第八十四話 魔王の名残
もう一度あの禍々しい玄武池に戻るのは骨が折れるが、こう言う時のオレの“イヤな予感”てのは、やたらと当たりやがる。これも魔王の名残なのかも知れない。
「ねぇ、タクマ。やっぱりクラーケンの奴、怪しいわよね? クリスタル残さなかったし……」
お雪はオレが言う前に、その不安をピタリと言い当てた。
「その通りだ。オレとしたことが……肝心なことを怠ってしまった。何もなければいいが……」
暫し無言が続く戻り道。やがて、血に染まった玄武池が再び姿を現した。すると、川姫が突然足を速め言った。
「見て、タクマさん。義経さん達の船がまだ停泊してるわ」
やはり、オレの予感は的中したようだ。船は碇を下ろし、乱雑に揺れる帆がマストに軋みを与えていた。
「義経――っ! 弁慶――っ!」
オレが叫ぶと、義経だけが船から顔を出した。訝しく思い船に近付くと、義経は縄に縛られていた。
「タクマ殿、来てはなりませぬ――っ!」
その背後に怪しい影。
「性懲りもなく、またやって来るとはな……」
それは以前と雰囲気は異なるが、確実にクラーケンであった。
「貴様、やはり生きていやがったか!」
「あぁ。流石に我もあの時は駄目かと思った。だが、奇跡は起きた。何者かの手により肉体が再生したのだ」
「タクマ殿……それだけではありません。弁慶が……弁慶がこやつに吸収されたのです」
「何だと?」
「お喋りは早死にするぞ」
「ぐはっ!」
言い添える義経に、クラーケンは触手を鞭のように振るった。
「義経――っ! 貴様……オレの仲間を……」
「お? やる気になったか? だがな、以前の我とは一味も二味も違うぞ!」
「何度戦っても結果は同じだ。行くぞ!」
オレは水虎を具現化し、バトルフォースを展開した。
水虎 LV27 ランクA 特性 水吸収
HP380 MP65
攻撃力81
素早さ61
1 クリティカル
2.3 通常攻撃
4 ミス
5 黄金の爪
6 津波
「タクマさん、私も戦うわ」
「川姫、お前達はこのことを甘寧達に伝えるんだ。いいな?」
「絶対イヤよ。死ぬ時は一緒よ。タクマがいなけりゃ、意味ないもん」
「お雪……わかった。川姫は、真琴で援護してくれ。但し、オレが無理と判断したら、離脱してもらう」
「そうこなくっちゃ」
「よし、まずは義経を救出するぞ」
「えぇ。バトルフォース展開!」
ラクシャサ(真琴) LV20 ランクB 特性 遊び ものまね
HP250 MP61
攻撃力57
素早さ63
1 貫通パンチ
2 長い髪
3 通常攻撃
4 ミス
5 遊び
6 ものまね
「真琴、久し振りの戦いだ無理はするなよ」
「ボクだってまだまだやれるよ」
本人は意気揚々としていたが、本音は心許ない。そんなことを思っていると、懐からシーサーペントが語りかけてきた。
「私にも戦わせてくれ」
「シーサーペントよ、気持ちは嬉しいが二体同時に操る自信はない」
「タクマよ、お前なら可能じゃよ」
そう口を挟むのは妖怪大翁だ。
「じいさん、どういうことだ?」
「知っての通り、勾玉には一度だけ死者を蘇らせる力がある。そして、草薙の剣はテイマーが妖怪を同時に操れる技量を与えてくれるのじゃ。尤も、その分草薙の剣を使用した時の威力は半減……いや、それ以下になるがな」
そうだ、思い出した。確か妖怪墓地の子泣き爺が言っていた。草薙の剣があれば、Cランク以上の妖怪を同時に操れると。
「……わかった。シーサーペントよ、お前にも暴れてもらうぞ!」
「光栄……」
オレは水虎に続きシーサーペントも具現化し、バトルフォースを展開した。
シーサーペント LV25 ランクA 特性 水に強い
HP250 MP25
攻撃力110
素早さ60
1.2 通常攻撃
3.4 ミス
5 巻き付き
6 鋭い牙
極端なステータスだが、その攻撃力は魅力だ。続けてオレは、弁慶を吸収したクラーケンのステータスを妖怪大翁に頼んだ。
クラーケン改 LV28 ランクA 特性 水吸収
体 HP750 MP50
攻撃力75
素早さ80
スキル『触手』『薙ぎ払い』
――クラーケン改……何者かの手により蘇ったクラーケンは、弁慶を吸収し強力な力を手にいれた。再生を出来なくなったものの、以前とは比べ物にならない――
「くっ……流石に強ぇ。所で、じいさん。弁慶の奴、吸収されちまったけど助けられるのか?」
「何をビクついておる。過去に震震が居着きの雷に憑依した時、解放したじゃろ? その方法を思い出すのじゃ」
確か、村正で憑依を解いたんだったな。吸収と憑依じゃ違う気もするが、光明はあるって訳だ。ならば答えは一つ……弁慶には悪いが思いきりやらせて頂くまで。
素早さはクラーケンが上。ファーストアタックを耐えるべく、オレと川姫は戦闘態勢に入った。




