↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら魔王が勇者になりました。  作者: よく分からん生命体
二章 勇者学園 第三幕 狐の百合と夕化粧
67/126

66話:此岸に花を咲かせる灰吹雪

 俺の殺意に対してフロガは応じ、睨み合った状態で硬直している。


「お前さ、嘘つくの下手なんだよ。」

「あ?嘘なんてついてねぇよ!」


「じゃあ、なんで泣いてんの?」

「泣いてなんかいねぇよ……。」


 フロガがフェルやカリスの話を持ち出してきた時点からなにか違和感があった。


 フロガの話を聞いた瞬間、理性が飛ぶくらい頭に血が登った。

 だけど、フロガの顔を見て冷静になったと同時に思い出した。


 フロガは勝ち負けなんて関係ない。


 自分が負けた相手には教えを乞いて、勝った相手とは共に高め合おうとする。

 フロガに勝ちも負けもした俺だから言える。


 フロガが負かした相手を見下す発言をするわけが無いんだ。


 ならなんでフロガがそんなことを言ったのか。

 今まで本性を隠していた?

 あんな、泣きそうな顔しながら言ってんだ。そんなわけない。



「早くかかってこい。」

「俺からでいいのかよ。」

「どうぞ?」

「……それじゃ遠慮なく。」


 フロガは……殺されようとしている。


「おらぁ!!」


 いつものように繰り出してくる正拳突きはあまりにも威力が籠っていない。


「お前、舐めてんのか?」

「あぁ?……っ!?」


 顔面を殴る動作に気づいても避ける素振りが一切ない。


「この程度なら影を使わなくても勝てるよ。」


 起き上がる動きが遅い。


「悪ぃな、無理やり出てきたから反動で思うように動かねぇんだわ。」


 嘘を重ねるなよ、無理やり出てきた反動とかいう動作じゃない。


 明らかにわざとらしい動きの遅さだ。


「あっそ……。」


 顔面を蹴ったが、鼻血が出て再生しない。


 というか顔面にヒビが入ったな、よく見たら羽も崩れかかっている。

 あぁ、これが本来の反動か。このままなら崩壊して死ぬんだろうな。

 これで死にたがっている理由にも合点がいった。


「もう一回言うぞ?お前さ、舐めてんのか?」

「舐めてなんかいるかよ!魔王様よぉ!?」

「だったら!最期の勝負くらい本気で殺しに来いよ。」


 沈黙……というより、ハッとした感じだな。


「お前、それで本当にいいのかよ。」

「いいも何も、それが結果なら受け入れるさ。

 最悪な状態のお前にはこれくらいの飴がなければフェアじゃないだろ?」


 王の力は殺した相手からは奪い取ることが出来る。

 本来人間がこの力を持つことは出来ないけど、魔人と神獣なら話は別だ。


 今のフロガの身体は精神の半分が神獣である不死鳥(フェニックス)の獣人の物だ。


 フロガが俺を殺せば 影王 はフロガの精神に移動して、かつ王の力があればホムラの魔力を無理やり奪うことも出来る。


 そしたら崩壊も止まるだろうな。


「自分が生きるために友を殺すのは……とか言わねぇよな!?

 お前はフェルを殺してるんだよ!

 カリスやホースを傷つけているんだよ……。

 もう手遅れなんだよ!


 だから、俺は全力のお前を殺してやる。そうでなきゃ気が収まらねぇ!!」


 一息で言うのはキツイな、叫んだだけで息が切れてきやがったよ。


「ははっ!最高の飴だよ魔王様!

 最強に強ぇやつと全力で戦える上、勝てば俺はさらに強くなれるってことじゃねぇかよ!

 絶対に勝たせてもらうぜ!?」

「やれるもんならやってみろ!」


 起き上がり様に飛び上がり、かかと落としを繰り出してきた。この構えは!


 激藤(ゲキトウ)


 地面に突き刺さったかかと落としは街を揺らすほどの威力!

 ようやく……ようやくフロガが全力を出してきた。


「死ぬか生きるかだ、先のことは気にしねぇ!

 こっからはノンストップで飛ばしていくぜぇ!?」


 彼岸(ヒガン)


 でも、どれだけお前の動きを見てきたと思っている?


「そんな攻撃当たるわけが無いだろ!」

「はっ!それじゃあこれならどうする!?

 彼岸・二重咲き(ヒガン・フタエザキ)!!」


 地面を殴りつけて土煙!?


 影の大蜘蛛(シャドースパイダー)


 だが、蜘蛛の八つの目は土煙の動きだけでお前のことを見つけられるんだよ!

 さぁ、来い。八本の足でブツ切りにしてやる!


「うぉらぁ!!」


 "キーンッ"


 なんだ!?肉に当たった感触じゃない、これは金属……


「って、それ壁に埋まった時にどっか行った俺の剣だろ!?」

「手放す方が悪ぃ!」


 さっきから、普通に会話ができない。

 大声で叫びあっているだけだ。


 あんな色んなことがあって、嫌な思いをしたのに。

 なんだろうか、この高揚感は。


 最期かもしれないと覚悟したら人間はハイになるのかもしれない。

 それとも、傷だらけでアドレナリンがドバドバ出ているせいなのかもしれないな。


 どうだっていい。今は……こいつを"全力"で殺すことを考えろ!


 影の触手(シャドーテンタクル)


 よし、掴んだ!

 あとは空に投げ捨てろ!


「うぉぉぉ!?」


 起きてから一切使わなかったせいで半ば自分も存在を忘れかけていたが、俺が無詠唱を使えることはまだ誰にも明かしていない。


 フロガの持っている剣は特殊な素材で出来てる。

 魔力を引き寄せる効果があり、纏った魔力に応じた特性を得る。


 だが、魔力を込めるのにはコツがいる。

 初心者が使おうものなら、ただ雷を引き寄せるだけの避雷針にしかならないんだよ!


 雷王の咆哮(らいおうのほうこう)


 大量の雷がフロガに向かって落ちた。

 これだけの雷が直撃すれば誰だろうと消し炭になるさ!


「お返しするぜ!?」


 帯電してる剣が地面に突き刺さった……ってことは。

 あの野郎!魔力の込め方知ってやがったな!?


 だが好都合!放電される前に魔力を込めればこの剣は帯電したまま俺が使えるんだよ!


「はい。それも読み通りっと。」


 振りかぶったところを、剣の側面を殴ってへし折りやがった!?


「刀じゃねぇんだぞ!?金属の質量を考えろよこの馬鹿!」

「さすがにビリビリすんなぁ。でも、これは避けられっかな?」


 向日葵(ヒマワリ)


 そのままの勢いで顔面に裏回し蹴りだと……


 "パリンッ"


「うわなんだ今の、モフモフ。」


 やばい、当たる直前に何とか影の羊(シャドーシープ) を展開できた。


 てか、モフモフしている影の羊(シャドーシープ)を砕くとかどんな攻撃力してんだよあの脳筋野郎。


 ……今の防御にだいぶ影を使っちゃった。

 魔力で操れる影の量がもうほとんどないや。


 フロガの方もそろそろ腕や足も崩れそうになってる。


「そろそろ決着か?」

「そうだなぁ、そろそろだな。」


 今使える影は触手一本作れるかどうか、全部攻撃に使えば致命打になるか?


 いや、ならない。


 この影の量だと、頭蓋骨を砕いて脳に傷をつけることができるほどの攻撃力はないし、心臓を貫けるかどうかも怪しい。


 武器があればいいんだが、生憎、今へし折られたところだ。


 これは俺の負けってことかな。


 いや、待て。


 これ……ならまだ可能性があるかもしれない。


「やだなぁ、こんな賭けに出るのは。」

「はっ、万事休すってことか?」


「どっちかと言うと、窮鼠猫を噛むってとこかな。

 成功するかは怪しいけど、噛みつかないと成功もしないってこと。」

「はっ!魔王様が窮鼠ねぇ……無様だな!」

「やかましい!」


 勝負は……一瞬。


 両者構えて正面からぶつかった。


 彼岸(ヒガン)


 フロガは案の定一撃必殺の彼岸だよな。

 それを両腕でしっかり受け止める!


「ぐうッ……!」


 筋力が増加した上に気術の乗った一撃、俺の腕がミシミシと音を立てている!

 絶対両腕イッたわこれ。


 しかも、フロガが二重咲きに切り替えれば俺は防御の仕様がなく殺される!


「まじかよ……!?」


 緩んだ!これがラストチャンス!


「いけぇぇ!!」


 気づいた時にはもう遅い!


「ゴフッ……!」


 刺さった瞬間から力が抜けた。

 もう、動けないはずだよな。


「……って、うわぁ!?」


 力尽きてもたれかかってきた。

 そりゃそうか、


 心臓を貫かれたんだ。


「このナイフって?」

「そう。お前のだよ。」


 さっき吹き飛ばされた場所に落ちていた。


 多分、フェルの体が吹き飛んだ時に爆風で飛ばされたんだと思う。


「砕け散ったと思ったんだけどな……。」

「俺も思ったよ。多分、フェルが残してくれたんだろうな。」


 あいつは優秀だから、俺が影を使い果たすことを理解していたんだろう。


 そう……都合よく考えていよう。


 奇しくも、フェルと同じ死に方だな。


「なぁ、前言を撤回させてくれ。」


 ホムラの能力で簡単には死ななくなっているのか。


「フォンバーグは強ぇ、あいつの強さはちゃんと理解してる。弱ぇわけがねぇんだよ。」

「あぁ。」


「それから……フェルのことは謝っても謝りきれねぇなぁ。」

「一生恨んでやるよ。それと、死んだ後フェルに直接謝れ。」

「地獄に行く前に謝れっかなぁ?」

「絶対謝れる。」


 だって、お前を裁けるのはフェル以外に居ないからな。


「地獄って、強ぇ奴らいるかなぁ?」


 こんな時にまで強いやつの話をするなんて呆れたやつだ。


「知らねぇよ。ただホムラはボコボコにしてやれ。」

「応、そうする。」


 あいつは絶対に地獄に落とされるはずだ。

 だから、俺の代わりに地獄の鬼さんにもボコボコにして欲しいものだね。


「ははっ、死ぬ前に夢ができたわ。」

「どんな?」

「お前が影の王ならよ、俺は地獄の王になってやるよ。」

「お前には無理だよ。王になるなら番人を倒さなきゃ。地獄の番人といえば閻魔様だぞ?」


 そう、閻魔様はお前じゃ絶対に勝てないフェルちゃんなんだぞ。


「閻魔がどんなやつか……楽しみだな。」

「……あぁ、楽しみにしておけよ。」


 息を引き取って、完全に崩れ落ちた。

 最期の最期までおかしな奴だったな。


 やっと、全部が終わったのか。たった数時間のはずだったのに、数日も経ったような倦怠感だ。


 ……あれ、灰が目に入ったかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。