな。
「そろそろ返してもらってもいいか?」
「あぁ、色々とありがとう。」
というか、本当に色々と教えてくれたな。
この子はここまで自分の手の内を晒していいのだろうか。
手の内を明かしても俺を余裕で倒せるからか、それとも信頼してくれているからか。
……後者だといいな。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
もしよろしければブックマークか評価、またはその両方をしていただけると幸いです。
あと、正直でいいので感想を書いていただけると励みになるのでよろしくお願いしま




