30話:忠実なる従者達
※この話は十話が初登場の、ロロの視点です。
僕はアルタロム様の執事だ。
今日はアルタロム様に何をして差し上げよう。
約一か月前までそんなことを考えながら過ごしていました。
「ロロ?どこに行ったの?」
「はいエル様。お呼びでしょうか?」
「アルから連絡が入ったよ!ロロに話があるって!」
僕は急いで駆け出した。
アルタロム様が僕を呼んでくれた、すぐに応じなければいけない。
「うわぁ!?」
なにか足に引っかかって転んだ。
ここに引っかかるものなんてない。
こんなことをするのは"ララ"しかいない。
「ロロ、廊下は走らないで。」
「あのねララ、だからと言って箒を足にひっかけたら危ないじゃないか!?」
僕を拾ってから数年後にアルタロム様が連れ帰ってきた泥棒猫だ。
マンティコアだからといって、相変わらず尻尾の針が危なっかしい。
「アルタロム様からの連絡が嬉しいのはわかったけど、エル様を置いて一人で駆け出してはいけないでしょう?」
「うっ、それは……」
「もう、エル様は私が連れてくるから貴方は先にアルタロム様の方に向かって。」
僕の方が先輩なのに、いつもタメ口で説教してくる。
通信水晶のある部屋に入ると、推奨がキラキラと光を発していてアルタロム様の匂いを強く感じる。
「ロロ?元気にしているか?」
「元気です!」
アルタロム様が僕の体調に気を使ってくださった。
光栄すぎて尻尾を振るのが抑えられない。
「元気そうだね。ロロに頼みたいことがあるんだけどいいかな?」
「もちろんですおまかせください!」
アルタロム様の頼みとあらばどんなものでも引き受けて完璧に熟して見せよう。
「エリュシオン王国の王宮内部に潜入して内部情報を調べてきてくれないか?」
「もちろんです!」
「それじゃあ、迎えに行くよ。
すぐに出発する準備を整えてくれ。」
「かしこまりました!」
アルタロム様に会える!アルタロム様に会える!(以下省略)
「ララと二人でやってきてもらいたいから、ララにもそう伝えて置いて欲しい。」
「……アルタロム様、もう一度お聞きしてもよろしいですか?」
「え、ララと二人で行ってきて欲しいって言ったんだけど……。」
あの泥棒猫と一緒に行ったら絶対に邪魔をされる。
アルタロム様には申し訳ないが、風邪をひいたと言ってあの泥棒猫は後で縛って置いて行こう。
「あ、ララは……」
「是非行かせて頂きます。」
びっくりした、にゅっと現れた。
匂いどうなってんだ、なんでこいつからはお日様の匂いしかしないんだ。
そのせいで後ろにいても気づかない。
「ララか!じゃあ二人にお願いするね。
成功して帰ったらご褒美を用意しておくね!」
そう言ってアルタロム様は通信を切ってしまわれた。
「フッ……。」
こいつ、鼻で笑った。
勝ち誇ったような顔して……、アルタロム様に期待してもらってズルい。
アルタロム様に期待してもらうのは僕だけでいいのに。
「ガルルルルル……」
「シャァ!!」
(なんだ?威嚇してきて?僕とやろうって言うのかこいつ!
今からでもぐるぐる巻きにして部屋に放り込んでやる!)
「コラ二人とも!喧嘩しないの!」
エル様に怒られてしまった……。
エル様は怒ると怖い。いつもこいつのせいで怒られるんだ。
「あなたのせいで怒られてしまいました……。」
小声で文句言って来てる。
なんて図太い精神してるんだ。
「コラ!聞いてるの?ロロ!」
怖い。
なんで僕だけ……。
(笑いやがってこいつ!)
「ララも、あんまりロロにちょっかいかけないの!」
怒られてやんの、自業自得だ。
エル様は怒ると怖いけどいつも僕たちのことを見てくれていて、ナナやフェル姉が尊敬しているのもすごくわかる。
「もう、アルが迎えに来るんでしょ?
二人とも早く準備しな。」
エル様の許しが出たらすぐに準備だ。
ララには絶対に負けない。ララよりも早く準備してアルタロム様を迎え入れるんだ!
「ただいま。って、ロロどうしたの?」
負けた……。
ギリギリで負けた。僕の方がアルタロム様のことを尊敬しているのに……。
「私より準備が遅れて落ち込んでいるのでございます。」
「余計なこと言わないでよ!」
恥をかいた。これじゃあアルタロム様に失望されてしまう。
さっき言っていた任務も下ろされてしまうんじゃないだろうか。怖い……。
「ロロ、お前は少しくらい遅くても俺のことを出迎えてくれたじゃないか。
立派だよ、偉いよ!」
あ、そうだ。アルタロム様はそんな事をする方じゃない。
こうやって暖かく、頭を撫でてくれるじゃないか。
「むぅ……」
ララが嫉妬して頬を膨らませてる。
(羨ましいだろう?アルタロム様はこんな僕にも優しいのさ!)
「ララは先に準備してきてくれたんだろ?
ララも偉いな!」
(なんだよ撫でられて喉鳴らしちゃって。
まだ撫でられ足りないし、羨ましいじゃないか。)
アルタロム様はみんなに優しいお方だから仕方ない。ララにもアルタロム様の寵愛を受けさせてあげてもいいだろう。
「二人ともいいね?今回の任務は重大なものだ。この先の未来が二人に懸かっていると言っても過言じゃない。
その分危険も大きくなる。それでもやってくれるかな?」
「やります!」
「やらせていただきます。」
僕たちがそう返すとアルタロム様は優しく笑って僕たちのことを撫でてくれた。
「本当にいい子達だ。帰ってきたら好きなご褒美をあげよう。」
(ご褒美!)
「何がいいかは帰ってくるまでに決めておくといい。
それじゃあお母さん、また行ってくるね。」
「行ってらっしゃい!
ロロにララ?喧嘩しちゃダメだからね!」
エル様はそう言って僕たちを見送ってくださった。
アルタロム様の"影移動"で僕たちは王宮の庭園の中に転移した。
みんな寝静まるような時間帯で看守もウトウトしている。
「俺は寮に戻る。何かあったらすぐに知らせろ。
それじゃあ二人ともあとは任せたよ。」
アルタロム様は行ってしまわれた。最後に、アルタロム様が僕に伝えたことは「ララを守れ」と「人を殺すな。ただし、"殺される前に殺れ。"」だ。
あぁ、そうだ。
ここは屋敷の外だ。
命を懸けてアルタロム様の命令を実行せよ。




