83話:厄災の人形兵
第二階層に降りてから魔力がさらに濃くなった。
魔力濃度の変動が激しすぎる。
ということは白がいる階層まではそこまで距離はないのかも。
「なんだこの魔力……気持ち悪い。」
シャカは降りてきたばかりでキツそうだ、慣れるまでゆっくり行くべきだな。
「シャカ、少しペースを落とそう。」
「うん……。」
下層に降りたら都度休みながら歩いておくことにしよう。
二層にさえ降りて来れれば、五層までの道は地図のおかげでわかっているから次の階層まではすぐに行けるはずだ。
「おい、アルタロム。なんか足元が光ってないか?」
「え?」
言われてみれば眩しいな、でもなんで?
これって魔法陣だよな……
「シャカ!すぐに階段を上がれ!!」
これ、召喚の魔法陣だ。
迷宮に自然生成されないはずなのに。
これは誰かが意図して置いたんだ。
誰が?そんなもん決まってる。
ここでこんな精密な魔法陣を刻める余裕があるのは白しかいない。
何が召喚されるかなんて分からないけど、こんな場所にある召喚魔法陣なんて碌な物が召喚されてこないだろ!
”ゴゴゴゴゴゴ……”
冷たく無機質な岩の巨大な体、ドス黒い魔力に満ちている。
”ディザスターゴーレム”だ。
属性付きのゴーレム種の中で最もランクの高い種類の一種……。
「なんでこんなやつがここに飛んでくるんだよ!!」
ふざけやがってあの野郎!
まだ二階層にたどり着いたばかりだって言うのに、こんなやつと戦ってたら魔力がいくらあっても足りない。
こんな化け物迷宮の守護者として配置されていてもおかしくないぞ。
「アルタロムはここで待ってろ。」
「え、おい待てシャカ!」
なんで突っ込んで行った!?
ただでかいだけじゃない、こいつは白に魔力を与えられた魔物だ。それも大量に。
いくらS級と言ってもあれを単独で倒せるわけが無い。
「よっと!動きが遅いねぇ!」
振り払い攻撃を避けた?
あの図体の岩なんだから遅くて当然だけど、だからといってこうもあっさり成功するはずがない。
「気をつけろ!何かあるぞ!」
「あ?……痛っ!?」
シャカが急に動きを止めた。
外傷はないが、何かされたのか?
「ヴォォォォオオオ!」
うるせぇ……!
「シャカ!上から攻撃来るぞ!」
「応!」
何ださっきの咆哮は?
ただ腕に止まっていたシャカを潰そうとするだけなら咆哮する必要なんてないはずなのに……。
「っ!?うわぁ!!」
何を吐いた?煙か?
「シャカ!大丈夫か!?」
「痛ってぇ……大丈夫!
着地ミスっただけだ!」
怪我は……してなさそうだな、良かった。
ていうか、こいつはやばい。
「踏みつけ!攻撃来るぞ!」
「あぁ!」
足をあげて踏みつけるまでの動作も遅い。
これなら何かあったとしても致命傷を受けずに逃げられるか……?
「あれ……?」
「シャカ?どうした!?」
さっきから動かない……というか、まさかとは思うが動けないのか?
それならこれ以上戦う必要は無い、すぐに影の触手で回収して逃げるべきだ。
「やめろ!!」
「えっ……」
やば、動き止めちゃった……。
影の触手
間に合うか!?いや、間に合えよ!
”ドォォォン”
手応えなし。
ゴーレムの足は無慈悲にもシャカのいた場所を踏み潰した。
「……まだまだぁ!」
「シャカ!!」
良かった無事だった。
って、そうじゃないだろ。
シャカを死なせかけて何やってんだよ。
迷宮に入る前に、あの子は守らなきゃって決意したばかりだろ。
シャカはさっきからゴーレムの攻撃は全て避けて自分は攻撃をしている。
だけど、剣じゃどうしたってゴーレムに対して決定打になる攻撃は繰り出せない。
現にゴーレムにはダメージが入ってない。
これ以上やっても無意味なんだ、すぐに撤退すべきだ。
「っ……!」
なんだ……?
外傷は無いはずだ、なのに物凄く痛そうな顔をしている。
「……呪いか。」
そうだ、こいつはディザスターゴーレムだ。相手を弱化させ、苦痛を与える魔法を使ってくる。
なら原因は……いつそんなの喰らった?
そんなのあの煙以外にないだろ。
もしこの呪いがゴーレムが死なないと解けないものならもう逃げられない。
逃げている間に衰弱するだけだ。
多分今のシャカは力が入らない上に、全身を有刺鉄線で縛り付けられているような痛みが襲っているはずだ。
なら、俺がやるべきだろ!
「……仕方ないかぁ。」
今、シャカが何か言った。
なんて言ったんだ?
なんで剣をしまったんだ?
素手でそんなやつ倒せるわけないだろ。
なんで両腕を掲げている?
ていうか、あの腕何かを掴もうとしている?
「重ぉ!!」
おぉ、でかい。
じゃない。なんだあの大剣はシャカの体長の倍はあるぞ?
「って……はぁ!?」
一体どこからそんなでかい剣を持ち出した!?
いや待てよ、大きさには驚いたが結局は剣じゃないか。ゴーレムに刃物は意味が無いだろ。
そんな剣、当てたとしても硬い岩の体に弾かれて……
「喰らいやがれぇぇぇぇぇ!」
嘘ぉ……豆腐みたいに岩の体が切れて言ってるんだけど。
”ドォォォン”
なんて衝撃だよ。
さっきのゴーレムの踏みつけよりも揺れが激しいぞ。
「冷たっ!?」
急に風が冷たくなった……?
一体何が起こった、 そろそろ目を開けても大丈夫か?
「……なんだこれ。」
大剣が振り下ろされたであろう、シャカの立っていた場所を中心に洞窟が氷に覆われていた。
なんだよこの馬鹿げた威力。
一部とはいえ、たった一人の一度の攻撃で迷宮環境が変わったぞ。
「あ、シャカ!?」
「……あぅ。」
え、倒れた?
あの感じ魔力切れか。
「大丈夫か?」
「大丈夫、この剣燃費悪いから使いたくなかったんだよなぁ。」
そりゃそうだろうな。
「もうなんともないか?」
「魔力切れが面倒だけど。呪いは解けたし、少し休めば動けるよ。」
この威力の攻撃をしてもその程度の魔力消費で済んでることが不思議だ。
「それなら安全なところで休んでいな。
俺は周囲の警戒をしておくよ。」
「あぁ、よろしくぅ。」
この氷は気になる、調べさせてもらおう。
叩いても割れないほど硬いな。
というか、この氷透明すぎるな。不純物が一切と言っていいほど含まれていない。
冷たいから氷とわかるが、そうでなければ水晶のようにも見える。
さて、溶けるのだろうか……?
火球
……やはり溶けないな。
これが氷ではないのか、それともこの氷を作った術式が強力すぎて火球程度では溶けないのか。
ゴーレムの死骸の方は凍ってしまってもう魔物としての魔力が完全に消えている。
これじゃただの氷と同じか。
もし、この魔法の出力をあげたら簡単に一国が潰されそうだな。
……シャカは、仲間に引き入れないとちょっとやばい気がする。
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