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転生したら魔王が勇者になりました。  作者: よく分からん生命体
二章 勇者学園 第一幕 勇者のタマゴ
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35話:全部魔人のせい

 何者かが飛ばした魔力の塊はイフの肩に直撃し、血が飛び散らせた。


「あれれぇ?死んでないの?死んでないねぇ!」


 大して魔力は強くない。だが、イフと同様……いや、それ以上に禍々しい魔力を感じる。


「一旦引く。」


 ザガンの部屋で戦うにはあまりにも狭すぎる。

 イフを抱えて影移動で誰の目にも着かないところに移動する。


「イフ!大丈夫か!?」

「大丈夫……なの。」


 傷が深い。

 魔力の塊がただ直撃したというより、周りの空間ごと抉り取られたような。

 範囲が広すぎて抑えていないと肩ごとイフの腕が千切れてしまいそうだ……。


「逃げないでよぉ!」


 (しつこい!回復する時間くらいよこせ!)


 影の王者(シャドーイーター)


 影をライオンの顔のようにして襲わせた。

 一度噛み付いたら振りほどくのに時間がかかる。

 その間に影移動で転移する。


 転移した先は、屋敷からエリュシオンに向かう際に転移した森だ。


 転移に成功したと言ってもまだ油断はできない。

 まずはイフの傷を再生させなければ。


「ダメなの、再生しないの。」


 傷が治らない、この傷口はただの傷じゃないのか。


「バンバン!

 えへへぇ、僕の魔法はねぇ?治せないんだよぉ?」


 空間を切り裂くように転移してきた魔人が攻撃と同時に声をかけてくる。


 おそらく、今放っている……イフに傷をつけた魔法はこの魔人の"固有魔法"だ。

 あの銃声を真似たような声を出すことが魔法の発動条件。

 当たった箇所を空間属性の魔法で抉り取る。

 さらに魔法の作用は当たった箇所に作用し続けてほかの魔法の効果を妨害する。


 というところか。


 厄介極まりない能力だ。


「こんにちは!僕はバレット!

 君たちはどの魔王の子?まぁどうでもいいけどねぇ!」


 イフの傷を治すためにはこの空間属性を持つ"固有魔法"を解除する必要があるが、頼んだって解除をしてくれるはずはないだろう。



 "魔法陣や魔道具などの例外を除けば、魔法は発動者が死んだ場合解除される。"


 つまり、こいつを殺せばそれで終わる。


 こいつは魔人だ、魔王という単語を出した。

 こいつは魔王 白《ブラン》の駒だ。


 そして、先に攻撃してきたのはこいつだ。俺がこいつに温情を与えてやる必要は無い。


「イフ、痛いだろうが少し待っていてくれるか?」


 影の触手(シャトーテンタクル)


 十本の影でイフの腕押さえて千切れることを防ぐ。

 押さえが利くのは三分と言ったところか……。

 あまり出血させるのも良くない。


「ねぇ!僕と戦う気!?一人で!?」

「何笑っているんだ?

 一分だ。一分で殺してやるよ。」

「っ……!?」


 強い殺意を向けた瞬間、魔人の表情が引き攣った。


 (なんだその表情は?)


 今更後悔したとしても遅い。


 影の狸(シャドーラクーン)


 まずは大量の狸で視界を奪う。


「バンバンバン!」


 魔力の発射口は指か。


 一発当たれば広範囲を空間魔法で抉り取るみたいだな、狸たちの抉れ具合で大体範囲は把握できた。


「見えたァ!バンバン!」


 狸たちの隙間から俺に向かって撃ってくるか。


 反魔法(アンチスペル) 影の狸(シャドーラクーン)


「なんで、なんで出ないのぉ?」


 狸の出現は止まることがない。

 反魔法(アンチスペル)は技術だ。


 "魔法に対する特攻"として作った……な。

 

「お前が魔法を使うために魔力を放出するごとに俺はその魔力を使って魔法を発動することができるんだよ。」

「はぁ!?」


 魔法は魔力の放出、命令通りに放出された魔力が何かしらの効力を発揮するという過程を経由する。

 まさか、放出された魔力の命令を書き換えるなんてことが出来るなんて思ってはいなかったがな。


「ふざけんなぁ!」

「いい加減どこを見ているんだ?俺はお前の後ろにいるんだぞ。」


 動きが止まった。

 まさか、影の狸のせいで視界がなくなっていたとはいえ本当に俺が影移動で後ろに転移していたことに気がついていなかったのか。

 まぁ、気がついているかなんて関係の無い話だがな。


 影の蠍(シャドースコーピオン)


 影で作った針を魔人の首に突き刺した。


「がはっ……!?」


 生命力の高い魔人に対して刺突自体にあまり効果は無い。

 ただし、俺の影を体内に打ち込んだ。

 寄生した生物の魔力を糧に影の動きは活発化し始め、細胞を一つ一つ破壊していく。


「手足の先が痺れてきただろ。肺の細胞が壊死して呼吸ができなくなっているはずだ。」


「なっ、やだ……!死にたく……な……っ……」


 それから十秒足らずで魔人は涙を流して苦しそうにして死んでいった。


 惨たらしいからあんまり使いたくない技だが、証拠を残さずに確実に相手を殺害できる。


「イフ、すぐに治すね。」

「お願いしますなの。」


「大いなる生命の神々よ 崇高なる天命の力を我にお貸しください 全てを解き放ち恵みを与えよ」


 治癒(ヒール)


 上級の回復魔法を使うと、傷は徐々に回復していった。

 良かった。予想通りあの魔人の"固有魔法"は死んだ後は効力を失うみたいだ。


「アルタロムさん、ありがとうなの。」

「交渉を持ちかけた相手を殺されたら困るからね。」


 回復する時も生命魔法は万能というわけじゃない。

 多少の傷なら問題ないが、ここまでの大怪我となると綺麗に治ることなんてないだろうな。


「傷は治せたが、しばらくは安静にしていないと変な形になったりするよ?」

「はいなの。」


 イフの汗がすごい。

 傷の方に集中していたから気が付かなかったが、骨までイっていたんだ、痛みは想像を絶するものだっただろう。

 抉り取られた時よく悲鳴をあげ無かったものだと思う。


「アルタロムさん。

 ちゃんと治りきっているか見てもらってもいいの?」

「あぁ、大丈夫だけ……どわっ!?」

「なにか変なの……です?」

「いや、あのイフさん。傷は大丈夫なんだけど、急に脱がないて貰ってもいいですか?」


 びっくりした……。傷の確認のためとはいえ女の子ってこうも簡単に脱いで恥ずかしくはないのか?


 いや、命が関わっているんだから恥ずかしいとか言っていられないのだろうか。


 それでもせめて何か言ってから……、

 急にそんな事しないで欲しいよ。


「それはフェルに頼んでくれ。

 掴まって。」

「……はいなのです。

 着直すので少し待って欲しいのです。」

「わかったから早く着ろ。」


 そういえば、一度俺の部屋に戻ろうと思っていたが今のうちにフェルに連絡を入れておくとしようか。


「フェル、急で悪いがお前の部屋に転移させてもらってもいいか?」

「構いませんが、どうしましたか?」

「イフをお前に預けたい。

 後で詳しく話すが、客人だ。」

「……かしこまりました。」


 フェルは察したようにそう言った。

 本当に優秀だなあいつは。


「さぁ、今度こそ転移するよ。」

「はいなのです。」


 転移のための接触に、いつも通りイフを腕に掴ませると違和感を感じた。


「なんか、熱くないか?」

「だ、大丈夫なのですっ!」


 顔が紅潮するくらいに体温が上がり、捕まっている状態で伝わるほどに心拍が上昇している。

 あの怪我ならこうなって当然か。


 俺は魔人の死体を担いだ状態でフェルの部屋に影移動した。


「ただいま。」

「ボロボロですね、それが犯人ですか?」

「おそらくな。違くても無理やりそういうことにしてくる。

 それじゃあ、イフの怪我を診てやってくれ。よろしく頼む。」


 いきなりのことなのにフェルは当然のように受け入れてイフの傷の手当の準備をしていた。

 おかげでイフを預けてさっさと俺は騎士団の執務室に影移動できる。


「おつかれちゃん。そろそろ来ると思ったぜ?」


 やっぱりこいつ読んでいた。

 恐らくはザガンが死んだと聞いた時にはもうこうなることは想像ついたのだろう。


「学園の生徒が殺されたって言うのに一切動かないとは、騎士団長様の名声が傷つくんじゃないですか?」

「犯人を捕まえたとなればその名声はさらに高くなるな。」


 気に食わない。

 こっちの嫌味に嫌味で返してきた。


「はぁ、ほら。これが犯人ですよ。」


 魔人の死骸を地面に投げるように捨てる。


「あいあい!サンキュー!」


 俺はこの国で下手なことを出来ないから、こいつに渡して解決してもらうしかない。

 そんなのわかってるのにこいつの手柄になるのも、この態度なのも物凄く腹が立つ。


「それじゃ、これからもよろしく頼むぜ?マオウサマ?」


 今後、もしもこいつを切れと言われたらなんの気兼ねなく首を切り落とせそうだ。

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