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転生したら魔王が勇者になりました。  作者: よく分からん生命体
二章 勇者学園 第一幕 勇者のタマゴ
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16話:決闘

 フロガとフォンバーグが床に刻まれた魔法陣の上に立つと、魔法陣が発光した。


「これで結界が張られたよ!

 二人とも、騎士の精神を忘れず皆の手本になるように頼むよ!

 それじゃあ、決闘……始め!」


 フィンガ決闘の合図を出した直後、先に仕掛けたのはフォンバーグだった。


「大いなる水の神々よ 雄大なる海の力を私にお貸しください 全てを解き放ち押し流せ」

 

 水圧(アクアフォース)


 上級の詠唱の後に剣の切先から光線銃のような細い水流がフロガを襲った。

 フロガは紙一重で避けてはいるが、ウォータージェットみたいなものだ。直撃したらひとたまりもないだろう。


「チッ…… 大いなる水の神々よ 雄大な海の力を我にお貸しください 全てを解き放ち押し流せ」


 大波(アクアウェーブ)


 フォンバーグは舌打ちをした後、魔法を切りかえた。

 フォンバーグの剣の先から放出されていた細い水流が大量の水を放出するものに変わった。


 結界の効果で一定以上の範囲からこちらに流れてこない。ドーム状に水は溜まっていき、すぐに水位が高くなってしまって結界の八割ぐらいが水に埋まった。


「これで君は私に攻撃できないだろう?」


 よくわかっている。


 拳法使いは踏ん張りの利かない水中ではなにもできない。フォンバーグも足がつかず、鰐みたいに浮かんで顔を出しているだけだ。


「ぷはっ……これがどうしたんだよ。」


 フロガがようやく水面に顔を出した。


「さっきの試験からして君は大した魔法は使えないと見えた。

 拳法も使えない水中ならば僕の方が有利だということさ!」

「あのな……甘ぇんだよ貴族さんよぉ。」


 息を思い切り吸うと、フロガは一気に水底にまで潜って見せた。


「何をしようが無意味だ!

 水の神よ 我の命に応じ力をお貸しください」


 氷塊(アイスブロック)


 フォンバーグは氷の塊を作り出してフロガが水面に上がってくるのを待った。

 フロガは水中で体を屈めると、沈んで水底にゆっくりと足をつけた。


 次の瞬間、床が大きく揺れた。


「水の外に出ちまえばいいだけだろぉ!?」


 正に規格外と言うに相応しい。


 フロガは水底を一蹴りしただけで水面を突き抜け、天井まで飛び上がっていた。


 フォンバーグも呆気にとられながら作り出した氷の塊をフロガに向かって打ち放とうとした。


 しかし、それでは遅かった。


 フロガの足が天井に着くと、天井に穴を開けるほど強く踏み込んだ。


「 激藤(ゲキトウ) !!」


 フロガは空中で一回転しながらフォンバーグの後頭部に踵落としを直撃させ、水面に大きな波を作り出した。


 多分、俺が食らった 彼岸(ヒガン) とやらと同じくらいの威力があっただろう。

 フォンバーグの頭は無事だろうか。


「そこまで!勝者 フロガ!」


 フォンバーグが無抵抗で浮かんで来たことで勝敗を決し、フロガの勝利で決闘は終わった。


 勝敗が決まると結界の中にあった氷は溶け、水は流れるようにどこかに行ってしまった。


「あの水ってどうなっているんですか?」

「あれはエリュシオンの近くにある森に転移されているんだよ!」


 なるほど、実態化した水や岩は森に転移させることで対処している……。

 

 (あれ、それ不法投棄と言うやつでは……?)


 ゴミでは無いし、いいのか。


「っ……、一体どうなっているんだ。」


 ぶっ倒れていたフォンバーグが目を覚ました。

 後頭部はたんこぶもできていないようだし、説明された通り決闘が終われば生命魔法で治癒されるようだ。


「君の負けさ、惜しかったね。」


 フィンがそう言うとフォンバーグは悔しそうに床を見つめていた。


「お疲れ。」


 するとフロガがフォンバーグに手を伸ばして握手を求めた。

 さすがに、背負い投げはしないよな?


「……屈辱だな。」


 フォンバーグはそう言いながらもフロガの手を取って立ち上がった。


「今回は油断したが、次は決して負けないぞ。」

「おう、望むところだ!」


 フォンバーグのフロガを侮っていた様子はなくなり、感じ取ったのかフロガは楽しそうだ。


「二人とも素晴らしかったよ!

 フォンバーグの作戦は素晴らしいものだった!

 フロガのあの攻撃力は恐ろしさまで感じたね!」


 フィンが締めに入ると、フロガとフォンバーグを集団に戻して話を始めた。


「さっきの魔法は上級魔法だったよね!

 結界はそんな上級魔法を受けても傷一つつかなかった!

 だから安心してこの訓練場を使ってね!」


 そう言ってフィンは話を区切り、その日は解散となった。


 外を見ると日が暮れ始めていて、夕陽が寮の外にある花壇の花を淡くて温かい光で照らしていた。


「アル!」

「ぐぇ!?」


 フロガが後ろからラリアットを繰り出して来て俺は前方に吹っ飛ばされた。


「痛いんだけど!?」

「すまんすまん!それにしてもお前はよく飛ぶよなぁ!」


 やかましい。


「飯行こうぜ!生徒ならいつでも食えるって言ってたよな!」

「……いいけど。答えを聞く前に引っ張っていくのは止めてくれないかな!」


 ニッコニコで無視してんじゃねぇよ!


「フェルも行くぞぉ!」

「え、私は……」


 偶然通り掛かったフェルも巻き込まれ、俺とフェルはフロガに引っ張られて食堂に向かった。


「おばちゃん!

 なんか作ってくれるか!?」

「おや、元気だねぇ!

 あいよ!ちょっと待ってておくれ!」


 この寮母さんは、まんま気のいいお母ちゃんって感じがするな。


「お待たせ!」


 今注文したよね。提供までが速い。


 屋敷よりも具が少し多いシチューと白パンが並んでいる。

 この世界に来てから見慣れた食卓風景だけど、慣れてしまえばこの食卓はキラキラしたものに見える。


 味は物凄く美味しかった。屋敷ではフェルが料理を担当してくれていたが、負けずとも劣らない。


 プロにも負けてないって家のメイド……いや、俺の義妹(いもうと)はどれだけ優秀なのだろうか。


 皆食事を終えてすぐに自分の部屋に向かってしまった。

 俺も食べ終えて向かおうと思ったのだが、そういえば部屋にはどうやって向かえばいいんだろうか。


「おや、困ってんのかい!」

「うわびっくりした!?」


 さっき食堂にいた寮母さんが急に声をかけてきた。

 

 (背後に急に現れた……?)


「びっくりさせちまったか!こりゃ悪かったねぇ!」


 豪快な人だ、常に笑顔で喋ってて嫌な気持ちにならない。


「えっと、すみません。自分の部屋にどうやって向かえばいいかわからなくなってしまって。」

「あぁ、部屋にはこの先に行くと全員の共有部屋があるから!そこにある扉に貰った鍵を挿すといい!」

「そうなんですね、ありがとうございます。」


 寮母さんは笑ってその場を後にした。他にも迷子になっている生徒はいないか探しに行ったのだろうか。


 寮母さんに言われた通りに廊下を歩いていくと、開けた部屋に着いた。


「ここが共有部屋……ねぇ。」


 共有部屋と言われていた部屋には扉が二つと、大机と椅子が九つ端に並べて設置されているだけの簡素な部屋だった。


 みんなで好きな家具を置けって言うことなのだろうか。


 この扉はどちらを使うのか決まっているのだろうか。


「……男?」


 片方の扉の縁に男と掘られている。これ、男女ってことかな。じゃあ俺は右側の男と書かれている扉に入ればいいということだろう。


 扉に鍵を挿すと扉の先には立派な家具付の部屋が広がっていた。


 四、五畳くらいだろうか、クローゼットにベッドの隣にはニーホールデスクと木製のイスがあるだけか。


 なんにせよ今日は疲れたし荷解きは明日にしてさっさと寝よう。

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