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転生したら魔王が勇者になりました。  作者: よく分からん生命体
二章 勇者学園 第一幕 勇者のタマゴ
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30話:口の悪い兄妹

 海底遺跡の迷宮ダンジョンは俺とクリムの二人で攻略したことになった。

 イフが迷宮ダンジョンに落ちた後のことを覚えていなかったのが幸いして思っていたよりも簡単に誤魔化すことができた。


 そして、現在俺はフェルにあの事を報告しなければいけない状況で胃が痛いのです。


「アルタロム様?こんな時間にどうしましたか?」

「えっと、急なことで悪いとは思ってるんだけど……」


 通信水晶のフェルが応答しても言い出しずらくてどもってしまう。


 フェルちゃんも なんだこいつ みたいな反応しているよ……。


 隠していても仕方がない!言ってしまえ!ええいままよ!


「あの、クリムさんに俺が魔王であることがバレました。」


 水晶の奥から正にどんがらがっしゃんというお手本のような音が聞こえてきた。


 相当慌てている。


 そりゃそうだ、洒落になるような話じゃない。下手をすれば俺もフェルも騎士団に掴まってしまいかねないからな。


「何をやっているんですか!?」

「ごめんなさい。」


 経緯を話すと説教された。


「あのですねアルタロム様!貴方は甘すぎます!」

「やっぱり?」

「ふざけていると舌を引き抜くぞ。」


 うん。俺の義妹(いもうと)すごく怖い!さすが前職閻魔様!貫禄が違いますもん……。


「あの、本当はバラすつもりなんてなかったんだよ……?

 あれは不可抗力と言うかなんというか……」

「眠らせればよかったでしょう。」


 ご最も!

 なんということでしょうそんな発想に至りませんでした!


「王宮の調査には誰を向かわせるのですか?」

「あぁ、それはロロとララの二人に任せたよ。」

「……そうですか。」


 なんだろう、フェルの目がまるで馬鹿を見る目なんだけど。

 いや、確かに馬鹿のことはしましたけどその後にだって色々と挽回したよ?


「私はクリムさんの様子を監視しておきます。」

「一応俺の魔法は彼女の影に仕込んでおいたけど。」

「それだけでは不安なので。」


 フェルちゃんには抵抗できたことはない。


 こいつは昔から優秀だからな、こいつがやろうとしていることに口を出す必要も無いか。


 まぁ、俺のせいなんだけど……。


「間抜けな義兄(あに)を持つと苦労しますね。」

「ぐうの音も出ません。」



 翌朝、クリムから俺に声をかけてきた。


「おはようございます、アルタロムさん。

 昨日はこちらを貸していただきありがとうございました。」


 朝早くから洗濯されたブレザーを返しに来たのか、律儀な子だ。


「クリムさん。本日の授業は私と回りませんか?」

「わっ、フェルさん?いいですよ。」


 フェルちゃん、本当いつも後ろからにゅっと現れるのやめた方がいいと思うよ。


 そういえばこいつ屋敷でもやってたっけ、癖なのかな。怖いからやめて欲しい。


「おはよぉアル。」

「おはよう。いつも通り眠そうだね。」


 そういえばフロガもよく後ろから首に腕を回してくる。

 慣れてきたけど、最初の時はすごく痛かったのを覚えている。


「今日は訓練場にフェルが来なくってなぁ。

 気がついたら寝る前にジェストが来てたわ。」

「今日はって、毎日行っているみたいに言うんだな。」

「あ?だって毎日来てんだもん。」


 初耳だぞフェルちゃん?

 驚いた。何、一体全体どうして毎朝フロガの居る訓練場なんかに?


「毎日組手に付き合ってくれてよぉ。

 でも一回も勝てたことねぇんだよな、すげぇ強えよ。」


 そりゃぁフェルなら手加減していてもフロガには勝てるだろうさ。


「でも昨日一本取れたんだよ!」

「なんだと!?」

「今日は勝ってやろうって思ったのに……。」


 フェルちゃんは調子が悪かったのかな?

 いや、手を抜きすぎたんだきっと、そうに違いない。うん。


「アルタロムさん?」

「イフ?おはよう、どうしたの?」


 もじもじとしてどうしたのだろうか。せっかちなフロガくんはガンを飛ばすんじゃありません。


「その、昨日は何も出来なくてごめんなさいなのです。」

「大丈夫だよ、イフが無事ならそれでいいさ。」


 正直あの状況は眠ってくれていた方が良かったからな。


「ほら、早く行かないと授業に遅れるよ?」

「……はいなのです!」


 あ、やっべ、自分から腕を差し出してしまった……。

 いや、普段からくっつかれているせいでそれが当たり前になっていたと言うかなんというか……


「やっぱアルも満更でもねぇんじゃねぇの?」

「あんまりからかうと口縫い付けるぞ。」

「お前も怖ぇこと言うな……。」


 小学生じゃないんだから変なことを言わないで欲しい。


「フロガさん、お前もってことはフェルちゃんも怖いのです?」

「まぁな、兄妹揃って口が悪いみたいだなぁ。」

「本人の前でそれ言うか?」

「ははっ!別にいいじゃねぇかよ!隠してる方が気持ち悪ぃだろ!」


 フロガのこういう、馬鹿正直な面は嫌いになれないな。

 まぁ、ズケズケと人の地雷を踏み抜いたり色々思うところはあるけど。


「誰が口の悪い兄妹なんですか?」

「うわフェル!?」


 おっとフェルちゃん、監視はどうしたと言うのだろうか。

 いや、彼女の監視は俺の魔法だけでいい。

 フェルが楽しそうなところを見たのはいつぶりだろうか。


「ほ、ほら!授業に遅れちまうよ!早く行こうぜ!」

「話は終わっていません。待ちなさい!」


 最近ずっと気を張っているようだったから、久しぶりにあんな様子のフェルを見られて安心した。

 フロガは……多分近いうちにフェルに滅多打ちにされるだろうな。

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