第六十六話 生き残りをかけて
遂に始まった、ヤマタノオロチとのバトル。見た所、素早さの差は殆どない。
まず、先手を取ったのは卑弥呼だ。ヤマタノオロチをここに封印した程の実力者。自然と期待に胸が膨らむ。
卑弥呼は、フワリと宙に浮き羽衣を靡かせると右手を突き出し強く念じた。すると、ヤマタノオロチはその巨体をふらつかせた。所謂、衝撃波の類いだろう。ヤマタノオロチに、45のダメージを与えた。――HP210/510――
「やはり、わらわの力ではこの程度か……」
素晴らしい攻撃とは言えないが、卑弥呼は自分を責めた。ここまでの力を持ってしても、封印するのがやっとだったということが窺える。
「卑弥呼、気を落とすな。今はお前一人じゃない。オレがいる」
「しかし……これでは……」
卑弥呼の返答に少しの疑問はあったが、オレは臆することなくDDを振った。出た目は2……と、確認した瞬間ヤマタノオロチは水天坊に攻撃を仕掛けてきた。
「しまった!」
水天坊とヤマタノオロチの素早さは全くの五分。オレがDDを振ってる間に、攻撃を仕掛けてきたのだ。
ヤマタノオロチは残った五つの頭で 、水天坊の胸元を薙ぎ払った。水天坊は、70のダメージを受けた。――HP199/269――
「グォォォ! こわっぱが。余所見をしてる暇はないぞ!」
「確かにそうだな。ヤマタノオロチよ、アドバイスありがとな」
「ふぬぅ……」
余裕を見せるヤマタノオロチにオレは、嫌味を述べた。若干の油断はあったが、ある意味生死を左右する助言だ。
気を取り直し、水天坊はヤマタノオロチに襲い掛かった。水天は五つ残っている頭のうち三つを掻き分け、二つの頭を固めた拳で深く殴りつけた。ヤマタノオロチに、61のダメージを与えた。――HP149/510――
「水天坊の力を見たか? この程度の攻撃は序の口だがな」
「己れ……この禍々しい鎖さえなければ……」
「ほう、その鎖さえなければ、もっと強くなれるとでも?」
「あぁ、間違いなくお前を葬ることが出来る」
「面白い……大した自信だな。ならば、オレが断ちきってやろうか?」
「タクマ殿! お止め下さい。怨念の鎖を断ちきったヤマタノオロチは、例えタクマ殿でも太刀打ちできませぬ」
「卑弥呼、心配するな。こんな安っぽい挑発に乗るほどオレは馬鹿じゃない」
「それを聞いて安心しました。それでは、わらわも全力で参ります」
卑弥呼は安堵の表情を浮かべると、こんどは両手をヤマタノオロチに向け突き出した。恐らくはこれが特有スキルである“神の手”。祠全体が激しく揺れ、放つ前からその威力を感じることが出来る。
「ヤマタノオロチ……今までは封印するのがやっとでしたが、長きを経て今やっと葬ることができそうじゃ……」
「な、何をするつもりだ。やめろ、やめてくれ。我はここで大人しくしてる」
「そなたは今まで、そうやって命乞いする民を何人殺した? わらわは、許すことができぬ! さらばじゃ、ヤマタノオロチ」
「やめろ――!」
ヤマタノオロチは悲痛な叫びと共に、卑弥呼が放った衝撃波……すなわち神の手の中で切り刻まれた。ヤマタノオロチに、150のダメージを与えた。――HP0/510――
「タクマ殿、ヤマタノオロチは二度と立ち上がることはできまい。わらわ達の戦いは終わったのじゃ……」
卑弥呼はそう言うと、力を使い果たしたのか、足元から崩れ床に手をついた。
「卑弥呼、大丈夫か? しかし、こんなすげぇ技があるなら、なんでもっと早く使わなかったんだ?」
「か、神の手は禁断の技。自らの命を削る為、ここぞという時しか使えんのじゃ」
確かにそのようだ。無傷だった卑弥呼のHPが、350から50に減ってやがる。
「卑弥呼、無理はするな。さぁ、肩に掴まってくれ」
「わらわとしたことが、情けない……」
「照れてるのか?」
「そ、そんなことはないぞよ」
頬を染める卑弥呼を肩に抱き、立ち上がった瞬間悲劇は起きた。
「何処へ行こうというのだ? 我は死んでおらんぞ! どうやら、卑弥呼……お前の攻撃で鎖が断ちきれたようだ。しかも、見てくれこの強靭な肉体。これこそが我の求めていた力……」
ヤマタノオロチは再び立ち上がり、不気味な笑みを浮かべた。さっきまでとは雰囲気……オレの憶測だが、進化を遂げたようだ。
「お、己れヤマタノオロチ……まだ生きていたか……ならば、今一度神の手を」
「卑弥呼、無茶だ。その体で神の手を使ったら死んでしまうぞ!」
「か……構わん」
卑弥呼は、支えるオレの肩を振り払いヤマタノオロチに両手を向けた。
「甘いわ!」
ヤマタノオロチは、巨大な足で卑弥呼を蹴り飛ばした。卑弥呼は軽々と宙に浮き、石壁に叩き付けられた。
「おっと、力を入れすぎたか? お前はそこでおねんねしてな。さて、人間よ。新しい我の力を試させてくれ」
「貴様、調子に乗るなよ」
卑弥呼が気を失った今、頼れるものは水天坊だけだ。オレは再び水天坊を具現化した。
そして、新生ヤマタノオロチのステータスを妖怪大翁に頼んだ。
「こ、これは? マズイぞい。見てみい」
ヤマタノオロチ LV28 ランクA
HP710 MP25
攻撃力90
素早さ50
スキル『噛み砕き』
「何ということだ……」
オレの予想を遥かに越える強さに、足が僅かにすくんだ。
◇◇◇◇◇◇
一方、お雪達は――
「タクマが危ない……助けにいかなきゃ……」
お雪は直感的にタクマの危機を感じた。
「お雪ちゃん、誰だいタクマってのは?」
「上手く言えないけど、私の大事な人……」
「なら、助けにいかなきゃな。凌統、お前はどうする?」
「聞くまでもないだろう……」
お雪の言葉に甘寧と凌統は、同調した。
「お雪、でもタクマさん達はここで待っていろと……」
実は、川姫もタクマの危機を感じていた。しかし、彼のプライドを傷付けまいと、黙っていたのだ。
「そんなこと言ってる場合じゃないわ」
「……わかったわ。今回はただ事じゃなさそうだしね。タクマさん達は、この祠の中です。甘寧さん、凌統さんお願い致します」
「任せておきな。美女の頼みを断らないのが、俺様達のポリシーだからな」
「そう言うこと」
お雪達は、タクマ達の後を追って祠の中へと向かった。




