17話:初めての授業
知らない天井だ。
なんてふざけている場合ではない。早く準備して共有部屋に向かわないと遅刻する。
屋敷でフェルがやってくれることに慣れてしまって準備に時間がかかってしまう。
こんなこと日本にいた時は毎日当たり前にやっていたはずなのに……やっぱり人は甘やかされるべきではないな。
「おはようございます、義兄様。」
「おはよう……。」
共有部屋に出ると、既にフェルとフォンバーグの二人が居た。
「朝からだらしないな、眠れていないのか?」
「そうですね、環境が変わってまだ慣れてないみたいです。」
フォンバーグから話しかけてきた。
フォンバーグはきちっとしている。貴族なのにしっかりしていて立派なものだ。
いや、これは偏見か?
その後も着々と人数が集まってきて、すぐに始業予定時間となった。
「よく眠れたか。」
先生が入ってきた。
あれは、昨日入学試験の監督をしていた先生だな。
「私は ジェスト・ランゼル 。
不服だが、本日より貴様らの担任として配属された。」
不服なんだ……。
「出席を取ろうと思えば、早速遅刻している生徒がいる。」
誰か?
そんなの考えるよりも前に浮かんでくる。
「ふわぁ、もうみんな集まってんのか?」
「フロガ 貴様は減点だ。」
「はぁ!?」
遅刻してきた生徒は言わずもがなフロガだ。初日から何をやっているんだ。
(あんまり文句を言っているとさらに減点されちゃいますよフロガくん。)
「全員揃ったところで始めよう。」
勇者学園ではどんな授業があるのかとか、ちゃんとした説明はまだされていない。HRがあるとそういった説明をしてくれると期待してしまう。
「……早速だが、貴様らはどこまでやれるかな?」
先生が不敵な笑みを浮かべた後、手を叩いて俺とフロガとフォンバーグの三人は森の中に転移させられた。
「はぁ!? ここどこだよ!?」
本当にいつも騒がしいなコイツは。
「この魔力の流れは……迷宮か。」
急に迷宮に飛ばすなんて、酷いもんだ。
「これは、授業の一環ってことでいいんですかね。」
「それが妥当だろうな。」
ですよね。
「私がこの愚か者と一緒に転移させられていることは不快だがな。」
おい、あんまり喧嘩になるようなことを言うんじゃないよ。
「まぁ、フォンバーグの実力を鑑みて他の班と力関係が均等になるように組まれたんでしょうね。」
「そうか、そうかもしれないな。」
あら嬉しそう。褒められ慣れてないのかな。
「なぁなぁ!」
「うるさい!なんだと言うのだ!」
君の声も十分大きいけどね。
フロガが慌てているということは何か起こっているんだろう。
「でっけぇ緑のミミズ!」
(それ魔物でしょ!?)
フロガの言う通り緑色をした巨大なミミズのような魔物がこちらに向かって来ている。
「フロガ しゃがんで!
炎の神よ 我の命に応じ力をお貸しください」
火球
命中したはいいが黒い煙が上がってしまって様子が見えない。
「倒しきれたか!?」
それフラグってやつですよね!?
「やってねぇよ!足!足食われてっから!!」
物凄く焦ったフロガの声が森中に響き渡った。
煙が晴れる頃にはフロガの足は脹脛くらいまで食べられていた。
「水を司る神よ 私の命に応じ 雄大なる力をお貸しください」
水刃
フォンバーグの水刃で魔物はぶつ切りにされ、フロガの足は唾液まみれになっただけで済んだ。
「うぇ、気持ち悪ぃ……」
「はしゃいでるからだよ。」
「お前だってさっき魔法効いてなかったじゃねぇかよ。」
「なんのことかな。」
そう言う聞きたくないことは惚けるためにあるのさ。
「ダレス、まずは互いに何ができるのか共有しておきたい。」
あ、そっか。二人は一回戦っているから何となく戦闘スタイルはわかっているが俺のは知らないんだ。
フロガには卑怯な手で勝ったしな……。
「そうですね、共有しておきましょうか。
僕は雷魔法が得意ですね。全属性使用できます。
剣術はそれなりには使えますが多分フォンバーグには勝てません。」
「そうか、ならば私が前に出よう。
私は見ての通り水属性の魔法を得意としている。
剣術も貴族として当然心得ている。」
そうですよね。
貴族は上級階級に行くにつれて家庭教師をつけている家庭が多くなるらしい。
フォンバーグ家は貴族の中でもそれは上ですから使えますよね。助かります。
「フロガは?やっぱり気と拳法かな?」
「あ?そう!
俺は魔法はからきしだけど腕っぷしなら誰にも負けねぇ自信があるぜ!」
うん、それは俺たち二人とも痛いほどわかってるよ。
「なら、君が前に出ろ。私はアルタロムを守ろう。」
「了解しました。フロガに任せてもいい?」
「おう!」
俺は魔術で期待されている。
フォンバーグは希望通りに得意な事を選ばせてくれるリーダー気質があるな。
「それじゃあ、すぐ守護者のいる部屋に向かおうぜ!」
「あ、待て先行しすぎるな!」
「平気平気!」
ああいうこと言うと失敗するような気がするんだよな。
「は……?」
「あっ……」
また同じ魔物に捕まっているじゃねぇか!
今度はもっと強力な魔法で倒しきらないと。
「またかよぉ!」
ダメだ、フロガが振り回されてて下手に打つと魔法がフロガに当たる。
「私が倒すから生命魔法の準備をしておいてくれ。」
あらかっこいい。
「水を司る神よ 私の命に応じ 雄大なる力をお貸しください」
水刃
さっきも見たなこの展開。
短時間に全く同じことが起こって、フロガは今度はもっと唾液の着いた部分が増えた。
舐めてんのかこいつ。
「生命の神よ 我の命に応じ力をお貸しください」
治癒
「悪ぃな!」
「悪いと思ってないでしょ。
次に同じことあったら治さないから。」
「悪いそれはマジで勘弁だわ。」
ガチトーンですね。
さすがにミミズに食べられるのはもう嫌だろうね。てかあれミミズなんだろうか。
「あれだけ目立つ フォレストワーム に捕食されることの方が珍しい。
阿呆は好かれるようだな。」
「なんだと?」
この感じは喧嘩になるのだろうか、この班ちょっと嫌かもしれない。
「……そうだな。気をつける。」
良かった、喧嘩にはならなそうで一安心だ。
「フロガって以外に素直だよね。フォンバーグもそう思いませんか?」
「愚直すぎるがな。」
え、ツンデレか?
この二人は案外相性がいいのかも知れない。
まぁ、出来ればもう二度とこの組み合わせと一緒にはなりたくないけれど。
「はい、治ったよ。」
「サンキュー! じゃあ、気をつけて進んでいきますか!」
最初から注意して前に進んでほしかったものだ。




