18話:迷宮攻略
俺とフロガとフォンバーグの三人は転移させられた迷宮の攻略のため守護者のいる部屋を目指していた。
「ほら!そっち行ったぞ!」
ちょこまかと動き回る小さい影はホーンラビットだ。
ホーンラビットの群れと遭遇して、そのうちの一匹が俺に襲いかかってきた。
「雷の神よ 我の命に応じ力をお貸しください」
雷撃
雷を発生させて相手を痺れさせる程度の魔法だが、俺が倒す必要は無い。
「よくやった。あとは私に任せろ。」
動きを止めさえすれば確実にフォンバーグが倒してくれる。
フロガの援護はしなくてもいいのかって?
大丈夫。あいつホーンラビットが突進すると逆にホーンラビットの角が折れるくらいに硬いから。
「フロガの体って一体どうなっているんでしょうね。」
「鍛錬は一人前なのだろうな。」
そんな会話をしていたらフロガも群れの討伐に成功したみたいだ。
「アル!ハンバーグ! この兎って食ったら美味いのかなぁ!?」
「無礼でなければ尊敬していたかもしれん。」
最もだと思う。
あいつは礼儀を母親の腹の中に置いてきたのではないだろうか。
「生で食べたらお腹壊すよ。」
「生じゃ食わねぇよ!」
しばらく迷宮の中を歩いてはいるが一行に守護者の部屋を見つけることが出来ていない。
この迷宮思っていたよりも広いぞ。
よくもこんな所に転移させてくれたなあの先公。
「なぁ!あれじゃねぇか!?」
「え、どれ?」
フロガの声に反応し、指を差す方に注目すると木に扉が着いている場所があった。
「たしかに、これは明らかに変だね。」
「一体どの扉が正解なのか分かれば話は早いのがな。」
ここは森のような迷宮で木がいっぱい生えているわけだが、ここら一体はその木全部に扉が着いている。
仮にこの中に守護者のいる部屋があったとして、どれなんだろうねぇ!?
「全部開けていこうぜ!」
「それしかないのかなぁ……。」
結局他の案を思いつかず、俺たちは一つ一つ扉を開いて確認していった。
当然ハズレの扉の中には魔物が待ち構えているわけで、いちいち討伐しないといけないから時間と体力を多く使うこととなる。
「おらぁ……えちょっ待って!?」
「なにやってんのフロガ!スライムには物理攻撃は効かないよ!!」
この世界のスライムは結構危険だ。
ひんやりするし見た目はプルプルで可愛くて、しっかり餌を与えれば襲われる危険はないためペットとして飼われたりすることもあるが。
野生のスライムはとにかく飢えているため、容赦なく人間を捕食する。
しかも相手の大きさに合わせてでかくなる性質があるから人間どころか最悪ドラゴンすら一呑みにする化け物である。
「ダレス、雷魔法だ。」
「え、でもそんなことしたらフロガも巻き込んでしまいますよ……?」
「構わん。スライムに捕食されて死ぬよりはマシだろう。」
なんかおっかないこと言っているよ。
たしかにスライムの弱点は凍らせるか雷属性の魔法で攻撃するか……だ。
フロガごと凍らせるよりは、多少痺れる方がいいか。
「フロガ、我慢してね。
雷の神よ 我の命に応じ力をお貸しください」
雷撃
下級の雷魔法でもスライムは食らってしまえば分裂して逃げようとする。
分裂したスライムから黒焦げになったフロガが開放された。
「俺を殺す気か……?」
「そんなつもりはないよ。」
「嘘つけ!そんな威力じゃなかったぞ!?」
仕方ないだろ、スライムの粘液にまみれて電気の通りが良くなっていたんだ。
むしろ死なない程度に加減する方が難しいんだからな。
「ふざけている場合じゃない!来るぞ!」
フロガが死んでいないということは、魔法の威力は最低だったわけで、それじゃあスライムも倒せないですよね。
「フロガ下がってこい!」
「おう!」
さっきはフロガが居たから本気では打てなかった。
だけど、人質がいなくなったということは、本気で打てるようになったということだ。
「雷を司る神よ 我の命に応じ 尊大なる力をお貸しください」
雷球
複数の球状の雷をスライムに発射させると、次々とスライムは分裂してビー玉くらいのサイズにまで小さくなった。
「水の神よ 我の命に応じ力をお貸しください」
凍結
分裂したスライムはフォンバーグが凍らせてくれる。
「さっきはよくもやってくれたな!」
それをフロガが割ってスライムの討伐は終わりだ。
「お疲れ様でした。」
「さっきの魔法、大量に魔力を使っただろう。一度休憩するか?」
「大丈夫、まだやれますよ?」
仲間の心配をできる、いいリーダーだ。前世ではこんな上司が欲しかった。
「アルはそんなタマじゃないだろ。」
「貴様には聞いていない 凍結」
「うわ冷てぇ!?魔法解けお前!」
フォンバーグがフロガに向かって凍結の魔法を使った。
「粘液を固めてやっているんだ、我慢しろ。」
「スライムの粘液は放置しているとどんどん体や服を溶かしちゃうからね、我慢しな。」
スライムの粘液は服を溶かすのだ。
前にそんな事例があると聞いて興味を持ってしまったのは仕方ないだろう?
残念だがどの事例も男のものだったけど。
……というか、フロガが震えている?
ホーンラビットの角が折れるんだ、冷たいだろうが震えるほど寒いなんてことは無いと思うけど。
「もしかして、スライムが怖かったり?」
「寒ぃだけだ。アル、それ以上言ったらこの氷口ん中突っ込むぞ。」
凍ったスライムを持って何やら恐ろしいことを言ってる。
これ以上触れるのはやめよう。
しかし、こんな奴にも苦手なものがあるんだな。
粘液の凍結が終わると俺とフォンバーグでフロガの服を叩いて凍った粘液を割って落としていった。
「痛ぇよ!なんか力強くねぇか!?」
「気のせいだろう。」
フォンバーグさん、なんかその拳は恨みが乗っていないでしょうか?
「さぁ行こうぜ!」
フロガのことを叩き終えると、やる気に満ちたフロガが制止も聞かず次の扉を開いた時は驚いた。
何にって……隣に居たフォンバーグの顔に。
次のコボルトの群れの討伐が終わった瞬間、俺とフォンバーグの二人でフロガを取り押さえてぐるぐる巻きにした。
これ以上無駄な戦いはしたくない。
「扉はまだいっぱいありますね……。」
「こんな数を一つ一つ調べていたらキリがないだろうな。」
ここに来てまた行き詰った。思ったより一つの扉に時間をかけなければいけない。
これは授業の一環だ。あまり時間をかければ減点される可能性すら見えてくる。
「もしかしたらここの扉全部が罠なのかもしれませんね。」
「なんだと?」
「前にそんな迷宮があると聞いたことがあります。ちょっと周りを見て回ってきます。」
これ以上は時間をかけたくはないからな、守護者の魔力を感知して部屋を発見するべきだ。
そのためにはあの魔法を使うしかない。
そして、あの魔法を使うなら俺が一人になる必要がある。
「うわぁ!」
なんだ?転んだ。何かに躓いた……というより足がなにかに刺さった?
「ダレス!?」
「あ……フォンバーグ!こっちに来てください!」
「どうした?」
土や葉っぱに紛れて地面から何かが出ている。そのなにかは角張ってて穴が空いている。
まるで何かの取っ手みたいだ。
「やっぱり、下層に繋がる扉です。」
感知しなくてもわかる。
下層から流れてくるこの魔力の密度は、間違いなくこの迷宮の守護者だ。




