表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
70/155

第五十八話 裏切りの弁慶

 弁慶が生きていたと喜ぶ間もなく、その裏切りにオレ達は呆気に取られた。こんなことは言いたくないが、オレが睨んだ通り弁慶には裏があった。


「弁慶……どうしてしまったのだ。某達を救ってくれた優しさは嘘だったのか?」


「義経よ、無駄だ。アイツは……ハナっからオレ達を陥れようとしたんだ」


「タクマの言う通りだ。俺は最初からお前らを裏切るつもりで近付いた。義経よ、悪く思うなよ」


「嘘だ……嘘に決まっている……某の知ってる弁慶は、優しくて……仲間思いで……そして、何より曲がったことが嫌いな奴だった……」


「そんな昔のこたぁ、忘れたな。これが今の俺の姿……武蔵坊弁慶様だ――っ! さぁ、義経……いつぞやの五条大橋の決着をつけるぞ!」


「やらねばならぬのか?」


「そういうことだ。手加減はいらねぇ。全力で掛かって来い!」


「弁慶……お前のような逸材を失うのは惜しいが、悪いが斬らせてもらう」


「戯れ言を……」


「義経よ、助太刀するぞ」


「タクマ殿、これは某と弁慶の問題です。手出しは無用」


 義経はオレの申し出を断り、柄に手を掛けた。その姿を見て、茨木童子は不気味な笑いを見せた。元を辿れば、弁慶がこうなってしまったのも、コイツの所為に違いない。


「タクマ、ワシに考えがある……耳を貸せ」


「何だよ、じいさん。藪から棒に……今アンタの世話をしてる場合じゃねぇんだよ」


「いいから貸すんじゃ。見たところ、茨木童子は相当弱っていおる。恐らく卑弥呼の肉体が合わんのじゃな。だから、義経と弁慶が戦ってる隙に、村正で魂にダメージを与えるんじゃ。さすれば、卑弥呼の肉体から茨木童子を追い出すことができるやもしれん。これはある意味、賭けじゃが」


「成る程……悪くない作戦だ」


 しかしだ。その為には、義経に弁慶を引き付けてもらい、気付かれないようにする必要がある。それに上手くいったとして、魂にダメージ与えられなければ、卑弥呼が死んでしまう。


「タクマ、妖怪大翁様の言う通りよ。こうなったら、やるしかないわよ」


「お雪、聞いてたのか?」


「ごめん、聞こえちゃったの……タクマ、アンタなら出来るわ」


 お雪の言葉で、オレの迷いは消えた。一か八か……人の命を賭けるには、あまりに酷な博打だ。

 あとは義経次第って訳だな。オレは密かに一本だたらに村正を依頼すると、義経と弁慶の一騎討ちに視線を向けた。


義経 LV22 ランクB 特性 円明流


HP225 MP67

攻撃力55

素早さ65

スキル『剣術』『弓術』『回復術』


弁慶 LV20 ランクB 特性 薙刀 身代わり


HP290 MP10

攻撃力59

素早さ20

スキル『薙ぎ払い』『身代わり』


 義経は、鞘から膝丸を抜き取り水平に構える。その低い構えは、虫一匹さえ寄せ付けない程に隙はない。

 一方の弁慶は構えもせず、右手に薙刀を持ち仁王立ちしてるだけだ。

 対照的な二人だが、第三者的に見ると力の差はない。


「いざ、参る!」


 長い沈黙を破り最初に動きを見せたのは、素早さが秀でている義経だ。義経の持つ膝丸が鮮やかに煌めくと、弁慶の五条袈裟ごと斬りつけた。弁慶はよろけもせず、全身を盾にそれを受け止めが55のダメージを受けた。――HP235/290――


「流石だな、義経。我が主としただけのことはある」


「言いたいことはそれだけか?」


「チッ……ならば俺の薙刀を受けてみろ!」


 弁慶は後退する義経に向け、得意の薙刀で反撃した。義経は上手く切り返し、鍔でそれを受け止めた。火花が散る程の鍔迫り合い。

 弁慶と義経の体格差は勿論のこと、力の差は歴然。圧倒的に義経が不利だ。しかし、義経はそれをものともせず徐々に押し返していった。


「うぐぐ……くっ……」


「弁慶……言った筈だ。力だけでは勝てないと」


 義経がそう言った瞬間、弁慶の手から薙刀は離れ、床へと落下した。


「くそ……」


「勝負あったな。弁慶よ、覚悟しろ!」


 義経は躊躇うことなく跳躍し、丸腰の弁慶の頭上に向け膝丸を振り下ろした。


「し、死んでたまるか!」


 弁慶は頭上スレスレの位置で、膝丸を両手に挟んだ。


「し、白羽取り?」


 弁慶は膝丸を両手に挟んだまま、義経の鳩尾(みぞおち)目掛けて、蹴り飛ばし59のダメージを与えた。――HP166/225――


「かはっ……」


 これには、流石の義経も対処のしようがない。馬鹿力な上に、足駄の強固さが加わりダメージは相当なものだ。


「や、やるようになったな……弁慶」


「ふん。上から物を言ってんじゃねぇ。お遊びはこれまでだ」


 弁慶は踞る義経を横目に、床に落ちた薙刀を回収した。


「タクマよ、何やら雲行きが怪しい。早い所、村正で茨木童子をやるのじゃ」


 妖怪大翁がオレに言う。その瞬間、弁慶は振り返り視線をオレに向けた。


「しまった! ったく……じいさん、声デカイんだよ」


 オレは慌てて一本だたらから村正を受け取り、燈籠の横で高みの見物をする茨木童子へ走り出した。


「貴様! 何をするつもりだ!」


 鬼の形相で、追ってくる弁慶。頼む……間に合ってくれ。


「うらぁぁぁ!」


 オレは渾身の力を込め、茨木童子に向け村正を振り下ろした。が、寸での所で村正は動きを止めた。

 上を見上げると、素手で刃先を掴み上げる弁慶の姿があった。その手から滲み出る血が、村正をより深紅に染めていく。


「何をするつもり……うぐっ」


 村正を掴み上げていた弁慶の言葉が、突然空気中に溶けていく。


「弁慶、背中がお留守だぞ……はぁ……はぁ……」


 弁慶の背後から、斬りつけた義経。痛々しいまでの姿で、窮地を救ってくれたのだ。


「タクマ殿……早く……今のうちに……」


「義経、すまない」


 オレは気を取り直し、もう一度渾身の力を込め茨木童子を斬りつけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ