80話:使者
部屋に戻ってきたはいいものの、スクロールを作る前にこのハリネズミをどうにかしないとな。
このままタルタロスに連れていく訳にも行かないし、屋敷に連れて行って諸々が終わってから話を聞くことにしようか。
ケージかなんかあったかな。
「まぁ、最悪瓶か何かに入れておくか。」
「なんか酷いことしようとしてへんか?」
バレた。
野生の勘って言うのかな、何かをする前にバレると物凄い厄介だなぁ。
「仕方ない、強硬手段に出させてもらおう。」
影の触手
「なんや離してや!ワイはまだ死にたない!まだ自己紹介だってしてへんやろ!?」
「アルタロム・ダレス、歳は十七。殺すつもりは無いから安心しろ。」
「ワイの名はカナメや!殺す気ないならどこ行こか……ちゃうねん!ちっとも安心できてへんねん!!」
ノリツッコミしてきた。
というか、こいつやかましいな。
多分大丈夫だとは思うけど……なんか屋敷に送っていいのか不安になってきた。
うっかり口を滑らしてミミ辺りに処刑されないだろうか。
「……はぁ、お前大人しくできるか?」
「できるできる!死なへんならなんぼでも大人しゅうしとくわ!」
仕方ないか、連れて行くつもりはなかったが屋敷において行くといつの間にか死んでそうだ。
ハリネズミ……ハリネズミかぁ。
この大陸で起こっている異常な出来事は、白に言及しないといけないな。
「ロロ。」
「アルタロム様?どう致しましたか?」
「これから現地で組んだメンバーとタルタロスに向かう。あれを用意してくれ。」
「え、僕とじゃないんですか?」
やっべ、思っていたよりショック受けてる。
「ちょっと問題が起こってな、ロロは屋敷を守っておいてくれ。」
「……はい。」
ごめん、ロロ。
お土産しっかり選んで、帰ったらよく撫でてやるから許しておくれ。
「さてと、カナメでいいのかな?これから行くところにはもう一人、一緒に行やつがいるんだけどさ。
顔は決して出さないでくれるか?」
「なんでや?」
「……君はハリネズミだろ?」
「せやで?」
「ハリネズミはこの世界には存在していないんだよ。」
「はい?」
そう、居ないんだよなハリネズミ。
もしかしてあっちから転移してきたのか?って思ったんだけど、
あっちでも喋るハリネズミなんて居ないんだよ。
こっちの魔獣も人間の言葉を真似るやつはいても意味まで理解して喋るヤツはいない。
明らかに異質なんだよこのハリネズミ。
「君はどこから来たか覚えていたりしないの?」
「うーん、それがな?なんも覚えてへんのや。笑えるやろ?」
「笑えねぇよ。」
覚えて居ないというのは怪しいな。
しかし、こいつが嘘を吐いてる様子は無い。
何者かが意図的にやったか、何科に巻き込まれて偶発的に起こったのか、どちらにしろ何かある。
「まぁ、なんだっていいか。
カナメ、お前は俺が守る。だからお前は俺の言うことを聞け。」
「なんやそれ、モラハラ男みたいやんけ。」
「嫌がらせするつもりは無いから安心しろ。」
モラハラ……ね。
こいつの喋り方もあっちの世界の単語が端に見えるんだよな。
こいつの存在がが凶と出るか吉と出るか……。
今は考えても仕方ないか。
先送りにしていることが多すぎるが、仕方ない。
「ロロからの通信が入った。そろそろ昼だしギルドに向かうよ。」
「はいな!」
「ちゃんと大人しくしておけよ?」
”カランカラン”
ギルドに来たものの、シャカはどこにいるかな。
「おーい!アルタロム!」
「お待たせ、準備を終わらせてきた。」
「え、嘘ぉ……マジじゃん。」
昨日と同じ服、というか初めて会った日も同じ服だったな。
「なぁ、シャカってその服しか持ってないのか?」
「この服動きやすいからな!」
色まで同じ服を大量に持ってるって事ね。
チャイナ服……だよな?
カンフー映画とか見るとこういう服の人多いし動きやすいんだろうけど。
「剣を使うのにヒラヒラしていると邪魔にならないのか?」
「ならないぞ?」
ですよね。昨日の戦いぶりを見てたら分かります。
俺なら絶対足が裾に絡まる。
「なんや?あんた不思議な魔力してるな?」
「ちょばか、出てくるな。」
このハリネズミ!いきなり約束破りやがった!
「何こいつ!見たことねぇんだけど!」
「ちょ、気軽に触ってんちゃうで!ワイを触るなら金を取るで!?」
「どうやって喋ってるんだ?鼠……って訳でも無さそうだな?」
すげぇ、興味津々。
やばいな、キリのいいところで回収しないとハリネズミが連れてかれそうな勢いだ。
「やめろや!ハリネズミはひっくり返したらあかんって教われへんかったんか!?
てか、乙女の体をじっくり見んといてや!」
「え、お前雌なの?」
「なんや!?あんさんも知らへんかったんか!?」
ハリネズミの雌雄判別方法なんて知るかよ。
あ、いや聞いたことあるかも……。
「えっと……確か生殖器の位置が違ったような。」
「言わんといて!?」
「あ、ごめん。」
なんでこんなこと知ってるんだっけ。
誰かに聞いたんだよな、誰に……って、あぁ、あいつか。
こっちの世界じゃ知る由もないし、あっちじゃ、ほとんどあいつらとしか話してなかったしな。
「なんでアルタロムは知ってるんだ?」
「いや、何となく。」
「ふーん……。ていうか、雌雄が別れているってことは生殖能力がある訳で、こいつが雌ならこの辺に雄がいるかもしれないな……!」
「はいはい、考察はその辺で。」
回収!回収!
シャカがこのまま続けてたらこいつのペア探しに行きそう。
絶対見つかんねぇし、仮に見つかっても繁殖したらお世話が大変でしょうが!
「……兄ちゃん、失礼なこと考えてへんか?」
「カンガエテナイヨ。」
「取り乱して悪いな。そっか、早くタルタロスに向かわないと行けないもんな!」
「その通り。」
ようやくここまで来たんだ、早くフィーアを助けないと。
そして……あのクズを八つ裂きにしてやらないと。
もちろん。全員が無事に攻略することを目標に!
さぁ、行こう。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
これで一幕は終わりです。さて、これから第二幕。
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