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転生したら魔王が勇者になりました。  作者: よく分からん生命体
二章 勇者学園 第一幕 勇者のタマゴ
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33話:騎士団長の威厳

 一体何が目的なのか、この男は気配が読めない。一切の敵意がないのにフェルの警戒が解かないのはそういうことだ。


「一方的に昔話をしてたんじゃおじさんみたいだしな。

 ま、これでも食って楽しく話そうぜ。」


 饅頭やら煎餅を差し出してきた。

 珍しいな、この世界でこういうお菓子はあんまり出回っていないのに。


 (なんで騎士団の執務室にそんなもんがあるんだ?)


 フェルにアイコンタクトを取るが、毒はないようだ。

 と言うか、引きちぎれんばかりに尻尾を振っている。そうだよな、和菓子好きだからな。


「ありがたくいただきますね。」

「い、いただきます。」


 俺が言うとフェルが恥ずかしそうに手を出し始めた。

 その後に緑茶が出てきた時のフェルの表情は見たことがないくらいに子供らしかった。


「美味いか?」

「はい、美味しいです。」


 声のトーンは落ち着いているのに尻尾を隠しきれていませんよフェルさん。


「それで、先程仰っていた知り合いとはエル・ダレス 、俺たちの母のことですね?」

「君は話が早くて助かるねえ。」


 エルは父と結婚する前はアーサーと共にこの国の勇者として務めていた。

 つまりエルとアーサーは元同僚ということになるのだ。


「いや、ダレスって聞いた時は驚いたよ。

 それにアルタロムの顔が母ちゃんそっくりだったからね、すぐにピンと来た。」


 エルの話を聞けるのは貴重だ。

 エルはあまり自分や父の話をしたがらない。

 

 こういった場面でしか得られない情報は多いはず。

 アーサーには悪いと思うが、色々と詮索させてもらおう。


「あの、騎士団に務めていた頃の母はどういった人だったんですか?」

「とにかく冷たい……。いや、あんまり人と関わろうとしていなかったっていうのが正しいのか。」


 そんな時期があったのか、今のエルからは想像もつかないな。


「あの時の騎士団はみんな必死でな。魔王からの侵略がすごくて、勇者ももっといたのにみんな殺されちまって。」

「魔王って、一人だけだったんですか?」

「そう。見た目に反して化け物みたいに強かった。」


 勇者をそんなに殺すなんて言うやつは想像できる。

 父が咎めていたのはあいつだったのか。


「今、あいつは元気しているか?」

「え、はい!明るくて元気があって、すごく優しい母です。」

「へぇ、前のあいつとは 全然違うな!」


 やっぱりそういう印象なんだね。


「ところでよぉ?あいつ、なんで結婚したんだ?」

「え?」


 急に空気が変わった。


「勇者だからな、あいつが結婚できる相手なんてこの国にはいなかった。

 それに、今あいつはどこにいる。この大陸で雷の精霊の魔力に反応がねぇ。

 そして、お前はなんでそんな魔力を持っているんだ?」


 気づいていたな。


「いいや、なんでもクソもねぇ、こりゃ魔王の魔力だ。

 お前はエルにそっくりだし、魔王にしちゃ弱い。

 言えよ、お前の親父は魔王なんだろ?エルはこの国を裏切ったのか?」


 物凄い威圧感だ。気がついた時、フェルの態度が急変した。

 動けない。圧倒的な実力の差を感じさせられる。


「分かりません。」


 打ち止めだ。すぐにフェルと一緒に屋敷に戻る。

 ロロとララにも連絡を入れてすぐに撤退させる。


「そっか、わかんねぇか。」


 そんなことできるのか?

 この男の前でそんなこと出来るわけが無い。


「なんだ、ガキにもやっぱ話してねぇか。」


 (威圧感が消えた……?)


 一体なんなんだ。

 何を考えているんだこいつは。


「安心しろよ、ここは盗聴されたりする心配はねぇ。

 これからも問題なく学園生活は送れるはずだぜ?」

「な、なんで?」

「なんでだ?俺はエルのことを聞きたかった。

 でも、知らねぇならいいさ。」


 何が目的なんだこいつは。


「レッサードラゴンをぶっ殺せるようなやつと街中で事を構えるつもりはねぇ。」

「いや、いやいや!

 そんなことありえないでしょ!?

 なんで魔王って気づいているのに殺さない!何が目的だ!?」


 国に言われたのか、それともただ単に遊んでいるだけなのか。

 分からない、この男の考えていることが一切見えてこない。


「俺は別にあの白いのはともかく、他の魔王がどうとか関係ねぇんだわ。

 お前が魔王ならそれでもいい。何もしねぇなら敵じゃねぇし、敵じゃねぇやつを殺すなんてしねぇ。

 それより、義妹(いもうと)のことをちゃんと見てやれ。兄貴なんだろ?」


 フェルは、固まって動けなくなってしまっていた。

 威圧されて動けなくなるようなやつじゃない、これは無属性の魔法だ。


 (触れることなく相手に影響を及ぼすなんて……。)


 いや、油断させられたな。

 そのせいで簡単に魔法が効くようにさせられた。


「まぁ、今回お前たちを呼んだのは忠告ってところだな。

 この国に何かをしようって言うなら、俺がお前たちを殺す。

 でも、知り合いの家族を殺させるようなことにはさせないでくれってことさ。」


 この言葉は本心か、それとも嘘なのか、俺には分からない。


 だけど、今は本心であることを願う。


「俺たちは最初からこの国に敵対するつもりは無い。

 俺達も同じ、何も無ければそれがいい。」

「そっか。まぁ、今はお互いそういうことで話は終わりだな。

 お前は思っていたより大人みたいで助かったぜ。」


 アーサーとの話しで、理解した……いや、理解させられたことがある。

 俺たちはこいつには敵対してはいけない。

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