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転生したら魔王が勇者になりました。  作者: よく分からん生命体
二章 勇者学園 第三幕 狐の百合と夕化粧
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67話:人間と魔王

 乾いた風が灰を空に散らせた。

 全身傷だらけで息切れもおさまらない。おまけに両腕は粉砕骨折と来たものだ。満身創痍と言って差し支えないだろう。


「カリスとホースの様子を見に行かないと。」


「おっと、そんなことはさせねぇよ?」


 拘束(バインド)


 痛って!全身が抑えつけられたように動かなくなった。


 (両腕折れてんだぞこっちは!丁重に扱えよ!)


「よぉ、魔王 黒(ノワール)

 さすがにこれ以上死人は出せんのでね。」


 この声は、アーサーか。

 騎士団を引連れてようやくお出ましというわけね。


 俺を拘束したということは、なにか勘違いがありそう。


「これ以上死人を増やすわけないでしょ?こっちは怪我人なんですよ、もっと丁重に扱って下さい。」

「白々しいんだよ。街をめちゃくちゃにしておいて何様だ……魔王様か。」


 なんだそのつまらんボケは。


 いや、ボケ……なのか?

 

 素で言ってるならこいつも相当天然だな。


「街をめちゃくちゃって……確かに魔王の幹部との戦闘で街を巻き込んでしまったけど、破壊活動をしたのは俺じゃない。」

「……まぁ、兎に角だ。お前が魔王であることと、現場であるここにお前がいたことは変わりねぇ。

 それに、魔王の幹部って言ってもそいつの死体がねぇなら誰がお前の言うことを信じるって言うんだよ?」


 滅茶苦茶な言い分だ……。


 と言いたいが、何も知らない人間から見たら全くその通りなんだよな。


 魔王なんて、人の街の中にいるなんて聞いたら何もしていなくても、むしろ街を守ってくれたとしても当事者以外はそんなもの関係なく討伐しろと言われる生物だ。


「アーサー、あんたはこれでいいんだな?」

「上が決めたことだからな。」


 アーサーは俺の存在がどういうものなのか気づいている。

 だけど、こいつは自分でも言う通り国王が決めたことには必ず従う。


 とどのつまり、国王を操る白(ブラン)が俺を殺そうとしているということ……


「国王が死んだ。」

「……は?」


 死んだ?なんでこのタイミングで?

 何がどうなっている?


「あの爆発が起こる直前、国王陛下が急に倒れられた。外傷はなく、心臓麻痺だったそうだよ。

 直前まで元気に話していた国王が心不全なんてありえねぇ。外傷もなく殺せる不思議な能力を持つのはてめぇら魔王くらいだろ?」

「……なら、あんたは今誰の指示に従ってんだよ。」

「七人の老賢者様たちだ。」


 そういう事ね。


 最初から、賢老と白(ブラン)は国王を殺すことが目的だったんだ。


 賢老は国王がいなければ国を支配できるし、白(ブラン)は賢老に恩を売りつつ俺に罪を擦り付けて殺せる。


 単なる白(ブラン)の悪戯だと思ってた。 


 これは、俺が思った以上にドス黒い、国の闇の話だったってことなんだ。


「連行しろ。」

「は、はい!」


 部下が明らかに怯えてんじゃねぇかよ。


 兎にも角にも現状を理解する余裕はなさそうだな。

 どこかで逃げ出せるタイミングは無いものか。


 さすがに両腕が折れて魔力の残っていない状態でアーサーの拘束を解くのは難しいからな。


「ほ、ほら!立て!」

「痛ったいなぁ、両腕折れてんだから腕に触んなよ!!」

「ひぇぇ!?」


 痛ってぇ、腕掴んで持ち上げられた上に突き飛ばしやがった。

 このやろう顔覚えたかんな。


「どけ。」


 なんだこいつ。

 他の団員と同じ制服なのになんだか偉そうなやつだな。


「黙って従え!」


 バキッ


「痛っ……あぁぁぁ!?」


 この野郎!?折れてるって言ってんのに腕目掛けて回し蹴りしてきやがった!!


「お前のせいで……。

 お前のせいで何人死んだと思っている!?

 お前は殺した人を想像しても、まだ"痛い"なんてふざけたことを抜かせるのか!」


 こいつの顔、どっかで見たことあると思ったら……。


 ホムラの攻撃で地面に叩きつけられた時、死んでしまっていた子供とそっくりじゃないか。


 そりゃ、怒るよな。甚振りたくもなるよな。


「痛てぇもんは痛てぇよ。」

「まだ言うか!」

「そこ。その瓦礫の下。」

「……は?」


 具体的な場所なんて覚えてないけど、あの場所の血の飛び散り具合に瓦礫の崩れ方は多分そうだろ。


「探してみろよ。」

「……。」


 死体が確認できたから、あそこには近づかないように戦ってた。

 運が良ければ俺が見つけた時のままだ。


「お前……俺にこんなものを見せてどうする気だ。」

「身体、残っていたのか?

 それなら、ちゃんと弔ってやれ。」

「お前に言われずともそうする!!」


 他に死体を確認できた人はいっぱいいた。

 アーサーが怯えている団員に俺を引き渡したのはそういう事ね。


「ほら、そこのお前。団長様の指示通り俺を連れて行けよ。」


 俺を睨んでいる団員は、この戦いで家族や友人が死んだ者だろう。


 いつ俺を殺すか分からない。そんな奴らだ。


 自分で運ばない理由は事情を知っているからこそ、俺と関わって上のやつらに勘づかれることを恐れているというところか。


 なんだ、こいつはただの操り人形って訳でもなさそうだ。


「そ、それじゃあ、お前を連行する。」

「改めて、腕が折れてるから優しくしてくれよ?」


 さっきは痛みのせいで怒鳴ったのも悪かったな……。

 落ち着いて話せば怯えている団員も冷静になってきた。


 さて、腕が痛いけど、この後どうやって逃げ出そう。

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