第七十三話 戦場(いくさば)の猛者達
先陣を切って駆け出した甘寧と酒呑童子の前に現れたのは、群れをなした妖怪と妖魔だった。
「いたぞ! 甘寧だ! やっちまえ!」
そのうちの妖魔の一人がそう言うと、ワラワラと涌き出た妖魔が次々と甘寧に剣を振るった。
「おるぁ! 死にたい奴は前に出ろ! 鈴の甘寧が相手になってやるぜ!」
甘寧は怯みもせず群れをなした妖魔の中心に雪崩れ込むと、青龍刀と鎖鎌を同時に操り一瞬にして十体もの妖魔を葬った。
「ひぃぃ……コイツは化け物だ!」
その光景を目の当たりにした妖魔は、武器を投げ捨て甘寧に背を向けた。
「おっと、逃がしはしないぜ!」
甘寧は逃げ出した妖魔の前に素早く回り込み、回し蹴りでその首を吹き飛ばした。
「ざっと、こんなもんか」
甘寧が呼吸を整えている横で、酒呑童子もまた中々の働きを見せていた。
「我輩は、酒呑童子だ! さぁ、どっからでも掛かってこい!」
妖魔達は一斉に酒呑童子を取り囲み、押さえ付けた。巨体である酒呑童子の姿が確認できないくらいだ。
「何だ、貴様ら。しがみつくだけでは我輩を倒せんぞ! うぉぉ!」
酒呑童子は怒号を挙げると、全身にしがみついた妖魔達を纏めて地面へと叩きつけた。
「どうだ! 我輩を見くびるなよ」
酒呑童子が一仕事終えると、後退りする妖魔の後方から見下したような拍手が聞こえてきた。
「天晴れ、天晴れ。さすがは酒呑童子様。いや、酒呑童子!」
その声の主は、聞き覚えのあるものだった。
「き、貴様は鬼童子! 生きていたのか?」
そう、それは廃屋病棟で一戦を交えた鬼童子。奴は死んだ筈なのにどうして生きているのだ。オレがそんな疑問を抱いていると、鬼童子は酒呑童子に言い放った。
「クラーケン様に再び命を授かった。もう、鬼骨王やお前の言いなりはごめんだ。酒呑童子! ここに屍を晒せ!」
「貴様……我輩に楯突くつもりか! ならば、今一度死ね――っ!」
鬼童子はその言葉を待たずして、酒呑童子に銀に輝く剣を振るった。酒呑童子はその剣を僅か二本の指で白羽取りすると、力任せに真っ二つにへし折った。
「そ、そんな馬鹿な! クラーケン様に授かったこの力が……」
「鬼童子……所詮、お前の力などこの程度。我輩は生死を彷徨い、常に高みを見ているのだ。今も尚な……。悪いが、また眠ってもらうぞ! ふぅん!」
酒呑童子は鬼童子の首根っこを掴み上げ、繰り出した拳でその胴体を貫いた。ほんの一瞬……。ほんの一撃で鬼童子は、息を引き取った。
「雑魚が……。おい、お前ら。クラーケンの奴、どんな策を仕込んでるかわからない。精々、死なないようにな。我輩はその辺の奴等と遊んでくる」
容赦ない酒呑童子の攻撃。敵になると厄介だが、味方になると心強いものがある。
「タクマ、俺達も続くぞ」
「勿論だ、凌統。甘寧達にばかり格好いい思いはさせられないからな!」
酒呑童子の活躍を見届けたオレと凌統は、妖怪と妖魔が群がる前線に駆け出した。
凌統の方天戟が群がる妖魔を一掃し、道が開けていく。妖魔達は凌統に恐れをなし逃げていくが、一体だけ仁王立ちする妖怪がいた。
コイツも過去にやり合った妖怪……九尾の狐だ。
「おい、マロ野郎! お前もクラーケンって奴に生き返らせてもらったのか?」
「答える必要はないでおじゃる。それにマロは、マロ野郎じゃなく九尾の狐でおじゃる。今度こそ、死んでもらうでおじゃるよ!」
九尾の狐 LV15 ランクB 特性 炎に強い
HP320 MP100
攻撃力28
素早さ50
スキル『灼熱の炎』『九本の尻尾』
「何度戦っても、結果は同じだ。水虎! 頼んだぞ!」
オレは水虎を具現化し、バトルフォースを展開した。
水虎 LV25 ランクA 特性 水吸収
HP345 MP60
攻撃力75
素早さ56
1 クリティカル
2.3 通常攻撃
4 ミス
5 黄金の爪
6 津波
「タクマ、俺も手伝うぜ!」
「凌統! 頼む」
凌統 LV26 ランクA
HP340 MP170
攻撃力85
素早さ68
スキル『鼓舞』
「おい、面白そうだな。俺様も混ぜてくれよ」
そこへ周辺の敵を一掃した甘寧が駆け付けた。あれ程暴れてまだ足りないという感じだ。
「甘寧、頼りになる」
「おいおい、タクマ。俺じゃ頼りにならないってのか?」
「そう不貞腐れるな。凌統、お前も頼りにしてるぜ」
甘寧 LV26 ランクA 特性 一騎当千
HP365 MP20
攻撃力95
素早さ74
スキル『一騎当千』
「さ、三人がかりとは卑怯でおじゃる」
「先にケンカを売ったのは貴様だろ? 手加減なしだ」
甘寧は首に下げた鈴の音を聞きながら、青龍刀を九尾の狐の尻尾へと降り下ろした。この一撃で、九つある尻尾のうち八つが切断された。
「ただの狐になっちまったな」
九尾の狐に、95のダメージを与えた。――HP225/320――
「甘寧、遊ぶなよ。次は俺が行くぜ!」
凌統は勇ましく方天戟を片手で操り、九尾の狐の一本になった尻尾を切断し額も切り裂き85のダメージを与えた。――HP140/320――
「次は、オレ達だ!」
オレの振ったDDは、5の黄金の爪を示した。
水虎は黄金に煌めく爪を一撫ですると、九尾の狐の下腹部を抉りだした。九尾の狐に100のダメージを与えた。――HP40/320――
「た、助けてくれでおじゃる」
「オレがお前のような奴を助けると思うか? 死ね!」
オレは村正を手に取り、戦意喪失した九尾の狐に止めを刺した。本来なら逃がす所だが、周りの妖怪や妖魔に恐怖心を与える為に敢えて止めを刺したのだ。
「一度死んでるから、クリスタルは出ないようだな。まぁ、いい。敵も片付いたし、これで船に乗れるな」
「あぁ。よし、皆俺様の船に乗ってくれ」
オレ達は甘寧に促されて船へと乗り込んだ。外観こそ使用感があるが、船内は思いの外綺麗だ。
「さて、こっからどうするか……だな」
デッキに出ると、出港を妨げる大船団がオレ達の様子を伺っていた。




