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転生したら魔王が勇者になりました。  作者: よく分からん生命体
二章 勇者学園 第三幕 狐の百合と夕化粧
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68話:魔王と呼ばれる英雄の処刑

 アーサーの指示通りに連行されると、なんと!


 処刑代とこんにちは。


 留置とかしねぇのかよ!


 おい待て、よく考えれば街をめちゃくちゃにした魔王なんて回復する前にぶっ殺せって話だけどさ?


 地魔法でこんな大層な処刑台作る暇があったらもっと、その……避難民のケアとかしようぜ!?


「さてと、んじゃ魔王黒(ノワール)。最後になにか言い残すことはあるかい?」

「え、あ、いや……ちょっと待って……。」


 あまりにサクサク行きすぎてちょっと抜け出す算段が整ってないというか。


 だって前回のお話が終わってからまだ二百文字くらいしか経ってないんだよ!?

 ホムラとの戦いは八話くらい使ってたでしょ!?


 もっと猶予をくれよ!


「えっと、じゃあ、処刑を始める……ぞ?」


 俺ここで死ぬわ!

 多分アーサーも何もプラン立ててないよね!?

 その反応はまさかここまでサクサク進むと思ってなかったんだろうね!


 やべぇよ、フェルちゃん俺もすぐそっち行きそうだよ……。


「殺せー!」


 処刑台の下で国民が殺せコールしてる……。

 これが主人公の扱いですか?

 これが所謂やり直し系復讐ラノベの序盤ですか?


 一回転生してきた時点でこんな景色見るとは思わないじゃん。


「なんでみんなお兄ちゃんに酷いこと言うの!」


 子供の声……?

 この声どこかで……というかつい最近聞いた。


「何を言ってんだいボク!

 あいつは街をめちゃくちゃにした悪いやつなんだよ!?」

「違うもん!お兄ちゃんは僕と遊んでくれた優しいお兄ちゃんだもん!」


 あの子は……マロン?

 そんな人混みに一人で反対するようなことを言ったらいくら子供でも危ない!


「アーサー!すぐにあの子を助けろ!」

「あー、そんなことする必要ないと思うぜ?」


 は?どこ見てんだよ……


「よく行ったぞ!勇気ある少年よ!

 この少年の言う通り、その処刑には異議がある!!」

「カリス!?

 おま、なんでこんなとこにいるんだ!重症なんだから病院で寝とけよ!」

「そういう訳にはいかないさ!

 街を救った英雄を殺させる訳ないだろう?」


 助けようとしてくれてるのか?


 その気持ちは嬉しい。だが、あんな過激派の中で反対意見を言うなんて危険すぎる。


 マロン諸共ボコボコにされて……


”英雄って、あいつ何言ってんだ?”

”でもあの人はフォンバーグ家のカリス様だぞ?”


 ざわざわと……空気が変わった?


 魔王だぞ?そんな簡単に判決が揺れるわけがない。


”たしかあの子はドラゴン警報の時にドラゴンを退けたかもしれないって噂になってた子だ。”

”まじかよ、それが本当ならあいつは国を守ってくれたってことか?でも何のために?”


 なんで、みんなそんなことまで知ってんだよ。


「人というのは情報の機微というものに敏感なのだ!

 これは、君の日頃の行いの良さから現れているものなのだよ!」


 あれは、死者を出さないための最前だっただけで、そんな大したことじゃない。


「お兄ちゃん!また一緒に遊ぼー!」


 俺はマロンに対しては何も出来ずにずっと眠ってしまってただけだ。


「とはいえ、これだけではまだ処刑を中止させる程の押しにはならないだろう?」


 カリスはなんでそんな不敵な笑みを浮かべているんだ?


「きゃぁぁぁぁ!?」


 え、何この悲鳴!?


「っと……!」

「クリム?今どこから飛んできた?」


 え、ちょ、下から……?

 てか、髪の毛の色が水色のままなんだけど。


「なっ、あんたはフィーアお嬢様!?」

「止まりなさい、アーサー。」


 アーサーが完全に動きを止めた。

 というか、周りの騎士団員の全員が同時に動きを止めた。


「魔道具よ、彼を癒しなさい。」

「待って、それは王級の生命魔法だ。

 カリスに使ってくれよ、それならあいつの腕だって再生するはずだろ。」

「彼があなたに使って欲しいと言ったんです。」


 え、カリスが?なんで、そんなこと……。


 結晶が砕けて俺の全身の痛みは完全に治まった。

 腕も……もう痛くないな。しっかり指も動く。


「……治りましたね。それでは、失礼します。」

「何が失礼?」


 え、ちょっと待って顔が近い。

 何する気……?


 "チュ……"


 俺のファーストキスは同年代(精神的には二回り以上も歳下)の女の子に唐突に奪われました……。じゃない!


「きゅ、急に何するんだ!?キャー!!」

「こっちまで恥ずかしくなるからあまり騒がないでください!

 問題なく発動していますね?」

「何が発動してるって言うんだよ!?」


 って、痛てて、左腕掴んできて今度は何さ!


「彼と私の左手の指に刻まれたのはどちらかが死ねばもう一方も死ぬ、王の一族に伝わる"番(ツガイ)の呪い"です。

 国王が亡くなられた今、この国に王の血を引く者は私しかいないのです。

 もし、この者を殺そうとするのあれば私を殺そうとすることと同義です。」


 クリムが震えている。

 本当にこの子は無茶ばかりするな、震えるくらいならこんなことしなきゃいいのに。


「思い切ったなぁあんた……。」


 俺もそう思う。

 さすがに処刑台の上でやることじゃねぇ色々と。


「……私は!この国の国王の娘、フィーア・エル・エリュシオンです!

 現時点を持って私をこの国の国王とし、この方を私の……おっ、夫として迎え入れます!!」


 もう滅茶苦茶だよ。


「フィ、フィーア様?さすがにそれは許容しかねるといいますか、国民が許すとは考えられないのですが……。」

「クリム……いや、フィーア?俺もそう思うよ?」

「……わ、私が言ったことが絶対なんです!」


 はい。追加の問題発言いただきました。


 やだよそんな独裁国家。やりたい放題してんじゃないよ。


「フィーア、ダメだよそれは絶対。」

「さ、逆らうつもりですか!?」

「あ、はい。」


 だめだぁ、自分でもこの展開に頭の方が追いついてないように見える。


「落ち着け。」

「はう、コルト……。」

「ホース!よかった、足がちゃんと……って、コルト?え?」


 今ここで新しい情報をぶち込んでくるんじゃねぇよ王女様!!?


「……足はフォンバーグが魔法で繋げてくれた。

 それより、俺の本来の名はコルトという。団長は、わかってくださいますね?」

「おう。師団長の名前を忘れるわけねぇだろ?顔変わった?」


 さっきから新情報のオンパレードで着いて行けん。


「フィーア様、話は私がしますからその者の拘束を解いてやってください。」

「う、うん。」


 これ以上フィーアが喋ると情報がパンクしてしまいそうだから助かる。


「話が脱線していたな。

 まず、この者がドラゴンを討伐した噂を聞いた者!それは事実である!

 そして、今回の件も真犯人は別にいる!

 そんなテロリストから命をかけてこの国を守ってくれたのがこのアルタロムという男だ!

 我々が今生きているのはこの者のおかげと言ってもおかしくはないのだ!」


 揺らいでいる一般市民達に向けた演説としてはそれなりの効果をもたらしてくれるんだろうが……。


「おいコルト?仮にそれが事実ならその証拠はどこにあるんだ?」


 まぁ、そういう返しになってくるよね。

 アーサー君?下手にこっちに合図出してくるなよ、バレるぞ。


 これだけ時間を作ってくれれば影には十分魔力を送れた。


「証拠を出せばいいんだろ?これさ!」


 ドラゴンの頭蓋骨は屋敷に回収してある。

 影移動でそれだけを移動させてくればいい話だ。


「こいつが死んだ年代を調べれば、誰が殺したのかは簡単にわかるはずだ。

 もう一つの証拠は……取ってきてるんだろ?えっと、コルト君?」

「当然だ。」


 やっぱり、フロガの血を採取してきてくれてるね。

 ホムラの魔力が込められた液体爆弾みたいなもんだけど。


「この血はテロリストの物だ。怪しいなら生命魔法で照合してみればいい。」


 最初は無理だったけど、みんなのおかげで逃げずとも真正面から無罪を主張できる!


「そうか、色々と話を聞く必要がありそうだな。」


 途中からはなんだか茶番みたいだったけど、どうにか切り抜けられそうか?


「よし、処刑は一度中断する……」

「だめだよ。そんなことしちゃ。」


 "パリンッ"


 黒い魔力の塊が、ホムラの血が入った小瓶を割った。

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