六十七話 ヤマタノオロチの真の力
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心なしか、さっきより巨大に見えるヤマタノオロチ。もう後戻りは出来ない。
「後悔の時間は短めにってね。バトルフォース展開!」
水天坊 LV20 ランクB 特性 水に強い
HP269 MP54
攻撃力61
素早さ48
1 クリティカル
2.3 通常攻撃
4 ミス
5 おばけ胡瓜
6 水遊び
さて、力の差は歴然だ。少なくとも今の状態では、勝利などあり得ない。
義経も弁慶も虫の息……卑弥呼は瀕死の状態な上、気絶してやがる。結局は、オレがなんとかするしかない訳だ。
「人間よ、我を散々コケにした恨み……受け取るがいい」
「逆恨みなら買ってやる。だがな、オレは往生際が悪いもんでな。タダでは死なないぞ!」
「減らず口を叩けないようにしてやるわ」
怨念の鎖を断ちきったヤマタノオロチは、縦横無尽に駆け回り水天坊の肩に噛み付いた。水天坊は、90のダメージを受けた。――HP179/269――
予想通りの破壊力だ。しかし、この攻撃でオレは一つの疑問を抱いた。八つの頭全てが機能していないのではと。
本人は巧みな動きでカムフラージュしてるつもりだが、三つの頭しか動いているように見えない。だが、それを見破ったとして劣勢に変わりはないのだが……。
そんなことを考えていると、珍しく水天坊が語りかけてきた。
「主よ、預けたこの命……好きに使うがよい」
「水天坊……気持ちはありがたく受け取る。でもな、オレは諦めない……例え、勝てないバトルだとしてもな!」
使い込まれたDD……あと何回振ることが出来るのだろうか。指先から離れたDDは、音もなく転がり3の通常攻撃を示した。
「さぁ、行け! 水天坊よ!」
水天坊は力強く頷くと、ヤマタノオロチ足元に雪崩れ込み体当たりを喰らわした。ヤマタノオロチに、61のダメージを与えた。――HP649/710――
「温いな……痛くも痒くもないわ! 攻撃とはこうやるのだ」
ヤマタノオロチは水天坊の腸に食らい付き、鋭い牙で引きちぎった。水天坊は、90のダメージを受けた。――HP89/269――
たった二発で瀕死の状態……反撃したとしても、次の攻撃で間違いなくやられる。
「水天坊……すまない。どうやら、オレ達の負けのようだ……」
分かりきっていた結末だが、いざその時を迎えると切なさが忍び寄る。オレは感情をコントロール出来なくなり、拳で床を叩き付けた。
「クソ……オレにもっとテイマーとしての素質があれば……」
「主よ、嘆くな。我はそなたと出会えて、沢山のことを学んだ。いや、これからも学ばせてもらうつもりだ……」
水天坊は意味深な言葉を残すと、オレの手のひらにあったDDを払った。DDはオレの手から離れ、床に転がり落ち5のおばけ胡瓜を示した。
「お前、何をしてんだ。攻撃を仕掛けたら……」
「主よ……そなたは鬼骨王を倒すのであろう?」
「…………」
返答に迷っていると、水天坊はおばけ胡瓜を担ぎ上げ、ヤマタノオロチの八つの首全ての根元を叩き付けた。――HP568/710――
「ぐぶぅ……なかなかの攻撃。しかし、残念ながら次の一手で……どはっ……き、貴様」
「はぁ……はぁ……はぁ……」
何と瀕死に陥っていた義経が、油断していたヤマタノオロチに攻撃を仕掛けたのだ。ヤマタノオロチに55のダメージを与えた。――HP513/710――
「この死に損ないが! まだ生きていたか!」
「うぐっ、某にはもう……力が残っておらぬ……好きにするがよい」
義経はそう言うと、床に仰向けに転がった。
「ならば、お望み通り殺してやろう……」
「義経! 立て、立つんだ」
しかし、義経は言葉を発せず、静かに目を閉じた。
「雑魚が……踏み潰してやる」
ヤマタノオロチは、無防備な義経に巨大な足で容赦なく、のし掛かった。ボキボキと骨の折れる音が祠中に響き渡った。
「やめろ、やめてくれ――っ!」
オレが腹の底からそう叫ぶと、全身眩く光った。視線の先にいる水天坊も、同じく光っている。
「主よ、この時を待っていた……」
水天坊は更に激しく光りだし、それが収まると以前より高貴な姿に変えていた。
「水天坊……お前、まさか!」
「主よ、我が名は水天翁。己と味方のピンチが、我を進化させたようだ……さぁ、主。今こそ反撃の時。ご采配を」
「あぁ……まずは義経を救出するぞ!」
オレは、新たに進化した水天翁のバトルフォースを展開した。




