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114話:黒ずくめの不審者

 就任式のあの日に出会った不審者。

 黒ずくめの彼は私のことを抱いていた。


「……。」


 不快そうに私の顔を見つめた後、すぐにそっと地面に降ろされた。


「どうしてお前がこんなところに出しゃばってくるのかな?

 変わってるのは知ってるけど、僕の邪魔をしないでくれる?」


 魔王は苛立っている様子で黒ずくめの不審者に言った。

 顔見知りのようで、それはつまりこの不審者も魔人側の関係者ということだ。


「邪魔などしてはいない。俺は因果を正しているだけだ。」

「それが邪魔だって言ってんの!

 意味わかんないこと言ってないで今すぐ僕の領地から出て行ってくれないかなぁ!?」


 確かに、この不審者の言うことは意味不明だ。

 それはそうと……


「この国は貴様の領地ではない!」


「人間のメスのくせに僕らの会話に『口を挟むな!』」


 魔王が言葉を放つと、一瞬言葉が詰まった。


「な、何が起こった?」


 詰まった声を出しながら自身の体の異常を確認する。


「は……?なんで“言霊“が発動しない?」

 

 何故か私の姿を見て困惑する魔王を他所に、魔王の真上の天井の影から黒い柘榴が幾つも降ってきた。

 

 反魔法(アンチスペル) 陰の種子(シェイドシード) 


 落下する黒い柘榴は外から差し込む日に当たると同時に突如として弾けた。


 “バンッ“


「痛っ!?」


 破裂した柘榴の種子が飛び散り、魔王の身体に抉り入る。

 更に、落ちてくる幾つもの黒い柘榴が連鎖的に破裂し、その度に魔王の身体を抉った。


 命王の癒し(メイオウノイヤシ)


 黒い柘榴の破裂が落ち着くと、魔王の魔術本がまた独りでに開き、魔王の身体を癒した。

 傷を癒した魔王は小刻みに震えて、不愉快そうな顔で目の前の不審者を怒鳴りつけてきた。


「徹底的に邪魔をするってことね?わかったよ、本当は目立っちゃうからこんなとこで使いたくなかったんだけどね?」


 魔王の魔力が高まるのを感じる。

 なにか大きな魔法を発動しようとしているのだ。


「成れ。」


 隣の不審者がそう呟くと同時に魔王の高まった魔力が一気に鎮まり、体の内から棒状の黒い物体が飛び出してきた。

 

「は!?」


 飛び出した黒い物体は急に流動状に変化して魔王の身体に絡みついた。


「貴様の因果はまだ続いている。今は帰れ。」


 不審者の言葉に対して反発する間もなく、魔王は黒い物体に包み込まれてしまった。


 陰の楽園(パラダイスシェイド)


 全身を包んだ黒い物体はつま先から魔王の肉体ごと塵となって消え、全身をその場から消してしまった。


 魔王が消えた、これは一段落と言うべきか。

 お陰で気持ちが落ち着いて、ようやく疑問の言語化ができる。

 

「あの、あなたは一体何者なんですか?

 あの魔王は一体どうなったのですか?」


 現状を見ればこの不審者が魔王を消滅させたことは明らかである。

 しかし、先程は「帰れ」と言っていた以上、殺してはいないだろう。

 

 それならどこに飛ばしたのか聞き出す必要がある。


 それに、魔王と面識があり、圧倒していた以上この者も只者では無い。


「……お前たちの言う魔王だ。奴は今はエリュシオン国境付近にいるだろう。」


 (あっさりと白状した……。)


 思わず呆気にとられてしまった。


 この不審者の言うことが正しいのなら、これはつまり仲間割れということだろうか……?

 いや、あの様子を見るに魔王同士に仲間意識なんてあるはずもないか。


 “あの魔王“はこの国を「僕の領地」と言っていた。つまり、侵略しようとしていたのだ。

 なら、それを妨害した“この魔王“もこの国を狙っている? 

 もしそうなら、止めなければならない。 

 けれど、“あの魔王“を圧倒するような怪物を相手に今の私が戦えるわけもない。


「行くぞ。」

 

 (……え?)


 私が考え事をしている間に、不審者は私を肩に乗せて担ぎ上げていた。


「えぇ!?ちょっと、どこ触ってるんですか!?」


 持ち方があまりに雑だ。

 これ、ワンピースが引っかかっている。スカートの中が見えていないか?


「って、行くって、まさか私を連れていく気ですか!?」

「……。」

「答えなさい!」


 不審者は沈黙を貫いている。

 癪だが“あの魔王“の言うこの男が「変わっている」ということには共感する。


 陰の楽園(パラダイスシェイド)


 不審者の陰から複数の流動状の黒い物体が全身に伸びてきた。


 さっき魔王に使った魔法だ……。

 視界がどんどん暗く染まっていく。

 

 (もう連れていかれるのはいい、せめてガラティーンを呼び寄せる……!)


 完全に視界が黒になったとき、私の耳には虚しく金属が地面に落ちる音が響いた。


 全身が沈むような気持ちの悪い感覚に包まれてから息ができない。目も開いているのか開いていないのか分からない。


「着いたぞ。」


 不審者の声がしてようやく自身が目を瞑っていたことに気が付いた。

 

 ゆっくりと瞳を開けると───


 そこは見たこともない荒野だった。

最後まで読んでいただきありがとうございます!


ようやく、先代の魔王(ノワール)が出てきましたよ。


書くぞー!!


って、本気で大声出して言いたい!!幼少期にちょっと出ただけでモヤモヤしてたので思い切りね!


さてさて!次回もよろしくお願いします!

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