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第七十一話 圧倒的力の差

 こんな所で道草を食ってる訳にはいかない。それでなくても、甘寧達に遅れを取っている。早めにケリをつけ、出来ればこの馬車を奪いたい所だ。

 オレは力の差を見せ付けるべく、DDを振った。DDは、5のプラチナの爪を示した。

 水天翁は飛頭蛮に狙いを定め、煌めく爪をその首目掛けて引き裂いた。乾いたその音は、まるで閃光のような演出を見せ89のダメージを与えた。――HP116/205――


「くっ……やるではないか。ならば、今度はこちから行くぞ!」


 飛頭蛮は胴体から頭だけを外し、それを水天翁の肩に投げ付けた。飛頭蛮の頭は水天翁の肩に噛み付くが、水天翁は表情一つ変えない。もはや、この程度では痛みすら感じないのだろう。水天翁は、45のダメージを受けた。――HP260/305――


「小癪な! これでも喰らえ!」


 蛟は空に両手を翳し水分をかき集めると、水鉄砲を放ってきた。見た感じ水天翁の濁流に比べると、迫力がない。

 水天翁は片手を前に突き出し、煙を払うかのように水鉄砲を受け流した。


「蛟よ、残念だったな。お前と同じく水天翁は水に強い。ただ、お前より格段に上だがな」


「な、何だと?」


 蛟はその事実を受け止められず、剣呑な表情を見せながら後退した。もはや、戦意喪失と言った所だ。それもそのはず今まで築き上げた矜持きょうじを打ち砕かれたのだから。


「水天翁、どんどん行くぞ!」


「御意」


 長いものには巻かれるのが、この世界の掟。それは敵も味方も同じだ。まずは、飛頭蛮の息の根を止めるべく、 DDを振った。出た目は2の通常攻撃。

 水天翁は飛頭蛮の両肩を掴みあげると、肋骨に向け強力な膝蹴りを喰らわした。飛頭蛮に70のダメージを与えた。――HP46/205――


「ひぃぃ、化け物! 見逃してくれ」


「ダメだ!」


 オレは蛟に恐怖を植え付ける為、命乞いする飛頭蛮を村正で切り裂いた。村正を使うまでの相手ではないとわかっている。しかし、時には非情になる時も必要なのだ。

 オレは飛頭蛮が残した小さなクリスタルを懐にしまうと、蛟に向け言葉を発した。


「さぁ、後はお前一人だ。まだ戦うか?」


 この返答によってオレの蛟への態度は変わる。もし、見逃してくれと言ったきた場合、仲間にしても裏切る可能性がある。一人でも戦う気があるなら、勇気と忠誠心があるというもの。せっかくの水天翁と同じ水属性。出来れば融合してもらいたい所だ。オレは返答が後者であることを祈った。


「誰が逃げるって言ったよ。俺は例え一人でも、負けるとわかってる戦いでも根をあげない! 喰らえ!」


 蛟はそう言うと、腰にぶら下げていた粗末な曲刀を振りかざし、水天翁じゃなくオレに襲い掛かって来た。


「我が主に何をする!」


 紙一重で水天翁が蛟の手首を掴みあげ、オレは九死に一生を得た。


「くそ、離せ!」


「攻撃なら我が受けてやる。何人たりとも、我が主に手を出すことは許さん!」


「そこまでの忠誠心を持つとは……よほど立派な主人なのか?」


「あぁ、少なくとも鬼骨王とは違う。我に人格を与え、共に傷付き、時にはぶつかり合うこともある。だが、それは我を一人の妖怪だと見てくれているからだ。蛟……鬼骨王の言いなりになっているお前にはわかるまい……」


「水天翁……俺もその男に興味が湧いた。その器、是非とも見届けたい」


 蛟はオレの顔色を伺った。仮に水天翁が融合を許したとして、テイマーのオレが許可しなければ成立しないのだ。


「蛟よ、今までの主であった鬼骨王から離れ、オレに忠誠を誓うか?」


「今までの俺は、人格さえも否定され続けていた……。それさえクリアされれば、俺はアンタに忠誠を誓う」


 “人格”……ごく当たり前のことさえ与えない鬼骨王。その精神は、魔族さえも越える。オレの中で答えは出ていた。


「蛟よ、これから共に戦ってくれ。水天翁との融合を許可する」


「有り難き御言葉。この蛟、融合したとしても、アンタの優しさは忘れない……」


 蛟はそう最後の言葉を残すと、水天翁と手を取り合い光に包まれ消えていった。代わって現れた妖怪は、まるで神のような出で立ち。水に関係する妖怪に違いはないのだが。


「我の名は水虎すいこ。主の名に恥じぬように精進したい」


「水虎か。オレの狙い通り強力な妖怪になったな。宜しく頼むぞ」


 水天翁と蛟の融合で、更に強力な妖怪を招き入れた。しかし、これでもまだ鬼骨王には及ばないであろう。やはり、最後の三種の神器である鏡は必須だ。


「タクマよ、この馬車を拝借すれば甘寧達に追い付けるやもしれん」


「じいさん、言われなくてもハナっからそのつもりだ。さて、玄武池まではあとどのくらいだ?」


「ざっと、十里くらいじゃな」


「馬車があれば、楽勝だな」


 オレは馬車に飛び乗り、玄武池までの道程を急いだ。さすがに徒歩より何倍も速い。あっという間に玄武池まで辿り着いた。


「おい、甘寧! 凌統! 助太刀に来たぞ!」


「お、おう、タクマか……」


 その甘寧のリアクションの薄さに、何か異変が生じたのだとオレは肌で感じた。


 


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