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転生したら魔王が勇者になりました。  作者: よく分からん生命体
二章 勇者学園 第一幕 勇者のタマゴ
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36話:休学日

 バレットと名乗っていた魔人をザガンを殺した犯人と断定し、この事件は幕を閉じた。


 翌日以降は授業が再開されることとなったが、勇者学園の生徒は思っていたよりもタフで皆は特に変わりはなかったように見えた。


「次週は勇謝祭が行われる。

 それに備え、各々訓練を怠らぬように。」


 確か勇者学園の全校生徒合同で行われる団体戦。まぁ、所謂《いわゆる》体育祭みたいなものだ。


「なぁアル?」

「フロガ?どうした?」


 恥ずかしそうにモジモジとしている。

 フロガがそれをやるとキモイ。


「いや、聞きてぇことがあるんだけどさ。

 お前フェルに勝ったことあんだろ?」

「まぁ、一応ね。それがどうしたの。」


 まぁ、フロガがこんなこんな風になってるってことは何を言いたいかは想像できる。


「なぁ、フェルに勝つとしたらどうしたらいいかな。」

「無理。諦めろ。」

「そこをどうにかお兄様ァァ!」

「誰がお兄様だ!お前の方が年上なんだから年上らしくしろ!!」


 しかし、フロガがこうやって真正面から戦いについて相談してくるってことはそれなりに悩んでいる感じがする。


「……はぁ、仕方ないな。

 朝の組手だよな?一緒に行って俺も見てやるよ。」

「いいのか!?」


 なんだろう、こうやって見るとロロを思い出す。

 フロガはあの子よりも全然礼儀知らずでウザ絡みしてくるけど。


 あとは予定を変える都合上、後ろにいるフェルにも許可を取っておかないとな。


「そういうことで、俺も明日の朝から参加させてもらうよ。

 ちょうど来週から勇謝祭があるし、その次は定期試験だし。」

「わかりました。よろしくお願いします。」


 急にフェルが背後から現れても最近フロガが驚くことが減った。

 それだけ一緒にいる時間が多いってことなのかな、少しだけ寂しく感じるのは気のせいだろうか。


 翌朝からフロガとフェルの訓練に参加することになってフェルに起こしてもらったのだが……、まさか日が昇る前に始めているとは思わなかった。


「じゃあフェル!今日もよろしくな!」

「よろしくお願いします。」


 最初に俺は二人の組手を見ることになった。さすがのフェルもフロガ相手に本気を出すことは無いと思っているが。


「じゃあはじめ!」


 俺が合図を出すと、フロガが先行した。

 フェルは真正面からその攻撃を受け流して掌打を繰り出したが、フロガも掌打で返して相殺した。


 気術を使用しているようには見えない。

 フロガは飽くまで組手として敢えて本気を出していないように見える。

 フェルもそれに付き合っているようだが、明らかに俺とやっている時よりも本気で戦っている。


 フロガは俺と戦った時よりも目に見えて力をつけている。

 これにあの気術が上乗せされると考えると、俺が本気を出しても下手を打てば苦戦するだろうな。


「おらァ!」


 フェルの表情が曇った。

 受け止められたが、フロガの攻撃がフェルに当たった。


「まだ甘いです!」


 腕で防御していたところ、フェルは瞬時にフロガの腕を掴み、

 掴まった腕からぐるりと体を回され、フロガは地面に倒し込まれた。


「一本!そこまで。」

「くっそ!」


 すごく悔しがっているが、フェルは本気を出していた。

 気術を使わずにこれとなると、フロガは物凄く強くなっている。今の俺は絶対に勝てない。


「よし!じゃあアル!早速戦《や》ろうぜ!?」

「あ、うん……。」


 フェルちゃんの顔に文句を言いたい。

 ニヤついてんじゃねぇよ。


 (悪い。お母ちゃん……俺死んだよ。)


「おっしゃ行くぞぉぉ!」


 実際に腕で攻撃を受けてみるともっと速かった。

 一撃で体がふわっと浮いて地面に倒れ込んだ。

 物凄く痛い。


「お、おいおい?大丈夫かアル?」

「だ、大丈夫……」


 目が回る。

 なんて威力のパンチだ。防御したというのに振動が頭にまで響いてきた。


「ほら、義兄様(おにいさま)は下がっていてください。」

「あぅ……そうさせてもらうよ。」


 フェルの手を借りて端の方に座らせてもらった。


 なんという不甲斐ない姿だろう。


 ……以前から、フェルはフロガと居る時は声のトーンが上がっていた。

 この姿を見れば納得だが、フロガはフェルと渡り合える。それだけでフェルからすれば全力で当たっていける相手だ。

 今までそんなやついなかったもんな。


 今日の二人を見て少しだけ腑に落ちた。


「……。

 フロガ!突っ込みすぎ!もう少し引いてフェルの隙を探れ!

 フェル!お前は受けに徹しすぎだ!もっと自分から攻めてみろ!」


 この二人を見ていると、あいつらを思い出して余計なことをしてしまいそうだ。


 二人のことを見ていたらクリムが話しかけてきた。


「凄いですね……。」

「うん、凄いよね。」


 しかし急に来たなクリムさん。


「おはよう、朝早くからどうしましたか?」

「ホースと一緒に訓練するつもりできたのですが、あの二人を見ていると自信がなくなってしまいます。」


 物凄く共感できる。

 あいつらを見ていると俺はあいつらに勝てるのか不安に駆られる時がある。


「……ホースと一緒と言っていましたが、ホースはどこに?」

「まだ来ません。勇謝祭のことを考えるとどうも落ち着かなくて、先に来てしまったのです。」

「なるほど、それじゃあ、あいつらみたいにとは言いませんが、俺がお付き合いしましょうか?」

「いいんですか?それではよろしくお願いします。」


 この子も凄い精神力だと思う。俺のことを魔王と知ってなお普通に接してきている。


 ホースとは普段から一緒にいることが多いが、この二人はどういう関係なのか……。

 まぁ普通に考えれば王女様とその付き人ってところだろうな。


「それでは行きます。」

「そちらから好きに打ち込んできてください。」


 この子の剣術は正直に言うと物凄く弱い。

 剣術に自信が無いと言っているイフですら筋力で押し勝つくらいの勝ち筋があるのに比べてこの子は。


「踏み込みが弱いですね。もっと思いきって踏み込んでいいですよ?」

「でも、怪我をしてしまいそうで……。」


 王女様なんて激しい運動なんてあんまりしてなかっただろうし、木の棒振り回している子供よりも動き方を知らなさそうだ。

 どうやって説明したものか。


「クリムはダンスの経験はありますか?」

「え?はい。多少嗜む程度ですが。」

「それでは剣を持ったまま踊って貰えますか?」

「え!?」


 まぁ、そんな発想は一切なかっただろうな。


「一からやろうとしても難しいですから、できるものと関連付けてやって見ると意外と成功するんですよ?」

「そう……なのですね。わかりました、やってみます!」


 前世で入社したての時に教えられた事だ。

 俺は習得できたが、つまりやり方を教えて貰えないということで大概のやつができないのである。


 でも今回は習得できるという確信がある。

 それは何故か……。


「それでは……はい!」


 俺が手拍子を始めるとクリムはそれは見事な舞を踊り始めた。

 足運び、手の角度、多分物凄く練習して習得したんだろう。全てが美しかった。


 そして……


「すごい、ちゃんと剣を振れていますよ。」

「え!?」


 俺が言ったら止めてしまったが、あれだけの修練度があれば必要な時に踊りを再開できるだろう。


「本当ですか……?」

「本当ですとも!疑うならば実際に俺に打ち込んできますか?」

「いえそれは……」


 まぁ、半信半疑の状態でそんなこと言われてもって感じだよな。


「この国の王宮に伝わっている舞踊は戦場で戦っていた勇者の剣術を元にした武舞(ぶぶ)なんです。

 だから、貴女が踊りを踊る要領で剣を振れば十分に戦えると思いますよ?」


 初耳って顔だな。

 実は俺もエルから又聞きしているのだ。元々この話を知っていたのは父みたいだし、百何十年と前の話なんだろう。


「あの、アルタロム様。

 良ければ私にこの剣術の稽古をつけてくれませんか?」

「是非教えさせていただきますね。」


 多少興味がある。

 それに、王宮に伝わっている話とか色々知らないことを教えて欲しいし、恩を売っておいて損は無いだろう。

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