81話:タルタロス突入
ハリネズミとシャカのイチャつきを見ながら歩くのは暇だ……。
「ほなな?ワイがあのワン公に何した思う?
この自慢の針を口ん中にぶすり!
ほなら、あのワン公ワイにビビって尻尾巻いて逃げてったわ!」
「確かに、こんな針がぶっ刺さったら逃げ出したくもなるかも。
これは一体何でできてんだ?」
「ワイの自慢の体毛や!」
シャカはハリネズミを相当気に入ったんだろうな、ギルドを出てからずっとこの調子だ。
もうすぐタルタロス突入の受付に着くからしっかりして欲しいんだけどな。
「おっ、受付が見えてきたな。」
「え、もう見えるのか?」
「うん。」
確かにこの方角にあるんだが、それにしてもまだ遠すぎる。
俺には目を凝らしてもまだうっすらとなにかの影があるとしか見えない。
カナメに構っている状態から周囲の異変に気づける視野の広さに驚いたが、この距離の遠視が出来る視力にさらに驚いた。
前者は本人の特性、後者は種族の特徴か。
好奇心と視野の広さの組み合わせは大変なんだよな。
子供とほぼ同じだ。
なんでも興味を持って理解するまで追い求める……よく言えばシャカは研究者気質があるのかもしれないな。
「仰々しいなぁ、タルタロスの入口は街にあるのか。」
「迷宮は街の下にあるからね、街に魔物が出て行かないように守りを固めなきゃいけないからこうなったんだろうね。」
こんなに扉がでかいと防衛が強固になる理由もよくわかる。
俺やシャカの何十倍のデカさの扉をどうやって作ったんだあいつ。
理由なんてどうせ「大きい方がかっこいいでしょ?」とかなんだろうけど、建造方法が分からない。
砂漠の遺跡然り、ドワーフか誰かの協力者がいるのか?
「考えても仕方ないか。」
「何を考えてたんだ? 」
やっべ声に出てた。
「いや、扉がでかい理由を考えててな。分からなかった。
それより早く受付を済ませちゃおう。」
「扉がデカイのは人を呼び込むためだろうな。
迷宮は魔力を補給しないと維持できない。
人や魔物の死骸から魔力を吸収するために目立ったり騙して人を呼び寄せるんだよ。」
何それ初めて聞いた。
「どこでそんな知識を身につけたんだ?」
「親父が旅人でな。時々旅に着いて行って、色々教えてもらったんだ。」
「へぇ、なら親父さんはさぞ博識なんだろうな。」
「……まぁな。」
おっと、この反応は良くない感じだったかもしれない。
悪いこと聞いたかな。
「さ、受付済ませるんだろ?」
「そうだったね、すぐやるよ。」
あれ、そういえば俺たちって正式な手続きを踏んでいないから書類を貰っていないんじゃ……。
あのギルマスに一言くらい言ってから来るべきだっただろうか。
いや、あいつは話をつけておくって言ったし一度話を聞いてみるか。
「あの、受付をお願いしたいんですけど……。」
「アルタロム様ですね、お待ちしておりました。
二名で突入なさるとお伺いしておりますが、事実にお間違いありませんか?」
良かった、書類がなくても入れそうだ。
怪訝そうな顔して事実確認をしてくるのは俺とシャカの様相を見て心配してくれてるんだろうな。
「この迷宮は避難要請は届きません。本当に命を落としかねない場所です。
それでも、行きますか?」
ここまで丁寧に聞いてくれる受付嬢は珍しい。
テキトーに流すのではなく、しっかりと我々を見ているような気がして嬉しくなる。
それでも、俺は行かなきゃいけないんだ。
「行きます。」
「……かしこまりました。
それではご武運をお祈りいたします。」
祈って貰えた直後に扉が開いて明らかにやばい雰囲気が漂う迷宮の中に入った。
「なんて言うか、不気味だな。」
「そうだね、普通の洞窟っていう雰囲気でも無さそうだ。」
満ちている魔力が異様に禍々しい。
やつを知らないシャカには言いようのない不安が付きまとうだけのようだけど、俺は確信できる。
微弱だが、この魔力は間違いなく白の魔力だ。
やつはこの迷宮の最深部に必ず居る。
「……この魔力、この前の遺跡にいたヤツに似てないか?」
「え?」
言われてみれば確かに感じるな。
あの屍喰鬼から感じた魔力と同じってことは、やはりあの屍喰鬼は白が作ったものか。
いや、あの魔力は製作者の魔力の残留というよりも自身が発していた魔力のようにに感じた。
……あぁ、そういう事か。
あの屍喰鬼は先代の魔王様なんだ。
あいつは二つ王の力を持っている。あのどちらかは奪い取ったもののはず。
そして、その死体は屍喰鬼に改造して再利用って……外道すぎる。
先代の王ならあの強さも納得だが、なんだかやるせないな。
「……アルタロム?」
「悪い、ぼーっとしてた。早く行こうか。」
「応!」
今そんなことを考えても憶測でしかないだろ。
あいつに会って直接聞く。前からずっとそう思っているはずだ。
少しの情報で憶測して決めつけるのは俺の悪い癖だ。切り替えないと。
「さて、この迷宮は普通のものじゃない。警戒しながら進むよ。」
「お前がそういうと慎重すぎて進まなそうだが大丈夫か?」
石橋を叩いて何が悪い。
とはいえ猶予があんまりないのも事実だ。シャカには悪いが多少のゴリ押しは覚悟して貰わないとな。
「知っているとは思うが、この迷宮は上層が広く下層に降りるほど狭くなる。」
「知ってるよ。
上の階層は魔物も弱い上に出現頻度が高くない。もしかしたら会わずに済むかもな!」
正解なんだけど、そんな言い方をされるとフラグにしか聞こえないんだよね。
「……やっぱりお出ましだよ。」
「お!一体目は誰かな!?」
”ケイブスライム ”が何匹も出てきた。
こいつらは身の危険を感じると岩みたいに固くなる性質があるんだっけ。
影で一撃だろうけどあまり魔力を使いたくない。
シャカの攻撃で討伐しきれればいいが……。
「スライム……!?
アルタロム、任せた。」
任されました。
シャカはスライムが苦手みたいです。
結局俺が倒すことになるのね、これは先が思いやられるかもしれない。
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